379 / 1,058
三百七十九話 今回は特例
しおりを挟む
「ん? もしや、褒められることに慣れてないのか」
「ま、まぁ……そうだな。面と向かってそんなに褒められると、少し恥ずかしい」
相手の見た目が整っているということもあり、恥ずかしさが倍増。
「ふふ、おかしな人だな。侯爵家の三男ともなれば、人から褒められる機会はいくらでもあっただろうに」
普通に考えれば、マジットの言葉通り、その機会はいくらでもある。
しかし、パーシブル家に仕える騎士や魔法使いたちは、アラッドにとって従者というよりも、家族の一人に近い。
レイたちは当然友人という関係であるため、褒められることに対してそこまで恥ずかしさなどは感じなかった。
そしてアラッドは……最低限社交界には出席していたが、本当に最低限の話。
そのため、殆ど関りがない者から褒められる機会はぁ多くなかった。
「とりあえず、アラッド君には伝えておいた方が良いと思う情報を伝えるよ」
「……対応は嬉しいが、ギルド職員が特定の冒険者を特別扱いするのは、不味いんじゃないか?」
「普通はそうだな。ただ、今回に限ってはギルドもそれを認めている。マジリストンの冒険者ギルドだけじゃなく、他の街でもランク的に基準を満たしていない冒険者であっても、特別に情報を教えてもらっている者たちがいる」
非常に数は少ないが、マジットの言う通り、アラッドの様なルーキーであっても戦力になりえる力を持っていれば、特例として一般公開されていない情報を教えてもらえる。
「アラッドは、その特別に十分当て嵌まっている」
「まぁ、元々その件に関して探りに来たから、お咎めなしであるなら別に構わないが」
事情を聞き終え、軽く食事を取った後……早速マジットはアラッドに盗まれた死体の詳細や、冒険者や兵士が不審な場所で殺された点についてなどの情報を伝えた。
(……死体の中には、Bランク冒険者のものもあるのか。他の死体もそこら辺の死体じゃないというか……明らかに量と質が異常だ。絶対に何かやらかすつもりだな)
墓荒しされた件数や、盗まれた死体の詳細から、アラッドの中で黒幕が変態貴族という線は消えた。
(というか、普通に警備とかされてる墓地から盗み出してるケースもある……黒幕自身が行ってるかどうかは知らないが、斥候技術も中々だな)
マジックアイテムを利用して突破している可能性もあるが、どちらにしろ死体弄りが得意なだけの屑ではないと解かる。
「現在ギルドが得られている情報は、こんなところだ。また新し情報が入れば教えるよ」
「助かるよ……しかし、まだアジトらしき場所も解ってないんだよな……厳しい状況だな」
黒幕がどこまで何を進めているのかは解らない。
しかし、盗んだ死体の情報を考えるに、余裕でそこら辺の村は破壊出来てしまう。
大きな都市でなければ、街を破壊することも不可能ではない。
「ギルドや、その件にあたっている冒険者も尽力を尽くしてるのだがな……あまりルーキーに頼り過ぎるのは組織としていかがなものかと解っている。だが、それでもアラッドたちの力を借りたい」
「元から貸すつもりだ。安心してくれ」
「そうか。感謝する」
「…………」
不意に見せられた笑顔に、アラッドはギリギリ表情にこそ出さなかったが、思わず目を逸らしそうになった。
(ギャップ、か? ちょっと心臓に悪かったな)
何はともあれ、いきなり情報を得られたこともあり、アラッドはその日の内にクロと共にアジトを探し始めた。
冒険者が不審死、もしくは行方不明になった場所なども含めて探す。
「どうだ、クロ」
「……ワフ」
「そうか、残ってなかったか」
気にするなと頭を撫でるアラッドだが、有効な手札を使えないのは少々痛かった。
(確かに、ここ数週間で雨は降った。今までの日数も考えれば、匂いが完全に消えていてもおかしくないか)
雨や失踪、不審死してからの日数。
もしくは……匂いが消された可能性も否定出来ない。
日が沈み始めるまで懸命に探し続けたが、その日は何も手掛かりを得ることが出来ずに終わった。
「ま、まぁ……そうだな。面と向かってそんなに褒められると、少し恥ずかしい」
相手の見た目が整っているということもあり、恥ずかしさが倍増。
「ふふ、おかしな人だな。侯爵家の三男ともなれば、人から褒められる機会はいくらでもあっただろうに」
普通に考えれば、マジットの言葉通り、その機会はいくらでもある。
しかし、パーシブル家に仕える騎士や魔法使いたちは、アラッドにとって従者というよりも、家族の一人に近い。
レイたちは当然友人という関係であるため、褒められることに対してそこまで恥ずかしさなどは感じなかった。
そしてアラッドは……最低限社交界には出席していたが、本当に最低限の話。
そのため、殆ど関りがない者から褒められる機会はぁ多くなかった。
「とりあえず、アラッド君には伝えておいた方が良いと思う情報を伝えるよ」
「……対応は嬉しいが、ギルド職員が特定の冒険者を特別扱いするのは、不味いんじゃないか?」
「普通はそうだな。ただ、今回に限ってはギルドもそれを認めている。マジリストンの冒険者ギルドだけじゃなく、他の街でもランク的に基準を満たしていない冒険者であっても、特別に情報を教えてもらっている者たちがいる」
非常に数は少ないが、マジットの言う通り、アラッドの様なルーキーであっても戦力になりえる力を持っていれば、特例として一般公開されていない情報を教えてもらえる。
「アラッドは、その特別に十分当て嵌まっている」
「まぁ、元々その件に関して探りに来たから、お咎めなしであるなら別に構わないが」
事情を聞き終え、軽く食事を取った後……早速マジットはアラッドに盗まれた死体の詳細や、冒険者や兵士が不審な場所で殺された点についてなどの情報を伝えた。
(……死体の中には、Bランク冒険者のものもあるのか。他の死体もそこら辺の死体じゃないというか……明らかに量と質が異常だ。絶対に何かやらかすつもりだな)
墓荒しされた件数や、盗まれた死体の詳細から、アラッドの中で黒幕が変態貴族という線は消えた。
(というか、普通に警備とかされてる墓地から盗み出してるケースもある……黒幕自身が行ってるかどうかは知らないが、斥候技術も中々だな)
マジックアイテムを利用して突破している可能性もあるが、どちらにしろ死体弄りが得意なだけの屑ではないと解かる。
「現在ギルドが得られている情報は、こんなところだ。また新し情報が入れば教えるよ」
「助かるよ……しかし、まだアジトらしき場所も解ってないんだよな……厳しい状況だな」
黒幕がどこまで何を進めているのかは解らない。
しかし、盗んだ死体の情報を考えるに、余裕でそこら辺の村は破壊出来てしまう。
大きな都市でなければ、街を破壊することも不可能ではない。
「ギルドや、その件にあたっている冒険者も尽力を尽くしてるのだがな……あまりルーキーに頼り過ぎるのは組織としていかがなものかと解っている。だが、それでもアラッドたちの力を借りたい」
「元から貸すつもりだ。安心してくれ」
「そうか。感謝する」
「…………」
不意に見せられた笑顔に、アラッドはギリギリ表情にこそ出さなかったが、思わず目を逸らしそうになった。
(ギャップ、か? ちょっと心臓に悪かったな)
何はともあれ、いきなり情報を得られたこともあり、アラッドはその日の内にクロと共にアジトを探し始めた。
冒険者が不審死、もしくは行方不明になった場所なども含めて探す。
「どうだ、クロ」
「……ワフ」
「そうか、残ってなかったか」
気にするなと頭を撫でるアラッドだが、有効な手札を使えないのは少々痛かった。
(確かに、ここ数週間で雨は降った。今までの日数も考えれば、匂いが完全に消えていてもおかしくないか)
雨や失踪、不審死してからの日数。
もしくは……匂いが消された可能性も否定出来ない。
日が沈み始めるまで懸命に探し続けたが、その日は何も手掛かりを得ることが出来ずに終わった。
221
お気に入りに追加
6,127
あなたにおすすめの小説

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる