スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
326 / 1,044

三百二十六話 愛を語るのであれば

しおりを挟む
途中からフローレンスが絡んできたことで、パーティーが終わるまで、アラッドの元には誰も寄り付くことはなかった。

レイたちでさえも、邪魔するのは悪いと思い、二人の話に加わるのを遠慮。
そろそろ離してやってくれませんか、とも言えなかった。

(なんか、変に気に入られたのかもしれないな)

アラッドとしては騎士の爵位を得るため……少々気に入らないという怒りをぶつけた。
それはフローレンスも解っている。

自分の思いが伝わっているのを確信していたが、そんな相手が自分にニコニコと近寄ってきて、長々と話そうとすれば、困惑するのも無理はない。

ただ……アラッドとしても、一度ぐらいはフローレンス・カルロストと一対一で話すのも悪くないと思えた。

どうせ今後、目の前の女王と話す機会などない。
であれば、今日という夜ぐらいは、互いの考えや意見を交えるのもあり。

そう思い、パーティーが終わるまでの彼女の話し相手を続けた。

「最後に、一つ言わせてもらいます」

パーティーも終了し、各々好きなように解散するタイミングで、アラッドは真剣な表情で告げた。

「愛だのなんだのを語るのであれば、それを持っていても環境に抗えない者たちを助けるべきだ」

「……」

最後の最後に予想していなかった言葉を告げられ、完全に面食らった状態のフローレンス。

「人によっては偽善と思われるかもしれないが、そういう者たちを助けてこそ、真の意味で愛について語れると個人的に思っている。では、機会があれば」

言いたい事を伝え終り、レイたちの元へ戻るアラッド。

他に言いたい事がまだあるが、一番伝えたかった内容を伝えられ、満足げな表情で去っていた。

「彼は、本当に十五歳なのでしょうか?」

アラッドが最後に伝えた内容は……まだ周囲に残っていた学生たちから見て、さすがに少々生意気では!? と思ってしまうもの。

しかし、残っていた騎士とフローレンスは、彼が行っている善行を耳にしていた。

(…………そう、ですね。言葉だけでは、お腹は膨れませんね)

最後の最後で、何故アラッドが自分に対し、気に入らないという眼を向けていたのか、深く納得した。

「またお話ししたいですね」

多少態度が緩和したと思えなくもないが、依然変わらずアラッドは自分に対し、そこまで好意的ではない。

そんな相手、普通であれば「もう関わりたくない!!」と思うであろうが、女王は機会があれば再度、自分を倒した青年と話したいと思った。

「アラッド、いつ学園を卒業するんだ?」

「おそらくだが、十日以内……早ければ、五日以内には卒業出来る」

個人戦のトーナメントに出場し、パロスト学園に優勝を持って帰る。
その約束を果たし終えたため、アラッドは学園を特例として速攻で卒業……更に、国から騎士の爵位を授与される。

「たった数か月で卒業……おそらく、今後も起こりえない内容だね」

ベルの言葉に、リオたちはその通りだと納得。

しかし、強者でも成し遂げられない偉業を達成したであろう本人は、もう一度その偉業が行われると思った。

その偉業達成するかもしれない人物は……弟であるアッシュ。

(あいつなら、俺と同じく高等部の一年で特例として卒業できそうな結果を叩きだしそうだけどな)

今大会ではシルフィーが一年生ながらに、個人戦のトーナメントでベストフォーという結果を叩きだした。
だが、アッシュは双子であるシルフィーのサポートに回り、大会には不参加。

参加を強制することは出来ないが……その実力はフールやアラッドたち家族、加えて担任の教師なども認めている。

可能性としては十分にあり得るのだが、本人の目的は錬金術の研究、技術向上。
それが目的であるため、偉業が再度達成される可能性を頭から消したアラッド。

弟ならば、簡単に自分の意志を曲げないだろうと思っていると、男子寮の自室に戻る途中……偶然、本当に偶然ドラングに出会ってしまった。
しおりを挟む
感想 466

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...