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三百三十四話 それぞれの反応
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「こいつは返すよ」
奪ったロングソードを返し、少年から離れる。
「それでは、こいつの除籍と再登録の不可をお願いします」
「はい!!!」
決闘の光景をしっかりと見ていた受付嬢は、駆け足でカウンター内に入り、書類の作成を始める。
「ほら、これから除籍を行うんだから、お前が持ってるギルドカードは、ちゃんとギルドに返せよ」
「あっ……まっ」
「待たないよ。じゃぁな」
依頼を受ける気分が失せたアラッドは、宿に戻る……ことはなく、とりあえず街に外に出た。
(な、何か面倒な輩に絡まれたのか?)
門兵は普段のアラッドを知っている為、明確に怒りが表情に現れていることに驚いた。
容姿は少々強面だが、それでも普段からイライラしていることはなく、寧ろ優しさを感じる。
今回の一件で、勿論人に当たるような行動はしない。
それでも……表情に全く出さないというのは不可能だった。
(はぁ~~~~……やっちまった。いや、妥当か? 仮に妥当だとしても……イメージダウンには繋がるか)
結果的に、今回アラッドが決闘に勝った時の条件として、若いルーキーの冒険者という身分の剝奪と、追放。
それらを提示し、若いルーキーは飲んだ。
一般的には決闘で賭ける内容としては、殆ど例がない内容。
(横の繋がり、縦との繋がりは重用だけど……それに頼って生活する訳じゃないし、これ以上考えても仕方ないか)
今回の結果で、アラッドに瞬殺されたルーキーは勿論、そのルーキーのパーティーメンバーたちにとって、悲しい結末となった。
関係無いルーキーたちは、今回の一件で絶対に怒らせてはいけない奴という認識を持つことになった。
そんなルーキーたちに対し……ベテランたちは、良くあそこまで若いルーキーからの口撃に耐えた、大人な対応をしたと評価していた。
一般的な冒険者であれば、プライド的な問題で、アラッド程我慢する……もしくは受け流すことが出来ない。
それらの理由から、今回の出来事で特にアラッドを貴族的な意味で恐ろしい奴だとは思っていない。
そして最後にギルド職員たちは……若いルーキーを除籍、永久追放する件に関して、全く抵抗がなかった。
第一に、先日アラッドに上から目線で絡んだ時に、心底ひやひやさせられた。
基本的に冒険者同士に争いに関して、ギルド職員は介入出来ない。
とはいえ、アラッドは侯爵家の三男であり、騎士の爵位を持つ貴族。
あの時点で、ギルド職員たちは後から他の冒険者たちに非難されても、若いルーキーの口を閉じさせるか、本気で迷っていた。
その件に関してはアラッドが大人な対応を取ったため、事なきを得た。
ただ、先程に二度目の衝突。
アラッドの細かい事情については知らないギルド職員達でも、本能的に察した。
若いルーキーは、アラッド・パーシバルの踏んではいけない部分を、思いっきり踏んでしまったと。
もうこの時点で、ギルドとしては若いルーキーに一言も喋らないでほしかった。
最悪の場合、ゴルドスのギルドが、アラッドと……パーシブル侯爵家と敵対するかもしれない。
そう思うと……背筋が凍るどころの話ではない。
今後の未来を考えた時、絶対にアラッドが若いルーキーに提示した条件を実行すべき!!!
結果として若いルーキーが瞬殺されたため、ギルドは直ぐにその準備に取り掛かった。
贔屓だ!!! と思われるかもしれない。
そして、ある意味贔屓ではあるが、それでも若いルーキーがやらかしてしまった罪を考えれば、腕の一歩や二本を斬り落とされていてもおかしくない。
結果として職を失う事にはなったが、戦って行きたければ、傭兵として生きていく道もある。
冒険者の資格を剥奪、追放とはいっても、他国に行けば一応問題はない。
そういった苦労はすれど、生きていける道は残している。
ギルド職員たちはアラッドの優しさに感心半分、本当にこの程度の罰で良いのか不安半分だった。
奪ったロングソードを返し、少年から離れる。
「それでは、こいつの除籍と再登録の不可をお願いします」
「はい!!!」
決闘の光景をしっかりと見ていた受付嬢は、駆け足でカウンター内に入り、書類の作成を始める。
「ほら、これから除籍を行うんだから、お前が持ってるギルドカードは、ちゃんとギルドに返せよ」
「あっ……まっ」
「待たないよ。じゃぁな」
依頼を受ける気分が失せたアラッドは、宿に戻る……ことはなく、とりあえず街に外に出た。
(な、何か面倒な輩に絡まれたのか?)
門兵は普段のアラッドを知っている為、明確に怒りが表情に現れていることに驚いた。
容姿は少々強面だが、それでも普段からイライラしていることはなく、寧ろ優しさを感じる。
今回の一件で、勿論人に当たるような行動はしない。
それでも……表情に全く出さないというのは不可能だった。
(はぁ~~~~……やっちまった。いや、妥当か? 仮に妥当だとしても……イメージダウンには繋がるか)
結果的に、今回アラッドが決闘に勝った時の条件として、若いルーキーの冒険者という身分の剝奪と、追放。
それらを提示し、若いルーキーは飲んだ。
一般的には決闘で賭ける内容としては、殆ど例がない内容。
(横の繋がり、縦との繋がりは重用だけど……それに頼って生活する訳じゃないし、これ以上考えても仕方ないか)
今回の結果で、アラッドに瞬殺されたルーキーは勿論、そのルーキーのパーティーメンバーたちにとって、悲しい結末となった。
関係無いルーキーたちは、今回の一件で絶対に怒らせてはいけない奴という認識を持つことになった。
そんなルーキーたちに対し……ベテランたちは、良くあそこまで若いルーキーからの口撃に耐えた、大人な対応をしたと評価していた。
一般的な冒険者であれば、プライド的な問題で、アラッド程我慢する……もしくは受け流すことが出来ない。
それらの理由から、今回の出来事で特にアラッドを貴族的な意味で恐ろしい奴だとは思っていない。
そして最後にギルド職員たちは……若いルーキーを除籍、永久追放する件に関して、全く抵抗がなかった。
第一に、先日アラッドに上から目線で絡んだ時に、心底ひやひやさせられた。
基本的に冒険者同士に争いに関して、ギルド職員は介入出来ない。
とはいえ、アラッドは侯爵家の三男であり、騎士の爵位を持つ貴族。
あの時点で、ギルド職員たちは後から他の冒険者たちに非難されても、若いルーキーの口を閉じさせるか、本気で迷っていた。
その件に関してはアラッドが大人な対応を取ったため、事なきを得た。
ただ、先程に二度目の衝突。
アラッドの細かい事情については知らないギルド職員達でも、本能的に察した。
若いルーキーは、アラッド・パーシバルの踏んではいけない部分を、思いっきり踏んでしまったと。
もうこの時点で、ギルドとしては若いルーキーに一言も喋らないでほしかった。
最悪の場合、ゴルドスのギルドが、アラッドと……パーシブル侯爵家と敵対するかもしれない。
そう思うと……背筋が凍るどころの話ではない。
今後の未来を考えた時、絶対にアラッドが若いルーキーに提示した条件を実行すべき!!!
結果として若いルーキーが瞬殺されたため、ギルドは直ぐにその準備に取り掛かった。
贔屓だ!!! と思われるかもしれない。
そして、ある意味贔屓ではあるが、それでも若いルーキーがやらかしてしまった罪を考えれば、腕の一歩や二本を斬り落とされていてもおかしくない。
結果として職を失う事にはなったが、戦って行きたければ、傭兵として生きていく道もある。
冒険者の資格を剥奪、追放とはいっても、他国に行けば一応問題はない。
そういった苦労はすれど、生きていける道は残している。
ギルド職員たちはアラッドの優しさに感心半分、本当にこの程度の罰で良いのか不安半分だった。
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