345 / 1,058
三百三十五話 それはそれで痛い
しおりを挟む
「ワゥ~~」
「なんだ、心配してくれてるのか? ありがとな」
柔らかな毛並みを押し当て、主人を心配するクロ。
何故、主人の表情に怒りが現れていたのか。
その件に関して、クロはアラッドから言われずとも理解していた。
若いルーキーの声は大きく、当たり前の様にギルドの外まで聞こえていた。
クロは人の言葉が解かる為、若いルーキーがどんな内容を口に出してしまったのか……その結果、アラッドがどのような反応を取るかまで直ぐに把握。
アラッドは基本的に優しい。
しかし、逆鱗を踏み抜かれても優しさを失わずにいられるほど、仏ではない。
「個人的には、どの世代とも仲良くしたんだけどな」
自分は、あまり同世代から好かれる様な存在ではない。
それは重々承知しているアラッド。
それでも同じ冒険者として、同性代とはある程度仲良くしたいという想いはあった。
喧嘩した後に仲良くなるというパターンがあるかもしれないが、今回は若いルーキーがやり過ぎてしまった。
クロという高い戦闘力を持つ従魔のお陰で強くなれた。
それぐらいの文句、挑発では特に怒らない。
それは、アラッドがそう思われても仕方ないと理解しているから。
若いルーキーはアラッドの寛大さに気付くことはなく、挑発などの常套句ではありつつ、仕方ないと納得、理解出来ない暴言を吐いてしまった。
(思いっきり殴って発散したいな)
溜まったストレスは、体を動かして発散するのが一番。
「おらっ!!!!」
「ブヒャっ!!!???」
ひとまず遭遇したオークを、強化系スキルなどを使わず、素の状態でぶん殴った。
Dランクモンスターで、一般的な個体と比べればレベルは高いが、怒りが籠ったストレスパンチを相殺、回避することは出来ず、呆気なく骨がバキバキに……内臓がぐちゃぐちゃに砕かれた。
「ふんっ!!!」
「っ!!??」
クロに一切ビビることなく突進してきたダッシュボアに、ジャストタイミングで側面から蹴りを食らわせ、華麗に蹴り飛ばす。
衝撃が脳までしっかり伝わり、そのままノックアウト。
「でりゃっ!!!!」
「ビャっ!!??」
大きな角を持つ鹿、アッパーディールは全力ダッシュからのかち上げで仕留めに掛かるが、アラッドはタイミングを見計らって軽くジャンプ。
そして角が振り上げられるのと同時に、角を二本とも掴み、ぐるっと一回転。
勢いをつけ、アッパーディールを顔面から地面に叩きつけた。
当然、こちらも脳がやられ、即死亡。
遭遇するモンスター、殆どを一撃で仕留め続ける。
勿論、倒し終われば解体。
いつも通り、夕方ごろになるまで狩りは続いた。
糸を耳から入れられ、脳を裂かれるという倒され方も嫌だろうが、ストレスを思いっきりぶつけられるのも、モンスターにとってはたまったものではない。
「買取、お願いします」
「か、畏まりました!!!!」
今朝の一件で、怒らせてはいけないという認識を持たれた人物の期間。
加えて、カウンターには大量の素材。
おそらく……おそらくではあるが、怒りに身を任せてモンスターを倒した。
職員たちは体をブルっと震わせながらも、いつも通りの業務を続ける。
「あれって、アッパーディールの肉に角だよな」
「Cランクを一人と一体で……いや、アラッドだけで倒したのかもな」
「全然あり得そうだな」
「あんな怪物に喧嘩売ったてのを考えると、あいつ……ある意味すげぇよな」
「ある意味凄い、ねぇ……私たちにとっては笑い話だけど、あのルーキーにとっちゃ、笑い話じゃ済まないでしょうね」
「そりゃそうだろ。武勇伝にすらならねぇぜ」
今朝の件に関して話す者が多い中、アラッドに対する批判はない。
やり過ぎ?
そう思う者がいない訳ではないが、それはごく一部のルーキー。
同じルーキーでも、ゴブリンがドラゴンに喧嘩を売ってはいけないと自覚した者はそれなりにいた。
(……今日はやけ食いだな)
そう思いながらギルドを出た瞬間、見知った人物と遭遇した。
「なんだ、心配してくれてるのか? ありがとな」
柔らかな毛並みを押し当て、主人を心配するクロ。
何故、主人の表情に怒りが現れていたのか。
その件に関して、クロはアラッドから言われずとも理解していた。
若いルーキーの声は大きく、当たり前の様にギルドの外まで聞こえていた。
クロは人の言葉が解かる為、若いルーキーがどんな内容を口に出してしまったのか……その結果、アラッドがどのような反応を取るかまで直ぐに把握。
アラッドは基本的に優しい。
しかし、逆鱗を踏み抜かれても優しさを失わずにいられるほど、仏ではない。
「個人的には、どの世代とも仲良くしたんだけどな」
自分は、あまり同世代から好かれる様な存在ではない。
それは重々承知しているアラッド。
それでも同じ冒険者として、同性代とはある程度仲良くしたいという想いはあった。
喧嘩した後に仲良くなるというパターンがあるかもしれないが、今回は若いルーキーがやり過ぎてしまった。
クロという高い戦闘力を持つ従魔のお陰で強くなれた。
それぐらいの文句、挑発では特に怒らない。
それは、アラッドがそう思われても仕方ないと理解しているから。
若いルーキーはアラッドの寛大さに気付くことはなく、挑発などの常套句ではありつつ、仕方ないと納得、理解出来ない暴言を吐いてしまった。
(思いっきり殴って発散したいな)
溜まったストレスは、体を動かして発散するのが一番。
「おらっ!!!!」
「ブヒャっ!!!???」
ひとまず遭遇したオークを、強化系スキルなどを使わず、素の状態でぶん殴った。
Dランクモンスターで、一般的な個体と比べればレベルは高いが、怒りが籠ったストレスパンチを相殺、回避することは出来ず、呆気なく骨がバキバキに……内臓がぐちゃぐちゃに砕かれた。
「ふんっ!!!」
「っ!!??」
クロに一切ビビることなく突進してきたダッシュボアに、ジャストタイミングで側面から蹴りを食らわせ、華麗に蹴り飛ばす。
衝撃が脳までしっかり伝わり、そのままノックアウト。
「でりゃっ!!!!」
「ビャっ!!??」
大きな角を持つ鹿、アッパーディールは全力ダッシュからのかち上げで仕留めに掛かるが、アラッドはタイミングを見計らって軽くジャンプ。
そして角が振り上げられるのと同時に、角を二本とも掴み、ぐるっと一回転。
勢いをつけ、アッパーディールを顔面から地面に叩きつけた。
当然、こちらも脳がやられ、即死亡。
遭遇するモンスター、殆どを一撃で仕留め続ける。
勿論、倒し終われば解体。
いつも通り、夕方ごろになるまで狩りは続いた。
糸を耳から入れられ、脳を裂かれるという倒され方も嫌だろうが、ストレスを思いっきりぶつけられるのも、モンスターにとってはたまったものではない。
「買取、お願いします」
「か、畏まりました!!!!」
今朝の一件で、怒らせてはいけないという認識を持たれた人物の期間。
加えて、カウンターには大量の素材。
おそらく……おそらくではあるが、怒りに身を任せてモンスターを倒した。
職員たちは体をブルっと震わせながらも、いつも通りの業務を続ける。
「あれって、アッパーディールの肉に角だよな」
「Cランクを一人と一体で……いや、アラッドだけで倒したのかもな」
「全然あり得そうだな」
「あんな怪物に喧嘩売ったてのを考えると、あいつ……ある意味すげぇよな」
「ある意味凄い、ねぇ……私たちにとっては笑い話だけど、あのルーキーにとっちゃ、笑い話じゃ済まないでしょうね」
「そりゃそうだろ。武勇伝にすらならねぇぜ」
今朝の件に関して話す者が多い中、アラッドに対する批判はない。
やり過ぎ?
そう思う者がいない訳ではないが、それはごく一部のルーキー。
同じルーキーでも、ゴブリンがドラゴンに喧嘩を売ってはいけないと自覚した者はそれなりにいた。
(……今日はやけ食いだな)
そう思いながらギルドを出た瞬間、見知った人物と遭遇した。
239
お気に入りに追加
6,126
あなたにおすすめの小説


追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる