スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
328 / 1,058

三百二十八話 本当に申し訳ない

しおりを挟む
騎士の爵位を授与される当日、アラッドは国から派遣された馬車に乗り込み、王城へと向かっていた。

(軽くやり取りをして、それで終わり……緊張なんてしてる暇ないよな)

なんて思いつつも、既に緊張感を持っているアラッド。
国王陛下とは面識があるため、当初よりも緊張感は薄まっている。

特別なキャバリオンを用意したこともあり、それなりに親交がある存在……と、言えなくもない。

国王も、アラッドが変に緊張することなく、ささっと授与式を終わらせようと考えていた。

「アラッド様、到着いたしました」

「はい」

到着を伝えられ、場所から降りる。
そして待機していた騎士に案内され、授与式が行われる場へやって来た。

緊張なんてしている暇はない。
そう考えていたアラッドだが、その考えは部屋に入った途端、あっさりと打ち消される。

最奥の椅子に国王陛下が座っており、両隣りにはお偉いさんたちが立っている。
列の中には、先日のパーティーで声を掛けてきた騎士たちもいた。

(何も知らない子供がこの場に来れば、ちびって泣きそうだな)

バカなことを考えながらなんとか心を落ち着かせ、予めアレクから教えられた位置まで歩を進め、膝を付く。

「アラッド・パーシバルよ。先日の試合、見事であった」

まずは先日の試合について、お褒めの言葉を貰う。

「はっ! 陛下に喜んでいただき、光栄です」

それらしい言葉を返し、このやり取りが何度か続き、本題に入る。

「これから、貴殿に騎士の爵位を授与する……と言いたいところなのだが」

「?」

国王の言葉に、アラッドは思わず首を傾げそうになった。

「アラッドよ、本当に申し訳ないと思っている」

「っ!!!???」

突然国王に謝られ、ギョッとした顔になるアラッド。

両隣りに並んでいるお偉いさんたちは、顔を直接見ずとも、どんな表情をしているのか容易に想像できる。

(えっ、いったい何なんだ!? 何故、陛下が俺に頭を下げてるんだ!!??)

国王に頭を下げられるような迷惑を掛けられていないので、この現状に対して困惑しかない。

とりあえず、軽く挙手をして宰相の許しを得て、自ら発言をする。

「その、いったい何があったのでしょうか」

ひとまず、国王が自分に頭を下げた原因を知りたい。

本日の主役の言葉に、国王はややテンションが落ちた状態で、アラッドに頼み事をした。

(あぁ~~~~~~~…………うん、そうなったか)

国王の言葉を聞き、何故謝罪をしたのか納得。
簡単に言うと、アラッドが騎士の爵位を授与されることに対し、不満を持っている新人騎士たちの相手をして欲しい。
そんな内容だった。

話を聞き、アラッドはそうなるかもしれないと、フローレンスとの試合で狂化を使用した時から、ある程度は予想出来ていた。
なので、国王から謝罪の理由を聞いても、特に怒りの感情が湧くことはなかった。

「かしこまりました。その方たちの申し出、受けて立ちます」

「うむ、すまないな。報酬として、白金貨十枚ほどを用意しておく」

「っ!!!???」

もう一度……もう一度、目玉が飛びでそうなほど、驚きという感情が顔に現れたアラッド。

白金貨十枚。
アラッドにとって、色々と儲けていることもあり、正直ちびってしまう程の大金ではない。
だが、騎士たち……騎士になって数年のひよっこを倒して、白金貨十枚という金額は、あまりにも謝礼金額として高い。

心の底から高過ぎると思うアラッドだが、折角の国王からのご厚意。
無下にする訳にはいかない。

国王としては、アラッドの財力を知っているからこその額であり、そこには先日行われたフローレンス・カルロストと行った試合に対しての感謝も含まれている。

あの戦いは国王も生で見ており、久しぶりに闘争心に火が付いた。
そんなアラッドに、こんな事を頼むなど……本当に申し訳ないと思っており、思いっきり表情に現れている。

「では、訓練場に移ろう」
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

処理中です...