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三百八十四話 何も、残っていなかった
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(ふだけんなって言いたくなるぐらい、本当に手掛かりが見つからないな)
クロの力に頼っている状況ではあるが、全くといって良い程手掛かりが見つからない。
先日暴走状態のオーガファイターがいた場所へと戻り、クロが感じ取った手掛かりを探しに向かったが、結局は取り越し苦労になってしまった。
(あれはクロの勘違いだったのか? 本能的な勘も優れてるクロが、勘違いだったってことはない気がするんだが……もしかして、匂いなどが残らないマジックアイテムでも使用してたのか?)
自身が居た痕跡を消す類のマジックアイテムも当然あるため、先日の一件が起こった場所へ向かっても、手掛かりが見つからない可能性は十分にあり得る。
「今日も進展なし、か」
「ワフ……」
主人のテンションが下がっているの感じ取り、釣られてクロのテンションも下がる。
「クロ、別にお前のせいじゃないんだ。寧ろお前が居なかったら、今回の件を解決出来ない」
「ワゥ?」
「そうだ。お前が黒幕を見つける重要なカギなんだ。だから落ち込むことはない」
「……ワゥ!」
アラッドも何年も付き合いがあるクロの心情を察し、即座に元気づけた。
「討伐の証明部位です」
「少々お待ちください」
受けていた討伐依頼の証明部位を出し、依頼達成。
達成料金を受け取ると、次は素材買取カウンターへと向かう。
いつも通り同業者たちの視線が集まるが、暴走状態のオーガファイターを一人で圧倒したという話が広まったこともあり、若干……若干ではあるが、負の感情が込められた視線の数は減った。
「やぁ、お疲れ。アラッド」
「お疲れ……手掛かりは、残ってなかった」
マジットから声を掛けられたアラッドは、先日伝えていたもしかしたらの話に対しての調査結果を伝えた。
「そうか。中々上手く進まないな……だとしても、アラッドがそんな暗い顔をすることはない」
「? そんなに顔に出てるか」
「隠すのは上手い方だと思うが、私の様なタイプにはバレるだろう」
信頼、共に過ごしてきた時間などは関係無く、今までの経験からアラッドのテンションを読み取った。
「焦る必要はない、というのは無責任だと思うが、何も動いているのは君だけじゃない。だから、もっと上を向いて歩くと良い」
励ます様に胸を軽く拳で叩かれ、頼りにしているスーパールーキーの疲労を癒す姉御。
「……あぁ、そうだな。ありがと」
アラッドは顔の赤みがバレない内に退却。
(はぁ~~、不用意にギルド内で話すんじゃなかったな)
マジットとの会話に色んな意味で疲れる……といった理由ではなく、本人に言われた通りタメ語で話していると、周囲の冒険者たちが殺気に近い感情をぶつけ始めた。
(た、確か俺だけじゃなくて、大抵の人にはタメ語で話すと良い……的なことを伝えてるって聞いたんだが、俺の勘違いだったか?)
全く勘違いではなく、マジットは冒険者になりたてのルーキーであっても、一度は自分に敬語は不要だと伝えている。
本人としては、その方が親しく話せるように、アドバイスも伝わりやすくなると考えている。
その考えは間違ってはいないと、他の指導者たちも賛同しなくはない。
ただ……マジットには、まだ三十を超えていないにもかかわらず、既に強制されずとも素で「教官!」と呼んでしまいそうな貫禄がある。
実際にその貫禄に見合う強さを有しているため、最初は言われた通りタメ語で話していたルーキーや、ケツの殻が完全に取れたルーキーとベテランの中間に立つ者たちも、いつしか敬語で話すようになってしまう。
一部のベテランも敬語で話すため、正直なところ……ギルドの上役よりも冒険者から信頼されている。
そういった事情もあって、本当にタメ語で話すルーキー……アラッドに対し、殺意に近い感情を向けられるのは、ある意味仕方なかった。
(……アンデットに殺される前に、同業者に殺されたりしないよな)
クロの力に頼っている状況ではあるが、全くといって良い程手掛かりが見つからない。
先日暴走状態のオーガファイターがいた場所へと戻り、クロが感じ取った手掛かりを探しに向かったが、結局は取り越し苦労になってしまった。
(あれはクロの勘違いだったのか? 本能的な勘も優れてるクロが、勘違いだったってことはない気がするんだが……もしかして、匂いなどが残らないマジックアイテムでも使用してたのか?)
自身が居た痕跡を消す類のマジックアイテムも当然あるため、先日の一件が起こった場所へ向かっても、手掛かりが見つからない可能性は十分にあり得る。
「今日も進展なし、か」
「ワフ……」
主人のテンションが下がっているの感じ取り、釣られてクロのテンションも下がる。
「クロ、別にお前のせいじゃないんだ。寧ろお前が居なかったら、今回の件を解決出来ない」
「ワゥ?」
「そうだ。お前が黒幕を見つける重要なカギなんだ。だから落ち込むことはない」
「……ワゥ!」
アラッドも何年も付き合いがあるクロの心情を察し、即座に元気づけた。
「討伐の証明部位です」
「少々お待ちください」
受けていた討伐依頼の証明部位を出し、依頼達成。
達成料金を受け取ると、次は素材買取カウンターへと向かう。
いつも通り同業者たちの視線が集まるが、暴走状態のオーガファイターを一人で圧倒したという話が広まったこともあり、若干……若干ではあるが、負の感情が込められた視線の数は減った。
「やぁ、お疲れ。アラッド」
「お疲れ……手掛かりは、残ってなかった」
マジットから声を掛けられたアラッドは、先日伝えていたもしかしたらの話に対しての調査結果を伝えた。
「そうか。中々上手く進まないな……だとしても、アラッドがそんな暗い顔をすることはない」
「? そんなに顔に出てるか」
「隠すのは上手い方だと思うが、私の様なタイプにはバレるだろう」
信頼、共に過ごしてきた時間などは関係無く、今までの経験からアラッドのテンションを読み取った。
「焦る必要はない、というのは無責任だと思うが、何も動いているのは君だけじゃない。だから、もっと上を向いて歩くと良い」
励ます様に胸を軽く拳で叩かれ、頼りにしているスーパールーキーの疲労を癒す姉御。
「……あぁ、そうだな。ありがと」
アラッドは顔の赤みがバレない内に退却。
(はぁ~~、不用意にギルド内で話すんじゃなかったな)
マジットとの会話に色んな意味で疲れる……といった理由ではなく、本人に言われた通りタメ語で話していると、周囲の冒険者たちが殺気に近い感情をぶつけ始めた。
(た、確か俺だけじゃなくて、大抵の人にはタメ語で話すと良い……的なことを伝えてるって聞いたんだが、俺の勘違いだったか?)
全く勘違いではなく、マジットは冒険者になりたてのルーキーであっても、一度は自分に敬語は不要だと伝えている。
本人としては、その方が親しく話せるように、アドバイスも伝わりやすくなると考えている。
その考えは間違ってはいないと、他の指導者たちも賛同しなくはない。
ただ……マジットには、まだ三十を超えていないにもかかわらず、既に強制されずとも素で「教官!」と呼んでしまいそうな貫禄がある。
実際にその貫禄に見合う強さを有しているため、最初は言われた通りタメ語で話していたルーキーや、ケツの殻が完全に取れたルーキーとベテランの中間に立つ者たちも、いつしか敬語で話すようになってしまう。
一部のベテランも敬語で話すため、正直なところ……ギルドの上役よりも冒険者から信頼されている。
そういった事情もあって、本当にタメ語で話すルーキー……アラッドに対し、殺意に近い感情を向けられるのは、ある意味仕方なかった。
(……アンデットに殺される前に、同業者に殺されたりしないよな)
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