スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
346 / 1,043

三百三十六話 他者の責任ではない

しおりを挟む
「本当に済まなかった!!!」

現在、エリアスとアラッドはレストランの個室で対面していた。

「エリアスさんは何も悪くないんで、頭を上げてください」

アラッドより先に狩りへ向かったエリアスは、途中で出会った同業者たちから、今朝起こった一件について聞いた。

何故、若いルーキーがアラッドに決闘を挑んでしまったのか。
挑発の内容はさておき、同業者たちの考えに対し……エリアスも、自分のせいだ思ってしまった。

「しかし、私が何かしらの対応を取っていれば!」

今回アラッドの絡み、結果的に冒険者ギルドから永久追放となった少年が、自分に好意を抱いている自覚はある。

異性からそういった想いを向けられることは、エリアスにとって珍しいことじゃない。
だから、少年に対して「今は誰かとそういった関係を持つつもりはない。持つとしても、君じゃない」なんてことを言おうとしなかった。

「対応を取っていても、あいつの俺に対する態度は変わっていなかったと思いますよ。社交界を経験してきた令息ではない……あまりそういうのに興味がなかった俺が言うことじゃないですけどね」

自身の本音を隠し、仮面を付けるなんて器用な真似はできない。

時期的には自分より後輩のくせに、いきなり上のランクからスタート。
何も苦労することなく日々を過ごし、挙句の果てには自分が好意を抱いている先輩とデートをしていた。

エリアスが何かしらの対応を取っていたとしても……いや、逆に取っていれば、より少年の感情は爆発していたかもしれない。

「今はもう違いますけど、あいつは冒険者でした。という事は、親元を離れて自立してるんです。そうなれば、どんな行動を起こそうとも、基本的な原因は全て自分なんですから」

過去の教育が根強く心の底に残っている。
誰かに洗脳状態にされ、思考や人格が変わってしまった。

これらの特例はあるが、その特例などは少年に当てはまらない。
誰かに唆されたわけではなく、自分の意志でアラッドに喧嘩を売り、竜の尾を踏んだ。

完全に自業自得と言える。

「……君は、私よりも大人だな」

「別にそんなことはないですよ……一応、貴族の子供なんで、見る視点がちょっとズレてるんですよ」

「そういった視点で物事を考えられるからこそ、大人なんだよ」

「……どうも」

丁度良いタイミングで頼んだ料理が運ばれ、二人は一旦夕食タイムに移る。

「エリアスさんは、俺を酷いと思いますか」

なんとなく、アラッドは尋ねた。
自分が決闘の条件として提示し、結果実行された内容について、他人がどう思うのか……知りたくなった。

「いや、そんな事は思ってないよ。君の立場を考えれば、腕や足を斬り落とし、くっつけられない様に燃やしても文句は言われない」

エリアスの言葉通り、アラッドは冒険者としては異例と言える存在。

少年が挑んできた勝負内容も、決闘なのでそういった行動をとっても、特にルール違反ではない。

「そういうのを考えれば、君は優しいよ」

「ありがとうございます」

「……今の言葉は、決して君を励ますためのものじゃない。事実だよ」

冒険者として成り上がることを目標を持ち、冒険者になり始めてから数年……その職を剥奪され、永久追放という流れは、そこだけ聞くと同情されるかもしれない。

しかし、エリアスも冷静に物事を判断できる頭を持っている。

スキルを馬鹿にされた、家族を馬鹿にされた……そんな事、自分より下の人間に言われたのだから、聞き逃せば良いじゃないか。
そんな愚かな考えは浮かばない、浮かんでも口に出せない。

「あいつの立場を考えたとしても……そもそも、君に馬鹿な絡み方をするのがおかしい」

顔見知りの後輩。
エリアスにとって、少年の印象はその程度だったが、今ではただただ考える頭を持たない、愚かな子供。
本人に伝えるつもりはないが、その印象はこれからも変わることはない。
しおりを挟む
感想 466

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

処理中です...