364 / 984
三百六十四話 その変化は知らない
しおりを挟む
戦闘音が聞こえる方向になるべく気配を消しながら、速足で向かう。
(白い雷に……黒い雷?)
ユニコーンが雷魔法を使うため、その点に関しては疑問を持たない。
寧ろ絶対にユニコーンがいると確証が持て、テンションが上がる。
ただ、黒い雷を操るモンスターは聞いたことがなく、頭を捻るアラッド。
(黒い雷……もしかして、闇落ちしたユニコーンとか?)
そんな話は聞いたことがない。
アラッドの情報にはないが……歴史を遡ると、人の手によって無理矢理闇に落とされたユニコーンが、黒い雷を操るようになった、という事実はある。
「ストップ、クロ」
戦闘を目視できる距離まで接近できたため、一旦脚を止める。
「あれは……ケルピー、か?」
通称、水上の馬。
馬の様な見た目だが、ヒレがついており、一般的な馬が走ることが出来ない水の上を駆けることが出来る。
そんなケルピーの額に、一本角が生えていた。
これに関しても、そこまで珍しくはない。
理由は定かではないが、角が生えるケルピーがいるという情報は、冒険者であれば割と知っている内容。
当然、アラッドもその情報は頭に入れている。
だが……目の前のケルピーは、そもそも肌の色が通常種と違い、ダークな色が強く、角も長い。
過去に数回しか戦闘経験はないが、それでも普通のケルピーではないと解る。
(というか、ケルピーが使う属性魔法は水だろ。なんで雷を使ってるんだ……)
真面目に考えようとしたが、今は考えるだけ時間の無駄だと判断し、放棄。
次に視線を向けたのは、そのケルピー対峙する一体のユニコーンと……その後ろで怯えている体が小さいユニコーン。
(……先日、俺に戦意を向けてきた相手は、あのユニコーンだったのか?)
向けられた視線に戦意だけしか感じなかった。
加えて、その戦意の強さと警戒心を考慮すると、目の前で子供を守る様に戦うユニコーンしか考えられない。
(というか、あのケルピー……絶対にこの状況を悪い意味で楽しんでるな)
少し離れた場所からでも、邪悪な笑みを浮かべているのが解かる。
怯える子の前で、親をいたぶる。
そして最後は殺し、絶望を与えてから子も殺す。
なんて事を考えている様に思え、他人事ではあるが……少なからず怒りが湧いたアラッド。
「ワゥ」
「……確かに、前回は俺が戦ったもんな」
先日、Bランク相当の戦力を持つオークシャーマンと戦った。
クロとしても、あのオークシャーマンは良い遊び相手だと感じていた。
そのため……今回は自分が戦いたいと主人に伝え、アラッドはその要望に応じた。
「分かった。素材は欲しいが……最悪、ぶっ潰しても良い」
「ワゥ!!!」
主人の許可を貰い、勢い良く白と黒の雷が火花を散らす戦場へ乱入。
「「ッ!?」」
当然、両者は突然の乱入者に驚く。
いきなり自分たちに戦いに割って入ってきた。
その現実だけではなく……その戦闘力の高さに、先程まで邪悪な笑みを浮かべていたケルピーの表情が崩れる。
「俺は、あんたたちに危害を加えるつもりはない」
クロが襲い掛かる相手は、ケルピーのみ。
ユニコーンには一切そういった感情を向けない。
「……」
突然戦闘に割って入ってきた巨狼、そして一人の人間。
自分たちに敵意や殺意を向けられてはいないが、それでも油断はできない。
アラッドとしても、特にその警戒心を無理矢理解こうとはしない。
ただ……お前たちに敵意はないという示す為、ホールドアップした状態で比較的体が大きいユニコーンの前に立った。
強化スキルは使用していない。体から魔力も出していない。
現状でユニコーンのタックルや白い雷を食らえば、最悪殺られてしまうかもしれない。
それは理解しているが、それでも今回の仕事は明確に殺意や敵意はないと伝えるのが仕事だと思い、視線を切らさずユニコーンの前に立ち続けた。
(白い雷に……黒い雷?)
ユニコーンが雷魔法を使うため、その点に関しては疑問を持たない。
寧ろ絶対にユニコーンがいると確証が持て、テンションが上がる。
ただ、黒い雷を操るモンスターは聞いたことがなく、頭を捻るアラッド。
(黒い雷……もしかして、闇落ちしたユニコーンとか?)
そんな話は聞いたことがない。
アラッドの情報にはないが……歴史を遡ると、人の手によって無理矢理闇に落とされたユニコーンが、黒い雷を操るようになった、という事実はある。
「ストップ、クロ」
戦闘を目視できる距離まで接近できたため、一旦脚を止める。
「あれは……ケルピー、か?」
通称、水上の馬。
馬の様な見た目だが、ヒレがついており、一般的な馬が走ることが出来ない水の上を駆けることが出来る。
そんなケルピーの額に、一本角が生えていた。
これに関しても、そこまで珍しくはない。
理由は定かではないが、角が生えるケルピーがいるという情報は、冒険者であれば割と知っている内容。
当然、アラッドもその情報は頭に入れている。
だが……目の前のケルピーは、そもそも肌の色が通常種と違い、ダークな色が強く、角も長い。
過去に数回しか戦闘経験はないが、それでも普通のケルピーではないと解る。
(というか、ケルピーが使う属性魔法は水だろ。なんで雷を使ってるんだ……)
真面目に考えようとしたが、今は考えるだけ時間の無駄だと判断し、放棄。
次に視線を向けたのは、そのケルピー対峙する一体のユニコーンと……その後ろで怯えている体が小さいユニコーン。
(……先日、俺に戦意を向けてきた相手は、あのユニコーンだったのか?)
向けられた視線に戦意だけしか感じなかった。
加えて、その戦意の強さと警戒心を考慮すると、目の前で子供を守る様に戦うユニコーンしか考えられない。
(というか、あのケルピー……絶対にこの状況を悪い意味で楽しんでるな)
少し離れた場所からでも、邪悪な笑みを浮かべているのが解かる。
怯える子の前で、親をいたぶる。
そして最後は殺し、絶望を与えてから子も殺す。
なんて事を考えている様に思え、他人事ではあるが……少なからず怒りが湧いたアラッド。
「ワゥ」
「……確かに、前回は俺が戦ったもんな」
先日、Bランク相当の戦力を持つオークシャーマンと戦った。
クロとしても、あのオークシャーマンは良い遊び相手だと感じていた。
そのため……今回は自分が戦いたいと主人に伝え、アラッドはその要望に応じた。
「分かった。素材は欲しいが……最悪、ぶっ潰しても良い」
「ワゥ!!!」
主人の許可を貰い、勢い良く白と黒の雷が火花を散らす戦場へ乱入。
「「ッ!?」」
当然、両者は突然の乱入者に驚く。
いきなり自分たちに戦いに割って入ってきた。
その現実だけではなく……その戦闘力の高さに、先程まで邪悪な笑みを浮かべていたケルピーの表情が崩れる。
「俺は、あんたたちに危害を加えるつもりはない」
クロが襲い掛かる相手は、ケルピーのみ。
ユニコーンには一切そういった感情を向けない。
「……」
突然戦闘に割って入ってきた巨狼、そして一人の人間。
自分たちに敵意や殺意を向けられてはいないが、それでも油断はできない。
アラッドとしても、特にその警戒心を無理矢理解こうとはしない。
ただ……お前たちに敵意はないという示す為、ホールドアップした状態で比較的体が大きいユニコーンの前に立った。
強化スキルは使用していない。体から魔力も出していない。
現状でユニコーンのタックルや白い雷を食らえば、最悪殺られてしまうかもしれない。
それは理解しているが、それでも今回の仕事は明確に殺意や敵意はないと伝えるのが仕事だと思い、視線を切らさずユニコーンの前に立ち続けた。
196
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる