368 / 1,046
三百六十八話 待っていたのは、一人の客
しおりを挟む
幸運が重なり、ユニコーンとの関係を悪化させずにユニコーンの角を手に入れ、依頼を達成して大金を手に入れたアラッド。
その日の夕食は豪華な物を食べ、英気を養った。
そして翌日……平気な顔で従魔であるクロと共にギルドへ向かう。
ギルド内に入ると、先日と同様に……多くの冒険者が奇異の目をアラッドに向けた。
(あれだけの大金を手に入れた翌日に、平然としてギルドに顔を出すのか)
(ギルドに顔を出しただけ……じゃないよな)
(あの顔、やっぱり依頼を探しに来たみたいね。あの子には、休むという選択肢がないのかしら)
依頼を受け、達成した翌日を休息日に当てる冒険者は多い。
依頼を達成しようと動けば、疲労が溜まるのは当然の流れ。
金が必要な理由があるならまだしも、普通は連続で依頼を受ける冒険者はいない。
(もしかして、借金でもあるのか?)
(アラッドの実家が借金を背負ってるって話は聞いたことがないし……アラッドは借金を背負う性格ではないしな)
(仮に借金を背負ってたとしても、先日の白金貨三十枚だったか? あれだけの大金があれば、借金は返せるだろ。もしかして、白金貨三十枚以上の欲しい武器やマジックアイテムでもあるのか?)
ベテランたちは様々な考えを頭に思い浮かべるが、どれもしっくりこない。
ルーキーたちはアラッドの存在に気付くと……殆どの者たちが、理解不能な存在を見る目を向けていた。
そんな同業者たちの視線を無視し、アラッドは適当な依頼書を取り、受付嬢へ受理してもらい……本日も元気良く街の外へ向かう。
手頃なDランクモンスターの討伐依頼を終え、夕方手前にギルドへ戻ってきた。
ギルドに戻ってきたアラッドに、再び視線が集まる。
しかし、今回は「何故今日も来ているんだ?」という感情が籠った視線ではない。
「ッ!?」
アラッドの存在に気付いた、冒険者ギルド内に似合わない所々汚れが落ちていない白衣を身に纏う男性が、アラッドの元へ猛ダッシュで駆け寄る。
いきなり自分に向かって走ってくる存在に驚き、思わず身構える。
最初から敵意がないことは解っていたが、念には念をといった考えを持っているため、至極当然の流れではある。
「あなたが、ユニコーンの角を取ってきて、僕の依頼を達成してくれたアラッドさん……いや、アラッド様ですね!!!!!」
「えっと……はい、おそらくあなたがクエストボードに張り出していた依頼を達成した、アラッド・パーシバルです」
男のテンションに戸惑いながらも、なんとか冷静さを保って返答。
「僕が出した依頼を達成していただき、誠に感謝しています!!!!」
年齢だけを見れば、白衣の男はアラッドよりも十歳ほど歳上。
そんな歳上の男性が、目の前で綺麗に腰を九十度に折り、自分に礼を申し上げている。
感謝されるのは、それはそれで嬉しい……よりも、若干恥ずかしいという気持ちの方が上回っていた。
なにより、ユニコーンの角を一本取ってくるだけで、白金貨三十枚という大金を手に入れられる。
そして何より、依頼内容が面白いと感じたので受けたため、本人はそこまで依頼主に感謝されることではないと考えている。
実際に、冒険者が自らの意思で依頼を受けたという事実を考えれば、そこまで依頼主が感謝する必要はない。
ただ……ユニコーンの角という、下手すれば属性持ちのドラゴンを倒すよりも難しいクエストを達成してくれた。
男にとっては、それだけでアラッドに感謝してもしきれない。
「あの、感謝の気持ちは伝わったので、頭を上げてほしい」
「いえ! そういう訳にはいきません!!! あのキャバリオンの生みの親であるアラッド様に依頼を受けて頂き、素材を手に入れてもらった……それだけでも、この程度では感謝の意を伝えきれません!!!」
本人は戸惑っているが、白衣の男は様付けするほど、アラッドという存在に敬意を抱いていた。
その日の夕食は豪華な物を食べ、英気を養った。
そして翌日……平気な顔で従魔であるクロと共にギルドへ向かう。
ギルド内に入ると、先日と同様に……多くの冒険者が奇異の目をアラッドに向けた。
(あれだけの大金を手に入れた翌日に、平然としてギルドに顔を出すのか)
(ギルドに顔を出しただけ……じゃないよな)
(あの顔、やっぱり依頼を探しに来たみたいね。あの子には、休むという選択肢がないのかしら)
依頼を受け、達成した翌日を休息日に当てる冒険者は多い。
依頼を達成しようと動けば、疲労が溜まるのは当然の流れ。
金が必要な理由があるならまだしも、普通は連続で依頼を受ける冒険者はいない。
(もしかして、借金でもあるのか?)
(アラッドの実家が借金を背負ってるって話は聞いたことがないし……アラッドは借金を背負う性格ではないしな)
(仮に借金を背負ってたとしても、先日の白金貨三十枚だったか? あれだけの大金があれば、借金は返せるだろ。もしかして、白金貨三十枚以上の欲しい武器やマジックアイテムでもあるのか?)
ベテランたちは様々な考えを頭に思い浮かべるが、どれもしっくりこない。
ルーキーたちはアラッドの存在に気付くと……殆どの者たちが、理解不能な存在を見る目を向けていた。
そんな同業者たちの視線を無視し、アラッドは適当な依頼書を取り、受付嬢へ受理してもらい……本日も元気良く街の外へ向かう。
手頃なDランクモンスターの討伐依頼を終え、夕方手前にギルドへ戻ってきた。
ギルドに戻ってきたアラッドに、再び視線が集まる。
しかし、今回は「何故今日も来ているんだ?」という感情が籠った視線ではない。
「ッ!?」
アラッドの存在に気付いた、冒険者ギルド内に似合わない所々汚れが落ちていない白衣を身に纏う男性が、アラッドの元へ猛ダッシュで駆け寄る。
いきなり自分に向かって走ってくる存在に驚き、思わず身構える。
最初から敵意がないことは解っていたが、念には念をといった考えを持っているため、至極当然の流れではある。
「あなたが、ユニコーンの角を取ってきて、僕の依頼を達成してくれたアラッドさん……いや、アラッド様ですね!!!!!」
「えっと……はい、おそらくあなたがクエストボードに張り出していた依頼を達成した、アラッド・パーシバルです」
男のテンションに戸惑いながらも、なんとか冷静さを保って返答。
「僕が出した依頼を達成していただき、誠に感謝しています!!!!」
年齢だけを見れば、白衣の男はアラッドよりも十歳ほど歳上。
そんな歳上の男性が、目の前で綺麗に腰を九十度に折り、自分に礼を申し上げている。
感謝されるのは、それはそれで嬉しい……よりも、若干恥ずかしいという気持ちの方が上回っていた。
なにより、ユニコーンの角を一本取ってくるだけで、白金貨三十枚という大金を手に入れられる。
そして何より、依頼内容が面白いと感じたので受けたため、本人はそこまで依頼主に感謝されることではないと考えている。
実際に、冒険者が自らの意思で依頼を受けたという事実を考えれば、そこまで依頼主が感謝する必要はない。
ただ……ユニコーンの角という、下手すれば属性持ちのドラゴンを倒すよりも難しいクエストを達成してくれた。
男にとっては、それだけでアラッドに感謝してもしきれない。
「あの、感謝の気持ちは伝わったので、頭を上げてほしい」
「いえ! そういう訳にはいきません!!! あのキャバリオンの生みの親であるアラッド様に依頼を受けて頂き、素材を手に入れてもらった……それだけでも、この程度では感謝の意を伝えきれません!!!」
本人は戸惑っているが、白衣の男は様付けするほど、アラッドという存在に敬意を抱いていた。
218
お気に入りに追加
6,127
あなたにおすすめの小説

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる