スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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三百五十八話 とりあえず一本外れてる

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「「「「かんぱ~~~い!!!」」」」

一日で領主の娘、リネアの救出を終えたアラッドを祝うため、酒場ではベテラン冒険者たちが音頭を取り、主役にご馳走を振舞っていた。

(呑んで食って騒ぐのが好きな人達だな……気持ちは解らなくもないけど)

またもや功績を積んだアラッドを妬む者は、とりあえずベテラン冒険者にはいなかった。

同じルーキーたちであっても……ここまでくれば、アラッドは本当に自分たちとは次元が違う存在。
そう認めざるを得ないといけない空気になっていた。

勿論、まだアラッドの実力を認められないルーキーも残っている。
実力では負けていても、冒険者としての力量では自分の方が上だ!!! と言いたい者もいるが、そんな発言をしたところで、誰の関心も引けないというのは、薄々気付いている。

「しっかし、まさか一日で見つけちまうとはな」

「逆に一日で見つけないとヤバかったですよ。それに、クロの脚があっての結果です」

「謙虚だな~~。まっ、お前の従魔も半端な一手のは認めるけどよ」

ベテランと言えるほど経験値がある者であれば、クロの詳細は分からずとも、確実に並み以上の実力を持っていると解かる。

その存在感は、ルーキーであっても下手にちょっかいをかける気が起きない程の強大。

「んで、オークシャーマンはそんなにヤバかったのか」

「ヤバかったですね。戦闘力もかなり戦ったですけど、存在自体がヤバいというか……もっと成長していたら、絶望的な存在と言ってもおかしくないかと」

「はっはっは!! そりゃやべぇな~……でも、アラッドなら殺れるんだろ」

楽し気な表情でアラッドをよいしょする先輩冒険者だが、本人を首を横に振った。

「クロがいれば倒せると思いますけど、俺一人だけなら難しいですね」

真面目にその時の光景を思い出しながら答えたため、一瞬その場の空気が固まったが、酒が入った冒険者たちは直ぐに笑い出す。

(いや、マジで強かったんだけど……まぁ、笑ってるだけでその辺は信じてくれてるよな)

先輩たちの脳がお花畑過ぎないと信じ……アラッドも依頼のことは忘れ、先輩たちが奢ってくれる料理や酒を呑んで食べつくした。

翌日、帰り道で吐くことはなかったが、朝起きると小さな頭痛がアラッドを襲う。

「……奢りとはいえ、ちょっと呑み過ぎたか」

呑み過ぎたと反省はする。
反省はするが、また先輩たちから飯を奢られたら……先日と同じ様に思いっきり呑んで食うだろうと思いながら、朝食を食べ終え、休むことなく冒険者ギルドへ向かった。

「えっ、なんで……」

「昨日、オークの上位種相手に戦ってたんだよな?」

ギルドに入ってきたアラッドを見て、ルーキーたちは何故ここに来たのかと疑問を抱く。

「いやぁ~~、やっぱあれだな。俺らとは頭の出来が違うな」

「全くもってその通りだ。ったく、あと数か月もすれば俺たちのランクもあっさり抜くんだろうな」

ベテランたちは、全員アッラッドという人間は、確実に頭のネジが一本以上外れているという認識を持った。

これは決して馬鹿にしているのではない……ただ、敬意を持っている訳でもない。
ただ、色々とぶっ飛んでいるという結論に至っただけの話。

(今日は何を受けようか……いつも通り討伐系の依頼か? 少し遠くまで行って、入手が困難な薬草の採集とかも面白そうだな)

どんな依頼を受けるか考えながらクエストボードに向かって歩を進めるアラッド。

そんな同期の中でもずば抜けて強い存在感を持つアラッドを……同業者たちは自然と避け、道をつくった。

考えに集中していらアラッドは目の前の光景に気付かず、張り出されている依頼に目を通す。

(昨日の戦闘をまだ体が覚えてる……下手な討伐依頼は受けない方が良いかもな)

いっそ今日は休日にしようかと考え始めた瞬間、一枚の依頼書が目に入った。
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