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三百五十六話 信じられそうな嘘
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(知能は高くとも、学習能力はあまり高くないのかもしれないな)
既にシャーマンとの戦闘が始まってから、五分ほどが経過。
アラッドには傷一つなく、逆にシャーマンの体には……傷こそないが、多くの血が流れていた。
生物という特徴上、血を流し過ぎると意識が朦朧としてくる。
回復力の超向上というのは脅威の能力だが、血液生産という更に特殊な能力までなければ、いずれ限界が来る。
そうでなくとも、シャーマンの動きはアラッドがこれまで戦ってきた強者たちと比べて、考えがない。
フェイントなどを使うことが殆どなく、今まで千を優に超える戦闘を経験してきたアラッドにとっては、非常に読みやすい。
「っ、その顔を、止めろ!!!」
「? 別に変顔なんてしてないぞ」
アラッドにそのつもりはない。
そのつもりは全くないのだが……表情には、薄っすらと余裕が現れていた。
シャーマンからすれば、その表情は自身が嘗められているのと同じ。
血管が切れそうなほど顔を赤くし、再度攻撃魔法を放つ。
(身体能力もそうだが、魔力量も大したものだな)
動きに精細さが欠けてきてはいるが、まだ身体能力は脅威の一つ。
後方から戦いを見ているリネアたちは、動きを追うのに必死。
自分がもし戦っていれば……と考えると、直ぐに潰されるイメージしか浮かばない。
攻撃魔法に関しても、どれもアラッドの体を傷付ける威力を有しており、実際のところまだ三割ほど残っている。
(もっと戦闘経験が……修羅場を乗り越えた数が多ければ、狂化を使わずるを得なかったかもな)
お山の大将ではないが、今まで他のモンスターとの戦闘に参加してきたが、アラッド程の修羅場を乗り越えてきてはおらず、戦闘技術に関しては稚拙な部分が垣間見える。
その点に関して、ある意味惜しいと思いながらも、ティールは今まで以上に足に力を入れた。
「縮地」
「っ!!!!」
逃げられない。
本能がそう叫んだ結果、シャーマンは多数の岩壁を展開。
結果によっては、アラッドが岩に激突し、自滅したかもしれない。
だが、目の前の光景を可能性の一つとして考えており、自分の前に通常より強力な風槍を展開し、岩壁を突破。
「アッドスラッシュ!!!」
「っ! がはっ……この、私、が」
「いかにも、悪役らしいセリフだな」
多数の岩壁を突破したアラッドの動きに出来ず、アッドスラッシュをまともに食らったシャーマン。
複数の斬撃を一か所に全て食らい、胴体は見事切り裂かれた。
離れた体を瞬時に引っ付けられる程の再生力はなく、ついに息絶えた。
「か、勝ったのか」
「えぇ、そうです! アラッド様の勝利です!!」
リネアも含め、護衛たちはアラッドの勝利に喜びあがる。
従魔のクロも嬉しそうに一声吠えた。
一仕事を終えたアラッドは倒したオークの死体を亜空間に放り込みながら、あることについて考えていた。
「アラッドさん、助けていただき、本当に感謝します!!!」
「「「本当にありがとうございます!!!」」」
「い、いえ。ギルドからの依頼をこなしただけなので……」
そう答えると、アラッドは再び何かを考え始めた。
「……あの、何か問題が残って、いるのですか?」
「えぇ、残ってますよ。というか、ご自身が一番よく解っているかと」
数秒後、リネアや護衛騎士たちはハッとした表情で、その問題を思い出した。
「今回の一件、正直に伝えるべきではないと思ってます。ただ、その日の内に戻らなかったのは事実なので、それらしい話を考えなければど」
自身の考えを冷静に伝えながら、道中で倒した死体の回収に向かう。
(今の時間まで、オークと戦闘を繰り広げていて、捕まってはいなかった……無理があるか。夜まで戦いが続いていれば、夜中に警備をしている兵士が多少なりとも気付く……いや、実際どうなんだ?)
集中して嘘を考えていると、あっという間に死体の回収が終了。
まだ戻る訳にはいかず、良い案が思い付くまでアジトの外に出ず、考え続けた。
既にシャーマンとの戦闘が始まってから、五分ほどが経過。
アラッドには傷一つなく、逆にシャーマンの体には……傷こそないが、多くの血が流れていた。
生物という特徴上、血を流し過ぎると意識が朦朧としてくる。
回復力の超向上というのは脅威の能力だが、血液生産という更に特殊な能力までなければ、いずれ限界が来る。
そうでなくとも、シャーマンの動きはアラッドがこれまで戦ってきた強者たちと比べて、考えがない。
フェイントなどを使うことが殆どなく、今まで千を優に超える戦闘を経験してきたアラッドにとっては、非常に読みやすい。
「っ、その顔を、止めろ!!!」
「? 別に変顔なんてしてないぞ」
アラッドにそのつもりはない。
そのつもりは全くないのだが……表情には、薄っすらと余裕が現れていた。
シャーマンからすれば、その表情は自身が嘗められているのと同じ。
血管が切れそうなほど顔を赤くし、再度攻撃魔法を放つ。
(身体能力もそうだが、魔力量も大したものだな)
動きに精細さが欠けてきてはいるが、まだ身体能力は脅威の一つ。
後方から戦いを見ているリネアたちは、動きを追うのに必死。
自分がもし戦っていれば……と考えると、直ぐに潰されるイメージしか浮かばない。
攻撃魔法に関しても、どれもアラッドの体を傷付ける威力を有しており、実際のところまだ三割ほど残っている。
(もっと戦闘経験が……修羅場を乗り越えた数が多ければ、狂化を使わずるを得なかったかもな)
お山の大将ではないが、今まで他のモンスターとの戦闘に参加してきたが、アラッド程の修羅場を乗り越えてきてはおらず、戦闘技術に関しては稚拙な部分が垣間見える。
その点に関して、ある意味惜しいと思いながらも、ティールは今まで以上に足に力を入れた。
「縮地」
「っ!!!!」
逃げられない。
本能がそう叫んだ結果、シャーマンは多数の岩壁を展開。
結果によっては、アラッドが岩に激突し、自滅したかもしれない。
だが、目の前の光景を可能性の一つとして考えており、自分の前に通常より強力な風槍を展開し、岩壁を突破。
「アッドスラッシュ!!!」
「っ! がはっ……この、私、が」
「いかにも、悪役らしいセリフだな」
多数の岩壁を突破したアラッドの動きに出来ず、アッドスラッシュをまともに食らったシャーマン。
複数の斬撃を一か所に全て食らい、胴体は見事切り裂かれた。
離れた体を瞬時に引っ付けられる程の再生力はなく、ついに息絶えた。
「か、勝ったのか」
「えぇ、そうです! アラッド様の勝利です!!」
リネアも含め、護衛たちはアラッドの勝利に喜びあがる。
従魔のクロも嬉しそうに一声吠えた。
一仕事を終えたアラッドは倒したオークの死体を亜空間に放り込みながら、あることについて考えていた。
「アラッドさん、助けていただき、本当に感謝します!!!」
「「「本当にありがとうございます!!!」」」
「い、いえ。ギルドからの依頼をこなしただけなので……」
そう答えると、アラッドは再び何かを考え始めた。
「……あの、何か問題が残って、いるのですか?」
「えぇ、残ってますよ。というか、ご自身が一番よく解っているかと」
数秒後、リネアや護衛騎士たちはハッとした表情で、その問題を思い出した。
「今回の一件、正直に伝えるべきではないと思ってます。ただ、その日の内に戻らなかったのは事実なので、それらしい話を考えなければど」
自身の考えを冷静に伝えながら、道中で倒した死体の回収に向かう。
(今の時間まで、オークと戦闘を繰り広げていて、捕まってはいなかった……無理があるか。夜まで戦いが続いていれば、夜中に警備をしている兵士が多少なりとも気付く……いや、実際どうなんだ?)
集中して嘘を考えていると、あっという間に死体の回収が終了。
まだ戻る訳にはいかず、良い案が思い付くまでアジトの外に出ず、考え続けた。
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