389 / 984
三百八十九話 いや、本当に感謝しかないよ
しおりを挟む
「好きな酒を呑んでくれ。勿論、料理も好きな物を頼んで」
「は、ははは……ご馳走になるよ」
アラッドは自分にリンチ(仮)を仕掛けてきた冒険者、学生たちのことに関しては、適当に濁して済ませようとした。
しかし、マジリストンを訪れてからアラッドが他の冒険者と冒険したという情報を、マジットは一回も耳にしていない。
そんなアラッドが急に、歳がそれ程離れていない者たち一緒に行動する?
普通に考えてあり得ない。
どう考えても一緒にいた者たちがアラッドに無理を言ったという結論に至り、マジットは詫びとしてアラッドを個室がある洒落たバーへ案内。
当然、代金はマジット持ち。
(こういう場所でマジットさんと呑めたら楽しそうだな~とは思ってたけど、まさか直ぐに実現するとはな)
リンチ(仮)を仕掛けてきた同業者、学生たちには感謝しかない。
本人達からすれば「ふざけるな!!!」と叫びたいところだが、金貨二十枚以上を苦労せずに貰い、マジットと洒落たバーで食事が出来る。
アラッドからすれば、礼の一言や二言伝えたくなるのも無理はない。
「本当に、後輩や教え子たちが申し訳ない」
「あ、頭を上げてくれ。別に迷惑を掛けられたわけじゃないから」
寧ろ儲けさせてもらったから! とは言えないが、それでもアラッド自身は本当に迷惑を掛けられたとは思っていない。
ただ、マジットからすれば後輩や、学園の教え子たちがいったいアラッドにどんな態度で、どんな事を仕掛けたのかまでは解らないが、一般的な視点から迷惑を掛けたことは解る。
「そういう訳にはいかない」
アラッドの言葉に嘘がないことは解っている。
とはいえ、それはアラッドが他者と比べて頭三つか四つも飛び抜けた実力を持ち、大人びた精神を持つ故に迷惑だと感じていないだけ。
彼ら彼女たちが行ったことは一応リンチ(仮)であるため、世間一般的に見てアラッドに迷惑を掛けたという見解は間違っていない。
「私の、教育不足だ」
「あぁ~~~……あれだよ、マジットの教育不足とかは関係無い部分だと俺は思う。憧れからくる、つい起こしてしまう衝動というか行動というか……うん、こればかりは憧れであるマジット本人から言われても、直るものじゃない」
ファン、信者が外部の人間にとっては厄介な存在に見える。
そういった事を前世で実際に体験しているため、ある意味治らない病気だと認識している部分がある。
「それに、冒険者登録をした街で絡まれた同じルーキーの態度と比べれば、よっぽど礼儀正しいよ」
「やはりと言うか、他の街でも苦労しているんだな」
実態としては、特に苦労はしていない。
人生二週目だからこそ、そういう反応になるも無理はないよな、と些細なことで乱れない精神がある。
「そんな大した話じゃないよ」
結果的に一人の冒険者を追放することになあったので、大した話ではある。
「……君は、本当に余裕がある大人だな」
「これでも侯爵家の三男だからな」
間接的に先日リンチ(仮)に加わっていた学生二人を貶しているが、本人は全く気付いておらず、マジットとしても当然ツッコむ気はない。
何はともあれ、頼んだカクテルと料理が届き、楽しい夕食の時間がスタート。
互いの職業的に紆余曲折あって、墓荒しの件について話し合うことになった。
そこでマジットは、アラッドとの会話から確証はないが、とあることに気付いた。
(アラッド君は……もしや、一人で黒幕を倒したいのか?)
顔に心情は浮かんでいない。
それでも、会話により読み合いに関しては、マジットの方が数手上である。
(アラッド君が強いのは解かる。クロという圧倒的な力を持つ従魔もいる。それらの戦力を考えれば不可能ではないと思えるが……)
万が一の独断行動を心配に思うマジット。
しかし、アラッドはまだ殆どの者に知られていない力を有している。
その力があるからこそ、どうせなら自分たちだけで倒したいなと考えていた。
「は、ははは……ご馳走になるよ」
アラッドは自分にリンチ(仮)を仕掛けてきた冒険者、学生たちのことに関しては、適当に濁して済ませようとした。
しかし、マジリストンを訪れてからアラッドが他の冒険者と冒険したという情報を、マジットは一回も耳にしていない。
そんなアラッドが急に、歳がそれ程離れていない者たち一緒に行動する?
普通に考えてあり得ない。
どう考えても一緒にいた者たちがアラッドに無理を言ったという結論に至り、マジットは詫びとしてアラッドを個室がある洒落たバーへ案内。
当然、代金はマジット持ち。
(こういう場所でマジットさんと呑めたら楽しそうだな~とは思ってたけど、まさか直ぐに実現するとはな)
リンチ(仮)を仕掛けてきた同業者、学生たちには感謝しかない。
本人達からすれば「ふざけるな!!!」と叫びたいところだが、金貨二十枚以上を苦労せずに貰い、マジットと洒落たバーで食事が出来る。
アラッドからすれば、礼の一言や二言伝えたくなるのも無理はない。
「本当に、後輩や教え子たちが申し訳ない」
「あ、頭を上げてくれ。別に迷惑を掛けられたわけじゃないから」
寧ろ儲けさせてもらったから! とは言えないが、それでもアラッド自身は本当に迷惑を掛けられたとは思っていない。
ただ、マジットからすれば後輩や、学園の教え子たちがいったいアラッドにどんな態度で、どんな事を仕掛けたのかまでは解らないが、一般的な視点から迷惑を掛けたことは解る。
「そういう訳にはいかない」
アラッドの言葉に嘘がないことは解っている。
とはいえ、それはアラッドが他者と比べて頭三つか四つも飛び抜けた実力を持ち、大人びた精神を持つ故に迷惑だと感じていないだけ。
彼ら彼女たちが行ったことは一応リンチ(仮)であるため、世間一般的に見てアラッドに迷惑を掛けたという見解は間違っていない。
「私の、教育不足だ」
「あぁ~~~……あれだよ、マジットの教育不足とかは関係無い部分だと俺は思う。憧れからくる、つい起こしてしまう衝動というか行動というか……うん、こればかりは憧れであるマジット本人から言われても、直るものじゃない」
ファン、信者が外部の人間にとっては厄介な存在に見える。
そういった事を前世で実際に体験しているため、ある意味治らない病気だと認識している部分がある。
「それに、冒険者登録をした街で絡まれた同じルーキーの態度と比べれば、よっぽど礼儀正しいよ」
「やはりと言うか、他の街でも苦労しているんだな」
実態としては、特に苦労はしていない。
人生二週目だからこそ、そういう反応になるも無理はないよな、と些細なことで乱れない精神がある。
「そんな大した話じゃないよ」
結果的に一人の冒険者を追放することになあったので、大した話ではある。
「……君は、本当に余裕がある大人だな」
「これでも侯爵家の三男だからな」
間接的に先日リンチ(仮)に加わっていた学生二人を貶しているが、本人は全く気付いておらず、マジットとしても当然ツッコむ気はない。
何はともあれ、頼んだカクテルと料理が届き、楽しい夕食の時間がスタート。
互いの職業的に紆余曲折あって、墓荒しの件について話し合うことになった。
そこでマジットは、アラッドとの会話から確証はないが、とあることに気付いた。
(アラッド君は……もしや、一人で黒幕を倒したいのか?)
顔に心情は浮かんでいない。
それでも、会話により読み合いに関しては、マジットの方が数手上である。
(アラッド君が強いのは解かる。クロという圧倒的な力を持つ従魔もいる。それらの戦力を考えれば不可能ではないと思えるが……)
万が一の独断行動を心配に思うマジット。
しかし、アラッドはまだ殆どの者に知られていない力を有している。
その力があるからこそ、どうせなら自分たちだけで倒したいなと考えていた。
192
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる