スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
371 / 1,058

三百七十一話 そろそろ別の場所に

しおりを挟む
(もう、ゴルドスに滞在する意味はなさそうだな)

あまりルーキーがスタートするには相応しくなく、中堅どころが集まる街、ゴルドス。

街の周辺に生息するモンスターの強さを考えれば、その強さは解らなくもない。
Cランクのモンスターは決して珍しくなく、一日の間に数体も遭遇することだって珍しくない。

とはいえ、それだけではあまりアラッドの心は踊らない。

先日前に戦った、人の言葉を喋るオークシャーマンとの戦闘に関しては、それなりに冒険したという達成感を得た。
本来のランクよりも、何かしらの方法で強い力を手に入れ、後衛タイプらしくない強さを発揮し、アラッドを相手に善戦したといっても過言ではなかった。

その後の偶々受けた依頼に関しても、非常に満足していた。

結局オークシャーマンの様な強敵と戦うことはなく、その類と戦ったのは従魔のクロだったが、実際に初めてユニコーンを見ることが出来た、黒い体と捻じれた角を持つ変異体のケルピーを見ることが出来た。

当然変異体のケルピーの素材や魔石は亜空間に入っており、ユニコーンの角も合計二個手に入り、一つはアラッドの手にある。

冒険者として……錬金術師としても、美味しい体験ができた。
とはいえ、ゴルドス周辺にそれ以上の何かはなく……美味と噂の料理店はだいたい訪れたため、アラッドがこれ以上ゴルドスに滞在する意味はないと思うのも、むりはなかった。

(冒険者ランクはどの街にいても上げられる……そうなると、強いモンスターと戦うのが一番だよな)

ゴルドスは、ルーキーがスタートを始めるにはあまり相応しくなく、中堅冒険者が集まる街という理由で、最初に訪れる街として選んだ。

その情報通りの街であることは体感したが、これ以上の楽しさは手に入らない。
元々一つの街に長居するつもりはないため、依頼必要な素材を手に入れて帰ってきたアラッドは、直ぐに次の目的地について探し始めた。


「はぁ~~、あんまり良い情報はないな」

数日後、泊っている宿の食堂でうなだれているアラッド。

依頼を受けたり狩りをストップして、情報収集に専念しているのだが、これといってアラッドが興味をそそられる情報は見つからない。

一部、面白そうだと感じるものもあったが、そこまでの距離や、遭遇する可能性が決して低くないモンスターの強さなどを考え、選択肢から除外。

強いモンスターと戦いたいという思いはあるが、アラッドは死に場所を求めている訳ではない。
強力な味方、仲間であるクロという相棒もいるが、死ぬときはあっさり死んでしまう。

「よぅ。元気がないな、アラッド」

「どうも」

「中々良い情報が集まらないみたいだな」

「そうなんですよ。あんまり得意じゃないですけど、頑張って探してるんですけどね」

アラッドが仕事、狩りを行わずに情報を集めているという話は、冒険者内では既に広まっていた。

冒険者ギルドとしては、アラッド程有能な冒険者を他の街に行かせたくない……という思いはあるが、そんなことをすれば冒険者の象徴である自由を奪ってしまうことになる。

なので、アラッドにそれらの情報に関して尋ねても、無視したり嘘は付けない。

「本当かどうか分からねぇけど、面白い情報を手に入れたが、どうする?」

「一杯でも十杯でも奢ります」

「はっはっは! 話が早いな」

先輩冒険者の目、表情から嘘はないと判断し、アラッドは早速店員に一杯目のエールを頼んだ。

「実はな……ここ最近、墓から死体が盗まれる事件が起きてるんだよ。勿論、ゴルドスだけで起こってる事件じゃないぞ」

速攻で一杯目がなくなったため、即座に二杯目を注文。

「死体が盗まれる……もしかしなくても、悪い研究に使用されてる可能性が高いってことですか?」

「可能性は高いだろうな。一応、俺たちみたいなCランクにもそれとなく探ってくれって言われてるが、盗まれてる街が一つじゃないからな」

あまりにも捜索範囲が広いため、ギルドからの頼み通り、それとなく探ることしか出来ない。

だが……アラッドであれば、その常識を覆せた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

処理中です...