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三百六十八話 待っていたのは、一人の客
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幸運が重なり、ユニコーンとの関係を悪化させずにユニコーンの角を手に入れ、依頼を達成して大金を手に入れたアラッド。
その日の夕食は豪華な物を食べ、英気を養った。
そして翌日……平気な顔で従魔であるクロと共にギルドへ向かう。
ギルド内に入ると、先日と同様に……多くの冒険者が奇異の目をアラッドに向けた。
(あれだけの大金を手に入れた翌日に、平然としてギルドに顔を出すのか)
(ギルドに顔を出しただけ……じゃないよな)
(あの顔、やっぱり依頼を探しに来たみたいね。あの子には、休むという選択肢がないのかしら)
依頼を受け、達成した翌日を休息日に当てる冒険者は多い。
依頼を達成しようと動けば、疲労が溜まるのは当然の流れ。
金が必要な理由があるならまだしも、普通は連続で依頼を受ける冒険者はいない。
(もしかして、借金でもあるのか?)
(アラッドの実家が借金を背負ってるって話は聞いたことがないし……アラッドは借金を背負う性格ではないしな)
(仮に借金を背負ってたとしても、先日の白金貨三十枚だったか? あれだけの大金があれば、借金は返せるだろ。もしかして、白金貨三十枚以上の欲しい武器やマジックアイテムでもあるのか?)
ベテランたちは様々な考えを頭に思い浮かべるが、どれもしっくりこない。
ルーキーたちはアラッドの存在に気付くと……殆どの者たちが、理解不能な存在を見る目を向けていた。
そんな同業者たちの視線を無視し、アラッドは適当な依頼書を取り、受付嬢へ受理してもらい……本日も元気良く街の外へ向かう。
手頃なDランクモンスターの討伐依頼を終え、夕方手前にギルドへ戻ってきた。
ギルドに戻ってきたアラッドに、再び視線が集まる。
しかし、今回は「何故今日も来ているんだ?」という感情が籠った視線ではない。
「ッ!?」
アラッドの存在に気付いた、冒険者ギルド内に似合わない所々汚れが落ちていない白衣を身に纏う男性が、アラッドの元へ猛ダッシュで駆け寄る。
いきなり自分に向かって走ってくる存在に驚き、思わず身構える。
最初から敵意がないことは解っていたが、念には念をといった考えを持っているため、至極当然の流れではある。
「あなたが、ユニコーンの角を取ってきて、僕の依頼を達成してくれたアラッドさん……いや、アラッド様ですね!!!!!」
「えっと……はい、おそらくあなたがクエストボードに張り出していた依頼を達成した、アラッド・パーシバルです」
男のテンションに戸惑いながらも、なんとか冷静さを保って返答。
「僕が出した依頼を達成していただき、誠に感謝しています!!!!」
年齢だけを見れば、白衣の男はアラッドよりも十歳ほど歳上。
そんな歳上の男性が、目の前で綺麗に腰を九十度に折り、自分に礼を申し上げている。
感謝されるのは、それはそれで嬉しい……よりも、若干恥ずかしいという気持ちの方が上回っていた。
なにより、ユニコーンの角を一本取ってくるだけで、白金貨三十枚という大金を手に入れられる。
そして何より、依頼内容が面白いと感じたので受けたため、本人はそこまで依頼主に感謝されることではないと考えている。
実際に、冒険者が自らの意思で依頼を受けたという事実を考えれば、そこまで依頼主が感謝する必要はない。
ただ……ユニコーンの角という、下手すれば属性持ちのドラゴンを倒すよりも難しいクエストを達成してくれた。
男にとっては、それだけでアラッドに感謝してもしきれない。
「あの、感謝の気持ちは伝わったので、頭を上げてほしい」
「いえ! そういう訳にはいきません!!! あのキャバリオンの生みの親であるアラッド様に依頼を受けて頂き、素材を手に入れてもらった……それだけでも、この程度では感謝の意を伝えきれません!!!」
本人は戸惑っているが、白衣の男は様付けするほど、アラッドという存在に敬意を抱いていた。
その日の夕食は豪華な物を食べ、英気を養った。
そして翌日……平気な顔で従魔であるクロと共にギルドへ向かう。
ギルド内に入ると、先日と同様に……多くの冒険者が奇異の目をアラッドに向けた。
(あれだけの大金を手に入れた翌日に、平然としてギルドに顔を出すのか)
(ギルドに顔を出しただけ……じゃないよな)
(あの顔、やっぱり依頼を探しに来たみたいね。あの子には、休むという選択肢がないのかしら)
依頼を受け、達成した翌日を休息日に当てる冒険者は多い。
依頼を達成しようと動けば、疲労が溜まるのは当然の流れ。
金が必要な理由があるならまだしも、普通は連続で依頼を受ける冒険者はいない。
(もしかして、借金でもあるのか?)
(アラッドの実家が借金を背負ってるって話は聞いたことがないし……アラッドは借金を背負う性格ではないしな)
(仮に借金を背負ってたとしても、先日の白金貨三十枚だったか? あれだけの大金があれば、借金は返せるだろ。もしかして、白金貨三十枚以上の欲しい武器やマジックアイテムでもあるのか?)
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ルーキーたちはアラッドの存在に気付くと……殆どの者たちが、理解不能な存在を見る目を向けていた。
そんな同業者たちの視線を無視し、アラッドは適当な依頼書を取り、受付嬢へ受理してもらい……本日も元気良く街の外へ向かう。
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ギルドに戻ってきたアラッドに、再び視線が集まる。
しかし、今回は「何故今日も来ているんだ?」という感情が籠った視線ではない。
「ッ!?」
アラッドの存在に気付いた、冒険者ギルド内に似合わない所々汚れが落ちていない白衣を身に纏う男性が、アラッドの元へ猛ダッシュで駆け寄る。
いきなり自分に向かって走ってくる存在に驚き、思わず身構える。
最初から敵意がないことは解っていたが、念には念をといった考えを持っているため、至極当然の流れではある。
「あなたが、ユニコーンの角を取ってきて、僕の依頼を達成してくれたアラッドさん……いや、アラッド様ですね!!!!!」
「えっと……はい、おそらくあなたがクエストボードに張り出していた依頼を達成した、アラッド・パーシバルです」
男のテンションに戸惑いながらも、なんとか冷静さを保って返答。
「僕が出した依頼を達成していただき、誠に感謝しています!!!!」
年齢だけを見れば、白衣の男はアラッドよりも十歳ほど歳上。
そんな歳上の男性が、目の前で綺麗に腰を九十度に折り、自分に礼を申し上げている。
感謝されるのは、それはそれで嬉しい……よりも、若干恥ずかしいという気持ちの方が上回っていた。
なにより、ユニコーンの角を一本取ってくるだけで、白金貨三十枚という大金を手に入れられる。
そして何より、依頼内容が面白いと感じたので受けたため、本人はそこまで依頼主に感謝されることではないと考えている。
実際に、冒険者が自らの意思で依頼を受けたという事実を考えれば、そこまで依頼主が感謝する必要はない。
ただ……ユニコーンの角という、下手すれば属性持ちのドラゴンを倒すよりも難しいクエストを達成してくれた。
男にとっては、それだけでアラッドに感謝してもしきれない。
「あの、感謝の気持ちは伝わったので、頭を上げてほしい」
「いえ! そういう訳にはいきません!!! あのキャバリオンの生みの親であるアラッド様に依頼を受けて頂き、素材を手に入れてもらった……それだけでも、この程度では感謝の意を伝えきれません!!!」
本人は戸惑っているが、白衣の男は様付けするほど、アラッドという存在に敬意を抱いていた。
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