349 / 992
三百四十九話 他者への風評被害
しおりを挟む
ギルのパーティーメンバーだったルーキーたちに何発も正論パンチを浴びせた翌日、そのルーキーたちや、冒険者ギルドから追放されたギルに、背後から襲われることはなかった。
「よう、アラッド。一緒に晩飯食べねぇか」
「……奢りなら良いですよ」
「ったく、しょうがねぇな!」
その日の夜、本日も軽く討伐依頼をこなし、ギルドを出ようとすると……一人の先輩冒険者から夕食を誘われた。
ぶっちゃけな話、面識がない先輩。
ただ、現段階で横の繋がりが限りなく薄い……どころか、無いに等しいため、縦の繋がりぐらいはと思い、奢ってくれるならという条件付きで乗った。
「んで、どうよ」
「何がですか?」
「依頼をこなしてる最中に、あいつらに襲われたりしなかったか?」
「いえ、特にそんなことはありませんでしたよ」
何かを隠している訳ではなく、本当に何もなかった。
仮にギルが逆恨みで襲って来れば、さすがのアラッドも殺している。
元パーティーメンバーのルーキーたちが襲ってきた場合は、腕か脚を一本はバラバラに切断し、燃やし尽くしす。
仏ではないため、そう何度も見逃すことはない。
「そうか。そりゃ良かったな」
「昨日、エリアスさんとレストランから出た後に、文句をぶつけられましたけどね」
「っ!?」
先輩冒険者はまだ口にある料理が料理を吹き出しそうになったが、なんとか堪えて飲み込んだ。
「はぁ~。あいつら、マジか」
「マジですよ。色々正論をぶつけたら黙りましたけど、まだまだ俺に恨みは持ってそうですね」
「あの件でこりてねぇのかよ……悪いな。後輩たちが迷惑かけて」
「先輩が謝ることではないと思いますよ…………冒険者は性格上、相手に嘗められないのが重要ですからね」
同業者であろうがた職業の物であろうが、貴族や商人が相手でも、嘗められてはならない。
勿論その線引きに限度はあるが、そういう気持ちが重要なのは間違いではない。
「それは間違ってないんだけどよ。つか……アラッドは、何であいつらからあんなに遠慮なしに言われて、冷静に対応出来るんだ?」
アラッドを夕食に誘った先輩冒険者も、Cランク冒険者として、ある程度のプライドを持っている。
貴族であれば、自分以上のプライドを持っているというのが正直な感想。
どころか、先輩冒険者は今までの冒険者人生から、そうとしか思えなかった。
なので、アラッドほど特別な存在ではないルーキーにダル絡みされたにも関わらず、冷静に良い意味で大人な対応をする貴族の令息は非常に珍しい。
「俺とあいつらでは、色々と違う。その色々を正確に認識出来ているから。それと……あんまり俺が横暴な態度を取ってると、他の冒険者をやってる令息や令嬢、真面目に仕事に取り組んでいる領主や騎士に迷惑が掛かると思ってるんで」
「…………お前、本当に大人だな」
思わず、目の前で夕食を食べている少年は、善神かと思ってしまった先輩冒険者。
精神年齢に体が追い付いたので、ぶっちゃけまだ子供ではある。
ただ、一度転生したことで、俯瞰の視点は一般的な大人並み。
先輩冒険者がそう思ってしまうのは、当然といえば当然だった。
「そんなことありませんよ。俺はギルドの一件……あの状況を面白いなと思ってましたから」
「うん、それは俺らも同じ気持ちだったよ」
「そう言ってもらえると気が楽になります……ギルの目標、夢を奪ったことは、少々やり過ぎたかと思ってますけど」
元が一般庶民なので、心苦しい部分はあった。
しかし、その点に関してはエリアスと同じく、先輩冒険者はその後悔を否定した。
「あれで良いんだよ。正直、あそこまで馬鹿だと、いつか何処かで身を亡ぼすのは確実だったしな。遅かれ早かれの話だ」
自分の決断は間違ってないと肯定され、またほんの少し心が軽くなった。
先輩冒険者の奢りだったという事もあり、更にたらふく食って帰った……その日の翌日、冒険者ギルドに到着したアラッドの耳に、中々大きな話題が入った。
「よう、アラッド。一緒に晩飯食べねぇか」
「……奢りなら良いですよ」
「ったく、しょうがねぇな!」
その日の夜、本日も軽く討伐依頼をこなし、ギルドを出ようとすると……一人の先輩冒険者から夕食を誘われた。
ぶっちゃけな話、面識がない先輩。
ただ、現段階で横の繋がりが限りなく薄い……どころか、無いに等しいため、縦の繋がりぐらいはと思い、奢ってくれるならという条件付きで乗った。
「んで、どうよ」
「何がですか?」
「依頼をこなしてる最中に、あいつらに襲われたりしなかったか?」
「いえ、特にそんなことはありませんでしたよ」
何かを隠している訳ではなく、本当に何もなかった。
仮にギルが逆恨みで襲って来れば、さすがのアラッドも殺している。
元パーティーメンバーのルーキーたちが襲ってきた場合は、腕か脚を一本はバラバラに切断し、燃やし尽くしす。
仏ではないため、そう何度も見逃すことはない。
「そうか。そりゃ良かったな」
「昨日、エリアスさんとレストランから出た後に、文句をぶつけられましたけどね」
「っ!?」
先輩冒険者はまだ口にある料理が料理を吹き出しそうになったが、なんとか堪えて飲み込んだ。
「はぁ~。あいつら、マジか」
「マジですよ。色々正論をぶつけたら黙りましたけど、まだまだ俺に恨みは持ってそうですね」
「あの件でこりてねぇのかよ……悪いな。後輩たちが迷惑かけて」
「先輩が謝ることではないと思いますよ…………冒険者は性格上、相手に嘗められないのが重要ですからね」
同業者であろうがた職業の物であろうが、貴族や商人が相手でも、嘗められてはならない。
勿論その線引きに限度はあるが、そういう気持ちが重要なのは間違いではない。
「それは間違ってないんだけどよ。つか……アラッドは、何であいつらからあんなに遠慮なしに言われて、冷静に対応出来るんだ?」
アラッドを夕食に誘った先輩冒険者も、Cランク冒険者として、ある程度のプライドを持っている。
貴族であれば、自分以上のプライドを持っているというのが正直な感想。
どころか、先輩冒険者は今までの冒険者人生から、そうとしか思えなかった。
なので、アラッドほど特別な存在ではないルーキーにダル絡みされたにも関わらず、冷静に良い意味で大人な対応をする貴族の令息は非常に珍しい。
「俺とあいつらでは、色々と違う。その色々を正確に認識出来ているから。それと……あんまり俺が横暴な態度を取ってると、他の冒険者をやってる令息や令嬢、真面目に仕事に取り組んでいる領主や騎士に迷惑が掛かると思ってるんで」
「…………お前、本当に大人だな」
思わず、目の前で夕食を食べている少年は、善神かと思ってしまった先輩冒険者。
精神年齢に体が追い付いたので、ぶっちゃけまだ子供ではある。
ただ、一度転生したことで、俯瞰の視点は一般的な大人並み。
先輩冒険者がそう思ってしまうのは、当然といえば当然だった。
「そんなことありませんよ。俺はギルドの一件……あの状況を面白いなと思ってましたから」
「うん、それは俺らも同じ気持ちだったよ」
「そう言ってもらえると気が楽になります……ギルの目標、夢を奪ったことは、少々やり過ぎたかと思ってますけど」
元が一般庶民なので、心苦しい部分はあった。
しかし、その点に関してはエリアスと同じく、先輩冒険者はその後悔を否定した。
「あれで良いんだよ。正直、あそこまで馬鹿だと、いつか何処かで身を亡ぼすのは確実だったしな。遅かれ早かれの話だ」
自分の決断は間違ってないと肯定され、またほんの少し心が軽くなった。
先輩冒険者の奢りだったという事もあり、更にたらふく食って帰った……その日の翌日、冒険者ギルドに到着したアラッドの耳に、中々大きな話題が入った。
194
お気に入りに追加
6,090
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる