325 / 1,032
三百二十五話 依頼であれば受けますよ
しおりを挟む
(クソ、頼むから俺を放っておいてくれよ!!!)
なんて実際には口に出せるわけがなく、アラッドは多くの現役騎士や、その関係者に囲まれていた。
声を掛けられる内容は……殆ど、騎士団に入らないか? というもの。
アラッドにその気がないというのは、割と広まっている。
ただ……本人にその気がなかったとしても、声を掛けずにはいられない。
それだけの強さを試合で魅せたこともあり、騎士団のお偉いさんたちまで、とりあえず一言……うちの騎士団に来ないかと声を掛ける。
当然、アラッドは申し訳ないと、丁寧な態度で断りを入れる。
騎士たちの中にはその理由を尋ねる者がおり、考えていた定型文を何度も返す。
「贅沢な奴だな」
「僕だったら絶対に入りますって答えちゃうよ」
「生意気ね……強いのは認めるけど」
「そうだよね~。あれだけの強さを魅せられちゃったら、現役騎士たちがこぞって自分の団に勧誘するのも納得だよ」
パーティーに参加している学生たちにとっては、羨まし過ぎる状況。
大会が終わった後の勧誘ともなれば、ほぼ卒業後の内定が決まると言っても過言ではない。
大会は学生たちにとって、就活の場と同義。
そんな就活が終わった後、このパーティーで声を掛けられるのをドキドキしながら待つ学生が殆ど。
「ふっ、どうやらその意志はオリハルコンのように固いようだな」
「子供の頃から決めた、変わらぬ道ですから」
「そうか……しかし、依頼をすれば手を借りれるのだろう」
「えぇ、勿論ですよ。報酬が良ければ、是非とも受けさせてもらいます」
この言葉に、勧誘することばかり頭にあった騎士たちは、その手があったかと希望の光を得る。
そうしてアラッドを囲っていた現役騎士たちが、ようやく本日の主役を解放。
ようやく友人たちとのんびり過ごせる時間が訪れた。
「凄かったな。でも、気持ちは変わらないんだろ」
「あぁ、そうだな。勧誘してくれるのは嬉しいし、光栄なことだと思ってる」
それは紛れもない本音。
自分が今まで積み重ねてきた力が評価されるのは、本当に嬉しく思う。
「でも、あの現役騎士たちの言葉で揺らぐぐらいなら、父さんに提案された段階で道を変更してる」
「……はは! 確かにそうだな」
アラッドの言葉に、友人たちは「そりゃそうだ」と納得。
そんな中、個人戦やタッグ戦で活躍した友人たちも騎士たちに声を掛けられ、将来的にうちの団に来ないかと勧誘を受ける。
他の学生たちも声を掛けられていると……一人の学生が、アラッドの元へと訪れた。
その瞬間、学生だけではなく現役騎士たちもざわめき始めた。
「試合ぶり、ですね」
「どうも」
薄い青をメインにしたドレス姿のフローレンス。
その美しさに……惑わされることはなかったアラッド。
態度は試合中と変わらない。
「完敗でした。まだまだ足りない部分が多いと痛感しましたわ」
「謙虚も過ぎると嫌味に変わりますよ」
あと一歩のところまで追い詰められていたのは、アラッドも同じ。
「あなたは、試合中に成長……いや、あれは進化と言って差し支えないでしょう。あれが完璧な状態であれば、
結果は逆でした」
単語精霊同化が完成していれば、完全に自分の負け……というアラッドの言葉を、素直に受け取れなかった。
実力ではアラッドの方が、結果的に半歩上だった。
しかし、社交界での読み合いに関しては、何度もこういった場でおしゃべりしているフローレンスの方が数段上。
アラッドのポーカーフェイスがお粗末だったわけではないが、フローレンスには何かを隠しているのがバレていた。
ただ、そこで深く突っ込もうとしないのが淑女。
「そう言ってくれると嬉しいわ。ところで、本当に騎士にはならないのかしら」
「……あなたまで同じことを聞くんですね」
騎士たちと同じテンプレート文を返し、もうフローレンスとの会話は終わり……と思っていたが、女王はそんなアラッドの内心に構わず、会話を続けた。
なんて実際には口に出せるわけがなく、アラッドは多くの現役騎士や、その関係者に囲まれていた。
声を掛けられる内容は……殆ど、騎士団に入らないか? というもの。
アラッドにその気がないというのは、割と広まっている。
ただ……本人にその気がなかったとしても、声を掛けずにはいられない。
それだけの強さを試合で魅せたこともあり、騎士団のお偉いさんたちまで、とりあえず一言……うちの騎士団に来ないかと声を掛ける。
当然、アラッドは申し訳ないと、丁寧な態度で断りを入れる。
騎士たちの中にはその理由を尋ねる者がおり、考えていた定型文を何度も返す。
「贅沢な奴だな」
「僕だったら絶対に入りますって答えちゃうよ」
「生意気ね……強いのは認めるけど」
「そうだよね~。あれだけの強さを魅せられちゃったら、現役騎士たちがこぞって自分の団に勧誘するのも納得だよ」
パーティーに参加している学生たちにとっては、羨まし過ぎる状況。
大会が終わった後の勧誘ともなれば、ほぼ卒業後の内定が決まると言っても過言ではない。
大会は学生たちにとって、就活の場と同義。
そんな就活が終わった後、このパーティーで声を掛けられるのをドキドキしながら待つ学生が殆ど。
「ふっ、どうやらその意志はオリハルコンのように固いようだな」
「子供の頃から決めた、変わらぬ道ですから」
「そうか……しかし、依頼をすれば手を借りれるのだろう」
「えぇ、勿論ですよ。報酬が良ければ、是非とも受けさせてもらいます」
この言葉に、勧誘することばかり頭にあった騎士たちは、その手があったかと希望の光を得る。
そうしてアラッドを囲っていた現役騎士たちが、ようやく本日の主役を解放。
ようやく友人たちとのんびり過ごせる時間が訪れた。
「凄かったな。でも、気持ちは変わらないんだろ」
「あぁ、そうだな。勧誘してくれるのは嬉しいし、光栄なことだと思ってる」
それは紛れもない本音。
自分が今まで積み重ねてきた力が評価されるのは、本当に嬉しく思う。
「でも、あの現役騎士たちの言葉で揺らぐぐらいなら、父さんに提案された段階で道を変更してる」
「……はは! 確かにそうだな」
アラッドの言葉に、友人たちは「そりゃそうだ」と納得。
そんな中、個人戦やタッグ戦で活躍した友人たちも騎士たちに声を掛けられ、将来的にうちの団に来ないかと勧誘を受ける。
他の学生たちも声を掛けられていると……一人の学生が、アラッドの元へと訪れた。
その瞬間、学生だけではなく現役騎士たちもざわめき始めた。
「試合ぶり、ですね」
「どうも」
薄い青をメインにしたドレス姿のフローレンス。
その美しさに……惑わされることはなかったアラッド。
態度は試合中と変わらない。
「完敗でした。まだまだ足りない部分が多いと痛感しましたわ」
「謙虚も過ぎると嫌味に変わりますよ」
あと一歩のところまで追い詰められていたのは、アラッドも同じ。
「あなたは、試合中に成長……いや、あれは進化と言って差し支えないでしょう。あれが完璧な状態であれば、
結果は逆でした」
単語精霊同化が完成していれば、完全に自分の負け……というアラッドの言葉を、素直に受け取れなかった。
実力ではアラッドの方が、結果的に半歩上だった。
しかし、社交界での読み合いに関しては、何度もこういった場でおしゃべりしているフローレンスの方が数段上。
アラッドのポーカーフェイスがお粗末だったわけではないが、フローレンスには何かを隠しているのがバレていた。
ただ、そこで深く突っ込もうとしないのが淑女。
「そう言ってくれると嬉しいわ。ところで、本当に騎士にはならないのかしら」
「……あなたまで同じことを聞くんですね」
騎士たちと同じテンプレート文を返し、もうフローレンスとの会話は終わり……と思っていたが、女王はそんなアラッドの内心に構わず、会話を続けた。
235
お気に入りに追加
6,112
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
見よう見まねで生産チート
立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します)
ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。
神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。
もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ
楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。
※基本的に主人公視点で進んでいきます。
※趣味作品ですので不定期投稿となります。
コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる