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三百八十七話 逆にチャンスと考えろ

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二人同時に掛かって来いと言われた学生二人は、血液が沸騰しそうなほどの怒りを感じた。

冒険者とはあまり関係がない貴族の学生ではあるが、マジットの威光は冒険者ギルドだけに留まらない。
度々マジリストンの魔法学校にも臨時教師として足を運んでいるため、彼女のファン……もとい、信者は冒険者だけではない。

そんな憧れに敬意を持たない(個人の意見)奴から「二人で掛かって来い」と言われ、完全にブチ切れそうになった二人だが、ギルの様な正真正銘の馬鹿ではない。

王都の大会で行われた大会についての情報は、マジリストンの方にも流れている。

(怒りに呑まれるな。寧ろ、絶好のチャンスだと思うんだ!)

(今必要なのは怒りじゃない。こいつの嘗めた態度を利用するんだ!)

元々二人もタイマン勝負を行うつもりだったが、ルール変更を行ったのはアラッド本人。
本人からの提案であれば仕方ない。

二人は言われた通り、一緒に前に出る。

二人の実力を知っている冒険者たちは、少し後方に下がり、衝撃に備える。

「来ないなら、こっちから行くぞ」

火と水の弾を複数展開し、同時に発射。

別属性の攻撃魔法を同時に発動。
しかも詠唱なしとなれば驚くものだが、その情報に関しては事前に頭にインプットされていた。

(おそらく狂化は使ってこない! そこが付け入れる隙だ!!)

アラッドに対して嫌悪などの感情を持っていようとも、本気の全力を出されては勝てない。
二人がかりでも勝利は厳しいと冷静に考える頭は思っている。

二人で襲い掛かる弾丸を排除した後、令息が前に跳びだし、令嬢が付与魔法を発動。

学園に所属する学生であっても、自分たちの様な優れた魔法の才を持つエリートが、体を鍛えたり杖以外の武器を持つなどナンセンス!!! という思考を持つ者はそれなりにいる。
実際に、魔法使いという後衛職の存在を考えれば、そこまで重要な要素ではないと言える。

ただ、それは本当の実戦を知らない者たちの考えであり、愚かな思考。

マジットはそんな思考を持つ者たちのプライドを粉々に砕き、ウィザードやヒーラーであっても肉体の重要性を伝えた。
当然、全員がプライドを粉々にされても、マジットの力説に納得したわけではない。

それでも……本当に高みを目指したいと思っている者たちは、自身の奢りや視野の狭さに気付ける。

今回前衛を買ったのは男の学生だが、後方支援を行うと決めた女の学生も接近戦を行える。

(前衛の男はボール系の攻撃を近距離から放ちながらも、短剣技と体技を組み合わせて攻める。身体強化の付与魔法を受けてることもあってか、中々強いな)

攻撃に関しては男の学生だけではなく、後衛の女の学生も前衛の動きを見極め、冷静に攻撃魔法を放つ。

二人が友人同士、日頃からよく一緒に訓練を行っていることもあり、動きに無駄がないコンビネーション。

(本当に良い動きをするな。単体の力は知らないけど、コンビネーションだけなら、ベルたちに匹敵するか?)

二人でもレイには敵わないと断言出来るが、コンビネーションに関しては目を見張るものを感じる。

早めに解決しておかなければ面倒な問題と思っていたが、割と楽しいと感じ始めたアラッド。
とはいえ、楽しさを優先して手加減を忘れれば、やらかしてしまいそうな予感がしたため、戦闘時間が二分を超えたところで仕留めに掛かった。

「なっ、がはっ!?」

短剣による突きを躱して腕を取り、勢い良く一本背負いを決める。

(今!!!!!)

前衛の男子学生を倒したとはいえ、体勢は後衛の女子学生に背中を向けた状態。

格好の餌食と言えない状況ではあるが、それは女子学生が放つ攻撃魔法の速度が、アラッドの脚力を上回っていたらの話。

(速っ、過ぎる!!)

ギリギリ体は反応し、アラッドが動いた位置に向かって攻撃魔法を放つが、三度も繰り返したころには、首に手刀が添えられていた。
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