383 / 1,032
三百八十三話 消えた予想像
しおりを挟む
オーガファイターとの戦闘に割って入ったことに関して、特に問題にはならず、協力して解体。
「……本当に、魔石だけで良いのか?」
「あぁ、勿論。持ち物が壊れたりしてないからな」
「そうか」
オーガはオークやリザードマンと同じく、肉が食えて骨も悪くない値段で売れる。
当然、素材の中で一番高く売れる部分は魔石だが、その他全てを売るのであれば、余裕で魔石の買取値段を超える。
今回の一戦で前衛の青年が使用していた武器は破損一歩手前。
予備の武器は持っているが、使用していた武器よりもランクは下がる。
「それにしても、オーガファイターは三人が遭遇した時からあの状態だったのか?」
「そうだな。依頼の素材を集め終えたから帰ろうとしていたんだが、いきなり暴走したオーガファイターが襲い掛かってきた」
「普通のオーガなら倒せる自信があったんだけどね」
三人はまだDランクの冒険者ではあるが、実力的にはCランクに足を踏み入れてるといっても過言ではない実力を有していた。
そのため、一体だけであれば通常種のオーガや、Bランク以上ではないオーガであれば討伐出来る可能性は十分にある。
「ところで、君は例の事件に関して動いてるのか?」
「あぁ、一応な。黒幕の奴がどこかの街中か、もしくは街の外にいるのかは分からないけど、街の外であればクロの利点を活かせるからな」
「……正直、羨ましいと感じるな」
三人のリーダーである青年は、クロを見た時……暴走状態だったオーガファイター以上の脅威を感じ取った。
モンスターが人よりもスタミナに優れているのは周知の事実であり、体格からして自分たちの最高速度よりも速い速度で動けると解かってしまう。
「さっき、クロが何かしらに気付いたみたいだったんだが、俺が気付くのが遅れてな……ちっ」
アラッドの失態、と言うには大げさなのだが、本人は自身の警戒心や思考不足を嘆いた。
「その、もしかして先程の個体は、誰かが人為的に暴走させた……ということですか?」
「俺はその可能性が高いと思っている」
魔法が盛んな都市で冒険者として活動している事もあり、三人とも考える頭は持っている。
そのため「そんな事出来る訳ないだろ!!」と叫び散らかすことはなかった。
「……くそっ!!!! いったい、何を考えてるんだ!!」
非道な行いに対し叫ぶ青年に、アラッドは「叫んだところで現状は変わらないぞ」と冷静過ぎる言葉を掛ける気にはならない。
(クロや俺が気付いた内容が正しければ、今回の黒幕の目的は、ある程度絞れてくるな)
アラッドの予想から、一つの黒幕像が消えた。
「単純に考えるなら、復讐者による行動だろ」
「黒魔術、死霊魔法といった類の禁忌に近い魔法を研究している者が黒幕、ということでしょうか」
「俺はその可能性が一番高いと思う」
アラッドが可能性について明言し、三人は一旦深く考え込み……同じく、それしか考えられないという思考に至った。
(とりあえず、伝えた方が良さそうだな)
冒険者ギルドに入る前に、洋紙に今日の一件について記入。
(おっ、丁度良かった)
買い取り所にマジットが運良くおり、手に入れた素材と共にその洋紙を渡した。
「……ありがとう」
周囲には聞こえない小さな声で、アラッドに感謝を告げた。
(…………あの笑顔に、何人の人がやられたんだろうな)
感謝の言葉と同じく、周囲にバレるか否か。
それぐらい短い時間ではあったが、浮かべた笑顔の殺傷力がえぐいと感じたアラッド。
そんなマジットのギャップに多少やられながらも、買取が終了。
「……呑むか」
泊っている宿の食堂で夕食を食べ終えた後、アラッドはぽつりと呟き、宿の従業員にお勧めしてもらったバーに向かい、珍しくそれなりに酒を呑んだ。
勿論、許容範囲を超えるほどは吞んでおらず、翌日には再び事件の手掛かりを見つける為に動いた。
「……本当に、魔石だけで良いのか?」
「あぁ、勿論。持ち物が壊れたりしてないからな」
「そうか」
オーガはオークやリザードマンと同じく、肉が食えて骨も悪くない値段で売れる。
当然、素材の中で一番高く売れる部分は魔石だが、その他全てを売るのであれば、余裕で魔石の買取値段を超える。
今回の一戦で前衛の青年が使用していた武器は破損一歩手前。
予備の武器は持っているが、使用していた武器よりもランクは下がる。
「それにしても、オーガファイターは三人が遭遇した時からあの状態だったのか?」
「そうだな。依頼の素材を集め終えたから帰ろうとしていたんだが、いきなり暴走したオーガファイターが襲い掛かってきた」
「普通のオーガなら倒せる自信があったんだけどね」
三人はまだDランクの冒険者ではあるが、実力的にはCランクに足を踏み入れてるといっても過言ではない実力を有していた。
そのため、一体だけであれば通常種のオーガや、Bランク以上ではないオーガであれば討伐出来る可能性は十分にある。
「ところで、君は例の事件に関して動いてるのか?」
「あぁ、一応な。黒幕の奴がどこかの街中か、もしくは街の外にいるのかは分からないけど、街の外であればクロの利点を活かせるからな」
「……正直、羨ましいと感じるな」
三人のリーダーである青年は、クロを見た時……暴走状態だったオーガファイター以上の脅威を感じ取った。
モンスターが人よりもスタミナに優れているのは周知の事実であり、体格からして自分たちの最高速度よりも速い速度で動けると解かってしまう。
「さっき、クロが何かしらに気付いたみたいだったんだが、俺が気付くのが遅れてな……ちっ」
アラッドの失態、と言うには大げさなのだが、本人は自身の警戒心や思考不足を嘆いた。
「その、もしかして先程の個体は、誰かが人為的に暴走させた……ということですか?」
「俺はその可能性が高いと思っている」
魔法が盛んな都市で冒険者として活動している事もあり、三人とも考える頭は持っている。
そのため「そんな事出来る訳ないだろ!!」と叫び散らかすことはなかった。
「……くそっ!!!! いったい、何を考えてるんだ!!」
非道な行いに対し叫ぶ青年に、アラッドは「叫んだところで現状は変わらないぞ」と冷静過ぎる言葉を掛ける気にはならない。
(クロや俺が気付いた内容が正しければ、今回の黒幕の目的は、ある程度絞れてくるな)
アラッドの予想から、一つの黒幕像が消えた。
「単純に考えるなら、復讐者による行動だろ」
「黒魔術、死霊魔法といった類の禁忌に近い魔法を研究している者が黒幕、ということでしょうか」
「俺はその可能性が一番高いと思う」
アラッドが可能性について明言し、三人は一旦深く考え込み……同じく、それしか考えられないという思考に至った。
(とりあえず、伝えた方が良さそうだな)
冒険者ギルドに入る前に、洋紙に今日の一件について記入。
(おっ、丁度良かった)
買い取り所にマジットが運良くおり、手に入れた素材と共にその洋紙を渡した。
「……ありがとう」
周囲には聞こえない小さな声で、アラッドに感謝を告げた。
(…………あの笑顔に、何人の人がやられたんだろうな)
感謝の言葉と同じく、周囲にバレるか否か。
それぐらい短い時間ではあったが、浮かべた笑顔の殺傷力がえぐいと感じたアラッド。
そんなマジットのギャップに多少やられながらも、買取が終了。
「……呑むか」
泊っている宿の食堂で夕食を食べ終えた後、アラッドはぽつりと呟き、宿の従業員にお勧めしてもらったバーに向かい、珍しくそれなりに酒を呑んだ。
勿論、許容範囲を超えるほどは吞んでおらず、翌日には再び事件の手掛かりを見つける為に動いた。
200
お気に入りに追加
6,112
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
魔女、子供を拾う。そして育てる。
紫月 由良
ファンタジー
陥落した城で、魔女は子供を拾う。
雑用など色々と役に立つだろうといった思惑を持って。
でも家に連れ帰ると……。
自分が思っている以上に優しく母性溢れる魔女と、今まで碌な扱いをされてこなかった子供たちの物語。
エブリスタに投稿したものを加筆しています。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
見よう見まねで生産チート
立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します)
ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。
神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。
もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ
楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。
※基本的に主人公視点で進んでいきます。
※趣味作品ですので不定期投稿となります。
コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる