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三百八十五話 彼らなりに考慮した結果
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「やぁ、アラッド君。今少し時間良いかな」
「…………」
冒険者ギルドに適当な依頼を受注するために向かう途中、アラッドは十人ほどの同業者たちに囲まれていた。
(えぇ~~、マジか。やっぱりこうなるのか)
声を掛けてきた人物は、あまりそういう事をするようには見えない好青年の魔法使い。
しかし、その周囲にいる同じくアラッドに負の感情を向ける面子は様々。
同じ様な優等生タイプからやんちゃ寄りな見た目を持つ者に、半分は男性ではなく女性と、ここも驚く点。
「あぁ、特に予定はない」
「そっか。それは良かったよ」
本日も墓荒しの黒幕について探索するつもりだったが、どう見ても「予定があるから、また今度にしてくれ」と言ったところで、見逃してくれるようには思えない。
「それじゃあ、少し付いてきて欲しい」
「解かった」
アラッドの脚力とスタミナを持ってすれば、物理的に逃げ切ることは可能。
だが、どこかで彼らの溜まったガスを抜かなければ、後々面倒事になるとしか思えない。
そういった理由から、アラッドは大人しく青年たちの後に付いて行った。
向かった場所は冒険者ギルドの訓練場……ではなく、ギルドに向かわずそのまま街の外に出た。
到着した場所は、マジリストンからあまり離れていない森。
出現するモンスターのランクは高くなく、新人が狩りをするにはうってつけのエリア。
(ん? 全員冒険者だと思ってたが、俺と同じ令息と令嬢までいるな)
服装から正体を予想出来なくもないが、アラッドはその点に中止したのではなく、二人が身に纏う雰囲気から察した。
「さて、何故僕たちが君をこういった場所に連れてきたのか、分かるかな」
「…………まぁ、おおよそは」
おおよそどころか、全て解っている。
まだマジリストンに到着してから十日も経っていないが、マジットがどれだけ多くの者たちから尊敬されているかは明白。
「今後、君がマジットさんに敬意を持つのであれば、今すぐ君を解放する」
「?」
今後、マジットさんの半径十メートル以内に入るんじゃない!!! ぐらいの言葉をぶつけられると思っていたアラッドからすれば、少し予想外の内容だった。
(意外だな。こんな場所に連れてこられたんだから、このままリンチされるのかと思った)
その気であれば逆に潰すが、意外な反応に対応が困る。
(こいつらとしては、色々とマジットさん関連で考えた結果、リンチする結果には至らなかったんだよな。んで、敬意を持つってことは……多分、これからはマジットさんにタメ語で話すんじゃないってことだよな)
アラッドは彼ら彼女たちの要求を全て理解した。
とはいえ、次話すときにいきなり敬語となれば、怪しまれるのは必至。
(こいつらにとっては、出来る限り譲歩した結果なんだろうけど、おそらく何故敬語になったのか詰められそうだな)
アラッドは自分の嘘がマジットには通用しないと、何故か確信していた。
「俺は今まで通りマジットさんと接したいから、拒否させてもらう」
どちらにしろ彼ら彼女たちが凹むと解っているため、大人しく言う通りにはしないと決めた。
「強情だね。それなら、これから僕たちと戦ってもらうよ。言っておくけど、拒否権はないよ」
やはり最終的にはリンチを行う。
警戒心を高めるアラッドだが……予想していた形とは、かなり違う流れとなった。
まず、戦闘はリンチではなく一対一のタイマン勝負。
そしてアラッドが勝利すれば、負けた相手は金貨二枚を支払うという、アラッドからすれば割と悪くない勝負内容。
(なんか、こっちとしては寧ろおいしい勝負内容だな。それに……この内容なら、バレてもマジットさんから説教、もしくは折檻を食らうことはない、か?)
彼ら彼女たちが考えたルールから、どれだけマジットが尊敬され、しっかりと教育も施しているのかが解かった。
「…………」
冒険者ギルドに適当な依頼を受注するために向かう途中、アラッドは十人ほどの同業者たちに囲まれていた。
(えぇ~~、マジか。やっぱりこうなるのか)
声を掛けてきた人物は、あまりそういう事をするようには見えない好青年の魔法使い。
しかし、その周囲にいる同じくアラッドに負の感情を向ける面子は様々。
同じ様な優等生タイプからやんちゃ寄りな見た目を持つ者に、半分は男性ではなく女性と、ここも驚く点。
「あぁ、特に予定はない」
「そっか。それは良かったよ」
本日も墓荒しの黒幕について探索するつもりだったが、どう見ても「予定があるから、また今度にしてくれ」と言ったところで、見逃してくれるようには思えない。
「それじゃあ、少し付いてきて欲しい」
「解かった」
アラッドの脚力とスタミナを持ってすれば、物理的に逃げ切ることは可能。
だが、どこかで彼らの溜まったガスを抜かなければ、後々面倒事になるとしか思えない。
そういった理由から、アラッドは大人しく青年たちの後に付いて行った。
向かった場所は冒険者ギルドの訓練場……ではなく、ギルドに向かわずそのまま街の外に出た。
到着した場所は、マジリストンからあまり離れていない森。
出現するモンスターのランクは高くなく、新人が狩りをするにはうってつけのエリア。
(ん? 全員冒険者だと思ってたが、俺と同じ令息と令嬢までいるな)
服装から正体を予想出来なくもないが、アラッドはその点に中止したのではなく、二人が身に纏う雰囲気から察した。
「さて、何故僕たちが君をこういった場所に連れてきたのか、分かるかな」
「…………まぁ、おおよそは」
おおよそどころか、全て解っている。
まだマジリストンに到着してから十日も経っていないが、マジットがどれだけ多くの者たちから尊敬されているかは明白。
「今後、君がマジットさんに敬意を持つのであれば、今すぐ君を解放する」
「?」
今後、マジットさんの半径十メートル以内に入るんじゃない!!! ぐらいの言葉をぶつけられると思っていたアラッドからすれば、少し予想外の内容だった。
(意外だな。こんな場所に連れてこられたんだから、このままリンチされるのかと思った)
その気であれば逆に潰すが、意外な反応に対応が困る。
(こいつらとしては、色々とマジットさん関連で考えた結果、リンチする結果には至らなかったんだよな。んで、敬意を持つってことは……多分、これからはマジットさんにタメ語で話すんじゃないってことだよな)
アラッドは彼ら彼女たちの要求を全て理解した。
とはいえ、次話すときにいきなり敬語となれば、怪しまれるのは必至。
(こいつらにとっては、出来る限り譲歩した結果なんだろうけど、おそらく何故敬語になったのか詰められそうだな)
アラッドは自分の嘘がマジットには通用しないと、何故か確信していた。
「俺は今まで通りマジットさんと接したいから、拒否させてもらう」
どちらにしろ彼ら彼女たちが凹むと解っているため、大人しく言う通りにはしないと決めた。
「強情だね。それなら、これから僕たちと戦ってもらうよ。言っておくけど、拒否権はないよ」
やはり最終的にはリンチを行う。
警戒心を高めるアラッドだが……予想していた形とは、かなり違う流れとなった。
まず、戦闘はリンチではなく一対一のタイマン勝負。
そしてアラッドが勝利すれば、負けた相手は金貨二枚を支払うという、アラッドからすれば割と悪くない勝負内容。
(なんか、こっちとしては寧ろおいしい勝負内容だな。それに……この内容なら、バレてもマジットさんから説教、もしくは折檻を食らうことはない、か?)
彼ら彼女たちが考えたルールから、どれだけマジットが尊敬され、しっかりと教育も施しているのかが解かった。
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