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三百六十二話 視線の正体は
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「ッ!!?? …………なんだ、今のは」
確実に……間違いなく、自分に視線が向けられた。
おそらく、敵意の類。
本当に一瞬だったため、正確には解らなかった。
ただ……敵意はあったが、殺意はないと感じたアラッド。
「クロも感じたか、今の視線」
「ワゥ」
「……いったい、誰の視線だったんだろうな」
向けられた視線だけで、いったいどんな人物、はたまたモンスターから向けられた視線なのかは分からない。
魔眼の鑑定を使って調べようとしても、姿が見えなければ意味はない。
アラッドが向けられた視線の先に目を向けた時には、既に主の姿はなかった。
(…………まさか、ユニコーンか? でも、基本的に戦闘を好まないって聞いてたんだが……解らないな)
確かに視線を向けられた。
しかし、既にその方向から姿は消えていた。
警戒心が高い誰か、というのだけは分るが、それ以上は分らない。
「とりあえず飯にしようか」
「ワゥ!」
一応頭の中に置いておきながらも、アラッドは予定通り昼食の準備を始めた。
途中で匂いに釣られた二体のオークが襲い掛かってきたが、難無く討伐。
食後の運動とばかり解体を行い、再び探索開始。
(あの視線の主はいったい誰だったのか……気になるな)
そもそも人なのか、モンスターなのか分からない。
モンスターであれば、アラッド的にはユニコーンの可能性が高いと考えている。
逆に人であれば……ユニコーンを狙う同業者、もしくは裏の人間。
(同業者なら、まだ良いんだが……裏の人間であれば、早めに見つけて潰しておきたいな)
同業者であれば、ユニコーンの素材価値を理解している。
理解していなければ、そもそも狙おうとすらしない。
裏の人間も、知識がある者であれば、その価値を理解している。
ただ……理解しているからといって、殺さないとは限らない。
(……ダメだ、考え過ぎるのは良くない。本当に頭の片隅に置いておく程度にしないと)
気持ちを切り替え、改めてユニコーン探しに専念。
森の中で隠れそうな場所なども見逃さずに探していくが……日が沈み始めるころ、まだ手掛かり一つ見つからない状態が続いていた。
「もうちょい探しても見つからなかったら、野営の準備を始めるか」
その表情に、焦りはない。
探索はまだまだ始まったばかり。
標的が標的なため、焦ったところで見つかる相手ではない。
その事実を理解しながらもう少しだけ探索し……結果、本日もユニコーンが見つかることなく終わった。
「それじゃ、今日も頼む」
「ワゥ!」
夕食と入浴を済ませ、明日に備えてアラッドは就寝。
クロも楽な体勢を取る。
体は休めているが、意識はある。
何かあれば……自分や主人を狙う者が現れれば、即座に反応出来る状態。
誰かに倣った訳ではなく、自然と休みながらも警戒する術を習得していた。
「…………」
とはいえ、何も起こらない。
アラッドの就寝時以降、クロは制限を外していた。
ブラックウルフに近い姿から、本来のデルドウルフの姿に変えていた。
これにより、バカなモンスターでも本能的にクロの強さを感じ取り、むやみやたらに仕掛けてくることはない。
故に、クロは今夜も自分たちに手を出す連中はいない……そう思っていた。
その気の緩みが油断に……繋がりはしなかった。
「ッ!?」
しかし、音が聞こえるまで、二つの強大な存在がぶつかり合っていることに気付かなかった。
その音だけで、ぶつかり合っているモンスターが並の存在ではないと解かる。
もしかしたら、主人が探しているモンスター……かもしれない。
であれば、今からアラッドを起こして現場に向かうのが最善、と判断してもおかしくない。
だが、ここでクロは周囲への警戒心は強めるが、主人であるアラッドは起こさなかった。
夜という状況や、強大な力を持つ存在が一体ではなく二体。
それらの状況を鑑みて、クロは翌朝に主人へ伝えようと決めた。
確実に……間違いなく、自分に視線が向けられた。
おそらく、敵意の類。
本当に一瞬だったため、正確には解らなかった。
ただ……敵意はあったが、殺意はないと感じたアラッド。
「クロも感じたか、今の視線」
「ワゥ」
「……いったい、誰の視線だったんだろうな」
向けられた視線だけで、いったいどんな人物、はたまたモンスターから向けられた視線なのかは分からない。
魔眼の鑑定を使って調べようとしても、姿が見えなければ意味はない。
アラッドが向けられた視線の先に目を向けた時には、既に主の姿はなかった。
(…………まさか、ユニコーンか? でも、基本的に戦闘を好まないって聞いてたんだが……解らないな)
確かに視線を向けられた。
しかし、既にその方向から姿は消えていた。
警戒心が高い誰か、というのだけは分るが、それ以上は分らない。
「とりあえず飯にしようか」
「ワゥ!」
一応頭の中に置いておきながらも、アラッドは予定通り昼食の準備を始めた。
途中で匂いに釣られた二体のオークが襲い掛かってきたが、難無く討伐。
食後の運動とばかり解体を行い、再び探索開始。
(あの視線の主はいったい誰だったのか……気になるな)
そもそも人なのか、モンスターなのか分からない。
モンスターであれば、アラッド的にはユニコーンの可能性が高いと考えている。
逆に人であれば……ユニコーンを狙う同業者、もしくは裏の人間。
(同業者なら、まだ良いんだが……裏の人間であれば、早めに見つけて潰しておきたいな)
同業者であれば、ユニコーンの素材価値を理解している。
理解していなければ、そもそも狙おうとすらしない。
裏の人間も、知識がある者であれば、その価値を理解している。
ただ……理解しているからといって、殺さないとは限らない。
(……ダメだ、考え過ぎるのは良くない。本当に頭の片隅に置いておく程度にしないと)
気持ちを切り替え、改めてユニコーン探しに専念。
森の中で隠れそうな場所なども見逃さずに探していくが……日が沈み始めるころ、まだ手掛かり一つ見つからない状態が続いていた。
「もうちょい探しても見つからなかったら、野営の準備を始めるか」
その表情に、焦りはない。
探索はまだまだ始まったばかり。
標的が標的なため、焦ったところで見つかる相手ではない。
その事実を理解しながらもう少しだけ探索し……結果、本日もユニコーンが見つかることなく終わった。
「それじゃ、今日も頼む」
「ワゥ!」
夕食と入浴を済ませ、明日に備えてアラッドは就寝。
クロも楽な体勢を取る。
体は休めているが、意識はある。
何かあれば……自分や主人を狙う者が現れれば、即座に反応出来る状態。
誰かに倣った訳ではなく、自然と休みながらも警戒する術を習得していた。
「…………」
とはいえ、何も起こらない。
アラッドの就寝時以降、クロは制限を外していた。
ブラックウルフに近い姿から、本来のデルドウルフの姿に変えていた。
これにより、バカなモンスターでも本能的にクロの強さを感じ取り、むやみやたらに仕掛けてくることはない。
故に、クロは今夜も自分たちに手を出す連中はいない……そう思っていた。
その気の緩みが油断に……繋がりはしなかった。
「ッ!?」
しかし、音が聞こえるまで、二つの強大な存在がぶつかり合っていることに気付かなかった。
その音だけで、ぶつかり合っているモンスターが並の存在ではないと解かる。
もしかしたら、主人が探しているモンスター……かもしれない。
であれば、今からアラッドを起こして現場に向かうのが最善、と判断してもおかしくない。
だが、ここでクロは周囲への警戒心は強めるが、主人であるアラッドは起こさなかった。
夜という状況や、強大な力を持つ存在が一体ではなく二体。
それらの状況を鑑みて、クロは翌朝に主人へ伝えようと決めた。
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