325 / 1,023
三百二十五話 依頼であれば受けますよ
しおりを挟む
(クソ、頼むから俺を放っておいてくれよ!!!)
なんて実際には口に出せるわけがなく、アラッドは多くの現役騎士や、その関係者に囲まれていた。
声を掛けられる内容は……殆ど、騎士団に入らないか? というもの。
アラッドにその気がないというのは、割と広まっている。
ただ……本人にその気がなかったとしても、声を掛けずにはいられない。
それだけの強さを試合で魅せたこともあり、騎士団のお偉いさんたちまで、とりあえず一言……うちの騎士団に来ないかと声を掛ける。
当然、アラッドは申し訳ないと、丁寧な態度で断りを入れる。
騎士たちの中にはその理由を尋ねる者がおり、考えていた定型文を何度も返す。
「贅沢な奴だな」
「僕だったら絶対に入りますって答えちゃうよ」
「生意気ね……強いのは認めるけど」
「そうだよね~。あれだけの強さを魅せられちゃったら、現役騎士たちがこぞって自分の団に勧誘するのも納得だよ」
パーティーに参加している学生たちにとっては、羨まし過ぎる状況。
大会が終わった後の勧誘ともなれば、ほぼ卒業後の内定が決まると言っても過言ではない。
大会は学生たちにとって、就活の場と同義。
そんな就活が終わった後、このパーティーで声を掛けられるのをドキドキしながら待つ学生が殆ど。
「ふっ、どうやらその意志はオリハルコンのように固いようだな」
「子供の頃から決めた、変わらぬ道ですから」
「そうか……しかし、依頼をすれば手を借りれるのだろう」
「えぇ、勿論ですよ。報酬が良ければ、是非とも受けさせてもらいます」
この言葉に、勧誘することばかり頭にあった騎士たちは、その手があったかと希望の光を得る。
そうしてアラッドを囲っていた現役騎士たちが、ようやく本日の主役を解放。
ようやく友人たちとのんびり過ごせる時間が訪れた。
「凄かったな。でも、気持ちは変わらないんだろ」
「あぁ、そうだな。勧誘してくれるのは嬉しいし、光栄なことだと思ってる」
それは紛れもない本音。
自分が今まで積み重ねてきた力が評価されるのは、本当に嬉しく思う。
「でも、あの現役騎士たちの言葉で揺らぐぐらいなら、父さんに提案された段階で道を変更してる」
「……はは! 確かにそうだな」
アラッドの言葉に、友人たちは「そりゃそうだ」と納得。
そんな中、個人戦やタッグ戦で活躍した友人たちも騎士たちに声を掛けられ、将来的にうちの団に来ないかと勧誘を受ける。
他の学生たちも声を掛けられていると……一人の学生が、アラッドの元へと訪れた。
その瞬間、学生だけではなく現役騎士たちもざわめき始めた。
「試合ぶり、ですね」
「どうも」
薄い青をメインにしたドレス姿のフローレンス。
その美しさに……惑わされることはなかったアラッド。
態度は試合中と変わらない。
「完敗でした。まだまだ足りない部分が多いと痛感しましたわ」
「謙虚も過ぎると嫌味に変わりますよ」
あと一歩のところまで追い詰められていたのは、アラッドも同じ。
「あなたは、試合中に成長……いや、あれは進化と言って差し支えないでしょう。あれが完璧な状態であれば、
結果は逆でした」
単語精霊同化が完成していれば、完全に自分の負け……というアラッドの言葉を、素直に受け取れなかった。
実力ではアラッドの方が、結果的に半歩上だった。
しかし、社交界での読み合いに関しては、何度もこういった場でおしゃべりしているフローレンスの方が数段上。
アラッドのポーカーフェイスがお粗末だったわけではないが、フローレンスには何かを隠しているのがバレていた。
ただ、そこで深く突っ込もうとしないのが淑女。
「そう言ってくれると嬉しいわ。ところで、本当に騎士にはならないのかしら」
「……あなたまで同じことを聞くんですね」
騎士たちと同じテンプレート文を返し、もうフローレンスとの会話は終わり……と思っていたが、女王はそんなアラッドの内心に構わず、会話を続けた。
なんて実際には口に出せるわけがなく、アラッドは多くの現役騎士や、その関係者に囲まれていた。
声を掛けられる内容は……殆ど、騎士団に入らないか? というもの。
アラッドにその気がないというのは、割と広まっている。
ただ……本人にその気がなかったとしても、声を掛けずにはいられない。
それだけの強さを試合で魅せたこともあり、騎士団のお偉いさんたちまで、とりあえず一言……うちの騎士団に来ないかと声を掛ける。
当然、アラッドは申し訳ないと、丁寧な態度で断りを入れる。
騎士たちの中にはその理由を尋ねる者がおり、考えていた定型文を何度も返す。
「贅沢な奴だな」
「僕だったら絶対に入りますって答えちゃうよ」
「生意気ね……強いのは認めるけど」
「そうだよね~。あれだけの強さを魅せられちゃったら、現役騎士たちがこぞって自分の団に勧誘するのも納得だよ」
パーティーに参加している学生たちにとっては、羨まし過ぎる状況。
大会が終わった後の勧誘ともなれば、ほぼ卒業後の内定が決まると言っても過言ではない。
大会は学生たちにとって、就活の場と同義。
そんな就活が終わった後、このパーティーで声を掛けられるのをドキドキしながら待つ学生が殆ど。
「ふっ、どうやらその意志はオリハルコンのように固いようだな」
「子供の頃から決めた、変わらぬ道ですから」
「そうか……しかし、依頼をすれば手を借りれるのだろう」
「えぇ、勿論ですよ。報酬が良ければ、是非とも受けさせてもらいます」
この言葉に、勧誘することばかり頭にあった騎士たちは、その手があったかと希望の光を得る。
そうしてアラッドを囲っていた現役騎士たちが、ようやく本日の主役を解放。
ようやく友人たちとのんびり過ごせる時間が訪れた。
「凄かったな。でも、気持ちは変わらないんだろ」
「あぁ、そうだな。勧誘してくれるのは嬉しいし、光栄なことだと思ってる」
それは紛れもない本音。
自分が今まで積み重ねてきた力が評価されるのは、本当に嬉しく思う。
「でも、あの現役騎士たちの言葉で揺らぐぐらいなら、父さんに提案された段階で道を変更してる」
「……はは! 確かにそうだな」
アラッドの言葉に、友人たちは「そりゃそうだ」と納得。
そんな中、個人戦やタッグ戦で活躍した友人たちも騎士たちに声を掛けられ、将来的にうちの団に来ないかと勧誘を受ける。
他の学生たちも声を掛けられていると……一人の学生が、アラッドの元へと訪れた。
その瞬間、学生だけではなく現役騎士たちもざわめき始めた。
「試合ぶり、ですね」
「どうも」
薄い青をメインにしたドレス姿のフローレンス。
その美しさに……惑わされることはなかったアラッド。
態度は試合中と変わらない。
「完敗でした。まだまだ足りない部分が多いと痛感しましたわ」
「謙虚も過ぎると嫌味に変わりますよ」
あと一歩のところまで追い詰められていたのは、アラッドも同じ。
「あなたは、試合中に成長……いや、あれは進化と言って差し支えないでしょう。あれが完璧な状態であれば、
結果は逆でした」
単語精霊同化が完成していれば、完全に自分の負け……というアラッドの言葉を、素直に受け取れなかった。
実力ではアラッドの方が、結果的に半歩上だった。
しかし、社交界での読み合いに関しては、何度もこういった場でおしゃべりしているフローレンスの方が数段上。
アラッドのポーカーフェイスがお粗末だったわけではないが、フローレンスには何かを隠しているのがバレていた。
ただ、そこで深く突っ込もうとしないのが淑女。
「そう言ってくれると嬉しいわ。ところで、本当に騎士にはならないのかしら」
「……あなたまで同じことを聞くんですね」
騎士たちと同じテンプレート文を返し、もうフローレンスとの会話は終わり……と思っていたが、女王はそんなアラッドの内心に構わず、会話を続けた。
235
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』
ふつうのにーちゃん
ファンタジー
転生者グレイボーンは、前世でシュールな死に方をしてしまったがあまりに神に気に入られ、【重弩使い】のギフトを与えられた。
しかしその神は実のところ、人の運命を弄ぶ邪神だった。
確かに重弩使いとして破格の才能を持って生まれたが、彼は『10cm先までしかまともに見えない』という、台無しのハンデを抱えていた。
それから時が流れ、彼が15歳を迎えると、父が死病を患い、男と蒸発した母が帰ってきた。
異父兄妹のリチェルと共に。
彼はリチェルを嫌うが、結局は母の代わりに面倒を見ることになった。
ところがしばらくしたある日、リチェルが失踪してしまう。
妹に愛情を懐き始めていたグレイボーンは深い衝撃を受けた。
だが皮肉にもその衝撃がきっかけとなり、彼は前世の記憶を取り戻すことになる。
決意したグレイボーンは、父から規格外の重弩《アーバレスト》を受け継いだ。
彼はそれを抱えて、リチェルが入り込んだという魔物の領域に踏み込む。
リチェルを救い、これからは良い兄となるために。
「たぶん人じゃないヨシッッ!!」
当たれば一撃必殺。
ただし、彼の目には、それが魔物か人かはわからない。
勘で必殺の弩を放つ超危険人物にして、空気の読めないシスコン兄の誕生だった。
毎日2~3話投稿。なろうとカクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる