350 / 1,012
三百五十話 生きてるか否かは関係無い
しおりを挟む
「……騒がしいな」
いつも騒がしいギルド内だが、今日は普段と違う空気が流れている。
直ぐにそれを察知し、できれば普段と違う空気の要因を聞きたい……ところだが、気軽に話しかけられる知り合いがいない。
「アラッドじゃないか。今日も依頼を受けるのか?」
「どうも、エリアスさん。そう思ってたんですけど、この空気は何なんですか」
とりあえず依頼を受けることに変わりはないが、いつもと違う要因が気になって仕方ない。
「噂ではあるが、領主の娘が狩りから帰ってこないらしい」
「りょ、領主の娘が、ですか」
まさかの内容に驚くアラッドだが、妹のシルフィーも幼い頃から何度も狩りを行っている為、特に驚く内容ではない。
(シルフィーやレイ嬢以外にも、勇気と実力がある令嬢ががいるもんだ……でも、狩りから帰ってこないのは、親として不安だろうな)
領主であるコラスタ・ハルークスは、娘であるリネアに野宿は許可しておらず、狩りは日帰りが基本。
「帰ってこないとなると……モンスターに殺された、という可能性が一番大きそうですが」
「いや、その可能性は低いだろう。狩りとはいえ、護衛である騎士と魔法使いが三人付いている」
「なるほど。であれば、決めつけることは出来ませんね」
日帰りで帰れるように距離は調整していることもあり、サイクロプスのような強敵と遭遇する可能性は低い。
(モンスターに殺されてないとなれば……可能性としては、盗賊に襲われた、か? 絶対にないとは言えないが、貴族の令嬢を護衛する騎士や魔法使いが合計三人いて、そこら辺の盗賊に攫われるか?)
話を聞く限り、それはそれであり得ないと判断。
「その戦力的に、盗賊に攫われるというのもあり得なそうですし……何が原因なのですかね」
「正直、見当が付かないな。だが、いずれギルドから依頼が来るだろう」
正確には、領主からギルドを通した依頼。
娘が帰ってこないとなれば、当然領主として……父親として焦る。
(捜索依頼、か……生きているかどうか分からないが、必ず出されるだろうな)
生きているか否か、そんな可能性は親であるコラスタ・ハルークスにとっては関係無い。
何が何でも探し出し、助ける。
いかなる時も冷静でいなければならない領主としては、少々熱くなり過ぎていた。
「……祈るしか、ありませんね」
「あぁ……そうだな」
帰ってこない。
それだけで、もう領主の娘は死んでいるかもしれない。
アラッドたちがそう思うのも無理はない。
そして、冒険者たちがこの件についてあれこれ話すも……誰一人として、自発的にリネアと護衛を探しに行く者はいない。
人の心がない?
そういった話ではなく、冒険者とは基本的に依頼を受けて、始めて動く。
気ままにモンスターを狩る冒険者もいるが、それはそれで自由にリスク管理ができる。
(もし、そういう依頼が出されたのであれば、受けよう)
一先ず領主の娘の件は頭の片隅に置いておき、クエストボードへ足を進める。
「注目!!!!!」
「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」
次の瞬間、一人の受付嬢がギルド内に響き渡る声を上げた。
「領主であるハルークス様からの依頼です!!!!」
ギルド内にいる冒険者達、全員の意識が受付嬢の方に向く。
発表された内容は、娘であるリネアの捜索。
Dランク以下の冒険者は任意。
それ以上のランクの者には、コラスタから幾つかのパーティーに指名依頼が出されてた。
ただ、例外的にDランクであるアラッドにも前金が支払われる指名依頼が出た。
(また同世代から恨みを買いそうだが……そうも言ってられないよな)
コラスタがアラッドに指名依頼を出した理由は、至極単純。
王都とで行われた大会の内容を知っているから。
クロに関しても詳しくは知らないが、便利な足を持っているということだけは解っている。
特に予定がなかったアラッドは、直ぐにクロと共に街に外に出て、捜索へ向かった。
いつも騒がしいギルド内だが、今日は普段と違う空気が流れている。
直ぐにそれを察知し、できれば普段と違う空気の要因を聞きたい……ところだが、気軽に話しかけられる知り合いがいない。
「アラッドじゃないか。今日も依頼を受けるのか?」
「どうも、エリアスさん。そう思ってたんですけど、この空気は何なんですか」
とりあえず依頼を受けることに変わりはないが、いつもと違う要因が気になって仕方ない。
「噂ではあるが、領主の娘が狩りから帰ってこないらしい」
「りょ、領主の娘が、ですか」
まさかの内容に驚くアラッドだが、妹のシルフィーも幼い頃から何度も狩りを行っている為、特に驚く内容ではない。
(シルフィーやレイ嬢以外にも、勇気と実力がある令嬢ががいるもんだ……でも、狩りから帰ってこないのは、親として不安だろうな)
領主であるコラスタ・ハルークスは、娘であるリネアに野宿は許可しておらず、狩りは日帰りが基本。
「帰ってこないとなると……モンスターに殺された、という可能性が一番大きそうですが」
「いや、その可能性は低いだろう。狩りとはいえ、護衛である騎士と魔法使いが三人付いている」
「なるほど。であれば、決めつけることは出来ませんね」
日帰りで帰れるように距離は調整していることもあり、サイクロプスのような強敵と遭遇する可能性は低い。
(モンスターに殺されてないとなれば……可能性としては、盗賊に襲われた、か? 絶対にないとは言えないが、貴族の令嬢を護衛する騎士や魔法使いが合計三人いて、そこら辺の盗賊に攫われるか?)
話を聞く限り、それはそれであり得ないと判断。
「その戦力的に、盗賊に攫われるというのもあり得なそうですし……何が原因なのですかね」
「正直、見当が付かないな。だが、いずれギルドから依頼が来るだろう」
正確には、領主からギルドを通した依頼。
娘が帰ってこないとなれば、当然領主として……父親として焦る。
(捜索依頼、か……生きているかどうか分からないが、必ず出されるだろうな)
生きているか否か、そんな可能性は親であるコラスタ・ハルークスにとっては関係無い。
何が何でも探し出し、助ける。
いかなる時も冷静でいなければならない領主としては、少々熱くなり過ぎていた。
「……祈るしか、ありませんね」
「あぁ……そうだな」
帰ってこない。
それだけで、もう領主の娘は死んでいるかもしれない。
アラッドたちがそう思うのも無理はない。
そして、冒険者たちがこの件についてあれこれ話すも……誰一人として、自発的にリネアと護衛を探しに行く者はいない。
人の心がない?
そういった話ではなく、冒険者とは基本的に依頼を受けて、始めて動く。
気ままにモンスターを狩る冒険者もいるが、それはそれで自由にリスク管理ができる。
(もし、そういう依頼が出されたのであれば、受けよう)
一先ず領主の娘の件は頭の片隅に置いておき、クエストボードへ足を進める。
「注目!!!!!」
「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」
次の瞬間、一人の受付嬢がギルド内に響き渡る声を上げた。
「領主であるハルークス様からの依頼です!!!!」
ギルド内にいる冒険者達、全員の意識が受付嬢の方に向く。
発表された内容は、娘であるリネアの捜索。
Dランク以下の冒険者は任意。
それ以上のランクの者には、コラスタから幾つかのパーティーに指名依頼が出されてた。
ただ、例外的にDランクであるアラッドにも前金が支払われる指名依頼が出た。
(また同世代から恨みを買いそうだが……そうも言ってられないよな)
コラスタがアラッドに指名依頼を出した理由は、至極単純。
王都とで行われた大会の内容を知っているから。
クロに関しても詳しくは知らないが、便利な足を持っているということだけは解っている。
特に予定がなかったアラッドは、直ぐにクロと共に街に外に出て、捜索へ向かった。
222
お気に入りに追加
6,106
あなたにおすすめの小説
言祝ぎの聖女
しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。
『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。
だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。
誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。
恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる