322 / 1,012
三百二十二話 大乱戦の果てに
しおりを挟む
光の人型精霊、ウィリスとアラッドの相棒、クロが試合に参加したことで、戦いは更に激化。
まさかのフローレンスが精霊を召喚し、その次にアラッドが従魔を呼び寄せた。
クロ……デルドウルフは、見た目だけで完全に強者だと、観客たちに解らせる。
一瞬、完全にひっくり返ったと思われた戦況が、直ぐに戻った。
アラッドとウィリスがぶつかることもあれば、フローレンスとクロがぶつかる。
二対二の状況になったかと思えば、アラッドがクロの背中に乗り、人獣一体でリングを駆けまわる。
(チっ!! あと、あと数手だ。何手か有利に運べば終わらせられるのに……クソ!!)
危機回避能力に関しては、フローレンスも劣っていない。
本当に不味い攻撃は完全に回避しており……それはアラッドも同じなため、未だに両者は致命的な攻撃は受けていない。
試合はまだまだ長引くのか。
そう思う観客たちもいるが、本人たちはもって数分と考えている。
少々後手に回っているフローレンスとウィリスは、一分も経てば立っていられないかもしれない。
そんな自身の状況は把握しつつも、絶対に負けたくないという気持ちで溢れていた。
(私だって、負けられない!!!!!)
アラッドには、自分を否定したいという思いがあると感じ取った。
思い、考え方は人それぞれ。
その思いを否定するつもりはない。
それでも、自分の信念を潰されるつもりはなく、女王としてのプライドも相まって、フローレンスの体に変化が訪れた。
『フローレンスっ!!!』
「えぇっ!!!!」
ウィリスの呼びかけで、自分に何を伝えたいのか解った。
二人はアラッドとクロに残り少ない魔力で最大の牽制を行い、一か所に集まった。
「っ!!!!」
二人の行動に対し、咄嗟に危機感を感じ取ったアラッドは、咄嗟に糸を伸ばした。
しかし、二人が行った行動の余波に糸は吹き飛ばされてしまう。
「……ガチの化け物だな、クソったれが」
思いっきり悪態を付くアラッド。
しかし、それも仕方なかった。
「アラッドさん……終わらせます」
一か所に集まったフローレンスとウィリスは、同化を行った。
それは、単語精霊同化と呼ばれる精霊との合体技と言えるもの。
精霊と契約を結べる可能性が高いエルフであっても、それが行える者は限られている。
とはいえ、二人は今単語精霊同化を行えるようになったばかり。
体の右半分程しか完全に同化出来ていない状態。
しかし……不完全な状態とはいえ、戦況をひっくり返すには十分過ぎるほどの切り札。
天才が実戦で成長した結果であり、アラッドは今……初めてオーアルドラゴンと対面した時と、同レベルの衝撃を感じていた。
『「はぁぁあああああああっ!!!!!」』
半分は制服姿、もう半分は単語精霊同化を行った状態に身に纏う、特殊な戦乙女風のドレス姿のフローレンスは上空に飛び上がり、最後の攻撃を行う。
アラッドとクロ、二人を一度に葬り去るほど濃密な光の魔力と精霊の力を身に纏い、斬撃を放つ。
観客たちは……その斬撃が放たれ、この試合は終ると思っていた。
フローレンス自身も、この一撃を放てば最強の挑戦者に勝てる。
そう確信していた。
だが、ここでアラッドが授かったスキルがこの試合で、初めてそれらしい効果を発揮した。
『「ぶ、はっ!!!???」』
本人は解っていない。
何故そんな行動をとってしまったのか、一ミリも解らない。
ただ、フローレンスはいきなり……左拳で、自身の顔面を思いっ切り殴りつけた。
「ガルルルゥゥアアアアアアアッ!!!」
主人が何かをしていた。
それを即座に把握したクロは、闇の魔力を纏った爪を振りかぶり、漆黒の爪撃を叩きこむ。
「うおおおおぉぉいおおおらああああああ!!!!」
相棒に続き、アラッドも全力で……最後の最後で後の事を考えてケチることはなく、最後の一撃を放った。
まさかのフローレンスが精霊を召喚し、その次にアラッドが従魔を呼び寄せた。
クロ……デルドウルフは、見た目だけで完全に強者だと、観客たちに解らせる。
一瞬、完全にひっくり返ったと思われた戦況が、直ぐに戻った。
アラッドとウィリスがぶつかることもあれば、フローレンスとクロがぶつかる。
二対二の状況になったかと思えば、アラッドがクロの背中に乗り、人獣一体でリングを駆けまわる。
(チっ!! あと、あと数手だ。何手か有利に運べば終わらせられるのに……クソ!!)
危機回避能力に関しては、フローレンスも劣っていない。
本当に不味い攻撃は完全に回避しており……それはアラッドも同じなため、未だに両者は致命的な攻撃は受けていない。
試合はまだまだ長引くのか。
そう思う観客たちもいるが、本人たちはもって数分と考えている。
少々後手に回っているフローレンスとウィリスは、一分も経てば立っていられないかもしれない。
そんな自身の状況は把握しつつも、絶対に負けたくないという気持ちで溢れていた。
(私だって、負けられない!!!!!)
アラッドには、自分を否定したいという思いがあると感じ取った。
思い、考え方は人それぞれ。
その思いを否定するつもりはない。
それでも、自分の信念を潰されるつもりはなく、女王としてのプライドも相まって、フローレンスの体に変化が訪れた。
『フローレンスっ!!!』
「えぇっ!!!!」
ウィリスの呼びかけで、自分に何を伝えたいのか解った。
二人はアラッドとクロに残り少ない魔力で最大の牽制を行い、一か所に集まった。
「っ!!!!」
二人の行動に対し、咄嗟に危機感を感じ取ったアラッドは、咄嗟に糸を伸ばした。
しかし、二人が行った行動の余波に糸は吹き飛ばされてしまう。
「……ガチの化け物だな、クソったれが」
思いっきり悪態を付くアラッド。
しかし、それも仕方なかった。
「アラッドさん……終わらせます」
一か所に集まったフローレンスとウィリスは、同化を行った。
それは、単語精霊同化と呼ばれる精霊との合体技と言えるもの。
精霊と契約を結べる可能性が高いエルフであっても、それが行える者は限られている。
とはいえ、二人は今単語精霊同化を行えるようになったばかり。
体の右半分程しか完全に同化出来ていない状態。
しかし……不完全な状態とはいえ、戦況をひっくり返すには十分過ぎるほどの切り札。
天才が実戦で成長した結果であり、アラッドは今……初めてオーアルドラゴンと対面した時と、同レベルの衝撃を感じていた。
『「はぁぁあああああああっ!!!!!」』
半分は制服姿、もう半分は単語精霊同化を行った状態に身に纏う、特殊な戦乙女風のドレス姿のフローレンスは上空に飛び上がり、最後の攻撃を行う。
アラッドとクロ、二人を一度に葬り去るほど濃密な光の魔力と精霊の力を身に纏い、斬撃を放つ。
観客たちは……その斬撃が放たれ、この試合は終ると思っていた。
フローレンス自身も、この一撃を放てば最強の挑戦者に勝てる。
そう確信していた。
だが、ここでアラッドが授かったスキルがこの試合で、初めてそれらしい効果を発揮した。
『「ぶ、はっ!!!???」』
本人は解っていない。
何故そんな行動をとってしまったのか、一ミリも解らない。
ただ、フローレンスはいきなり……左拳で、自身の顔面を思いっ切り殴りつけた。
「ガルルルゥゥアアアアアアアッ!!!」
主人が何かをしていた。
それを即座に把握したクロは、闇の魔力を纏った爪を振りかぶり、漆黒の爪撃を叩きこむ。
「うおおおおぉぉいおおおらああああああ!!!!」
相棒に続き、アラッドも全力で……最後の最後で後の事を考えてケチることはなく、最後の一撃を放った。
223
お気に入りに追加
6,106
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる