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三百四十八話 一応まだ未来はある

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何発も正論パンチをぶつけられても、中々表情から怒りが消えないギルの元パーティーメンバーたち。

しかし、アラッドはまだまだ正論パンチを放てる。

いっそ……殺してくれ。
と思える程の正論パンチを何発も叩きこんだ結果、さすがの怒りが爆発寸前だったルーキーたちも、意気消沈気味となった。

「解かった? お前らがどれだけ感情を爆発させても、お前たちの考えが間違ってるっていう事実は変わらないんだ。これ以上今回の件について俺を恨み妬み、怒ってる暇があるなら、もっとこれからの事を考えろ」

目の前のルーキーたちもギルと同じような考えを持ていたが、実際に口に出してはいない。

その点に関して、深く言及するつもりはなく、彼ら彼女たちの未来を潰すつもりはなかた。

「幸いにも、お前らは今回の一件で色々と学べた。んで、冒険者ギルドから追放されずに済んだ。それなら、もっとこれから待ってる未来について考えて動け。俺に復讐とか抗議と、意味無いことを考えるな」

それなりに残酷な事を言ってる自覚はある。
だが、彼ら彼女たちにとって、これ以上今回の一件に関して……ギルのこちに関して考えることは、非常に無駄であることに変わりはない。

「……アラッドの言う通りだ。今回の一件で、ギルドがマークしている人物はギルのみ。お前たちは元パーティーメンバーではあるが、これからの行動次第ではギルドからの印象も変わる」

自分たちの仲間で……リーダーだった人物を、直ぐに忘れて前を向けと言われても、そう簡単に整理できない。
寧ろ、そんな残酷なことを自分たちに言うアラッドやエリアスに怒りが湧く。

湧いてきたが……エリアスの次の一言で、ルーキーたちは再び意気消沈状態となった。

「先に言っておくが、君たちがアラッドに何かしようものなら、殺されても文句は言えないからな」

「「「っ!!!???」」」

ルーキーたちは先輩の目に嘘はないと悟り、大きく体が震え……あと一歩で尿を漏らす程怯えた。

「……まっ、エリアスさんの言葉は間違ってませんけど。俺にはそんなつもりないが、腕の一本や二本は折るかもな。後……ギルって奴が逆恨みで何かしてくるなら、容赦なく殺すから」

冒険者ギルドから追放されたとしても、友人であることに変わりはない。

そんな友を、目の前の男は殺すと宣言した。
口にした状況を考えれば、殺されても文句は言えないが……友人という立場を考えれば、彼ら彼女たちの怒りも仕方ない。

ただ、そろそろアラッドではなく、従魔であるクロの我慢が限界に達してきていた。

「落ち着け、クロ。関係がない人達までビビってしまうだろ」

「…………」

アラッドに頭を撫でられ、少しは落ち着きを取りも出すが……クロ的には本当に手は出さずとも、恐ろしい幻影を感じてしまう程の殺気をぶつけたかった。

「こいつは賢いからな。人の言葉をある程度理解出来るんだよ。実力も、お前たちが殺されたことに気付けないほど、速く鮮やかに殺せる」

本日、二度目になるゾッとする体験。
完全に自業自得ではあるが、もしもの状況をイメージしてしまったルーキーたちは、周囲にバレない程度にちびってしまった。

「とりあえず、もう俺に関わるな。今回の一件で、そういった感情を持ちながら俺に関わったところで、不利益にしかならないって解っただろ」

そう告げ、エリアスと共にルーキーたちの間を通り過ぎる。

「っ!!! …………クソっ!!!!」

まだまだ吐き足りないルーキーたちだが、先輩からも自分たちの怒りを完全否定されては、己の中の考えや芯も
揺らぐというもの。

(俺たちとあいつ……何がそんなに違うんだよ!!!!)

地面に何度も拳をぶつけ、怒りを喚き散らしたい。
そんな衝動に駆られ……そうになったルーキーたちだが、自分たちのパンツが少々濡れていることに気付き、パーティーメンバーにも悟られないように、自然を装いながら解散した。
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