321 / 1,023
三百二十一話 卑怯とは言わせない
しおりを挟む
フローレンスは暴風を纏った細剣から連続で斬撃を放ち、アラッドから少しでも距離を取ろうとした。
「ふんっ!!!」
攻撃速度は速く、無視できる攻撃ではなかった為、無理に逃げようとせずに相殺。
すると、その間にフローレンスが動きを見せ……自身の前方に、魔法陣を展開。
「あら、結構ヤバい感じかしら?」
「えぇ、その通りです。過去一番の強敵です」
魔法陣から現れたのは、まさかの精霊。
しかも、人型で言葉を発する精霊。
それがどれだけヤバいのか……精霊と契約していないアラッドは把握していた。
基本的に人族が精霊と契約するのは難易度が高く、主に契約できるのはエルフ。
人族の中にも契約できる者はいるが、契約出来る精霊のランクはあまり高くない。
そんな精霊の中でも、人型で言葉を発することが出来る精霊というのは、戦力的にはトップクラス。
最強とはまではいかずとも……その実力はジャン・セイバーを容易に超えている。
フローレンスの力量上、完全な顕現ではないとはいえ、二対一という状況が出来上がってしまったことに変わりはない。
この絶体絶命の状況の中……アラッドは凶悪な笑みを浮かべ、全力の殺意を放った。
「それでこそ女王だっ!!!!!!!」
アラッドも魔力残量を惜しむことなく、糸に属性魔力を混ぜながら発動。
これで風を纏っていたフローレンスであっても、迫りくる糸に意識を割かなければならなくなる。
二対一という絶望的な状況に追い込まれたかのように思われたが、その状況下でこそ笑みを浮かべるアラッド。
観客たちの中には、色々と超えてあいつは変態だと思う者すらいた。
そんな超不利な戦況でも攻めの姿勢を崩さないアラッドだが、更に攻防が激しくなってから約一分後、勇ましく吼えたは良いが、流石に厳し過ぎると思い始めた。
色々とチートなアラッドでも、全ての才能で人類全てを圧倒的できはしない。
ただ……この状況を打ち破る術なら持っている。
「審判!!!!」
「っ!?」
突然声を掛けられ、肩を大きく震わせる審判。
「こいつが、精霊を、召喚、したんだから!! 俺も、呼んで良いよな!!!」
「…………」
数秒間、アラッドが何を言っているのか分からず、硬直状態。
「おい、どうなんだ!!!!!」
直ぐに答えない。
極限に近い戦況ということもあり、思わず怒声を放つ。
「っ!!?? だ、大丈夫です!!!!」
もう一度肩を震わせてビビるが、今度はアラッドからの問いに返した。
審判という立場上、観客たちが二人に抱いているイメージなど関係無い。
公平に対応してこその審判。
正式な許可を得たところで、アラッドは自分の影を強く踏みつけた。
「こい!!! クロ!!!!!」
次の瞬間……陰から一本角の巨狼が現れた。
「アオオオオオォォォォォ!!!!!!!」
「「っ!!??」」
現れたモンスターは、アラッドの従魔にして相棒のクロ……デルドウルフ。
ウルフ系モンスターの中でも珍しい存在なため、フローレンスや光の人型精霊、ウィリスも目の前の巨狼を詳しくは知らない。
それは観客たちも同じだった。
ただ……その迫力や強さが本物ということだけは理解出来た。
「これで、二対二だ。まぁ……こっちの方が、ちょっとズルいとは自分でも思ってますよ」
デルドウルフは自身とアラッドの影を通して現れたので、全く魔力を消費していない。
「でも、卑怯だなんて言いませんよね」
「えぇ、勿論ですよ」
先にこのままでは勝てないと思い、一対一という戦況をひっくり返したのはフローレンス。
アラッドが自分と似たようなことを行ったからといって、文句を言うほど女王の器は小さくない。
「それは良かったです。それでは、第三ラウンドといきましょうか」
何だかんだでアラッドも体力、魔力や精神力がかなり擦り減っている。
相変わらず好戦的な笑みを浮かべているが、フローレンスと同じく既に戦闘力と心、共に余裕はなかった。
「ふんっ!!!」
攻撃速度は速く、無視できる攻撃ではなかった為、無理に逃げようとせずに相殺。
すると、その間にフローレンスが動きを見せ……自身の前方に、魔法陣を展開。
「あら、結構ヤバい感じかしら?」
「えぇ、その通りです。過去一番の強敵です」
魔法陣から現れたのは、まさかの精霊。
しかも、人型で言葉を発する精霊。
それがどれだけヤバいのか……精霊と契約していないアラッドは把握していた。
基本的に人族が精霊と契約するのは難易度が高く、主に契約できるのはエルフ。
人族の中にも契約できる者はいるが、契約出来る精霊のランクはあまり高くない。
そんな精霊の中でも、人型で言葉を発することが出来る精霊というのは、戦力的にはトップクラス。
最強とはまではいかずとも……その実力はジャン・セイバーを容易に超えている。
フローレンスの力量上、完全な顕現ではないとはいえ、二対一という状況が出来上がってしまったことに変わりはない。
この絶体絶命の状況の中……アラッドは凶悪な笑みを浮かべ、全力の殺意を放った。
「それでこそ女王だっ!!!!!!!」
アラッドも魔力残量を惜しむことなく、糸に属性魔力を混ぜながら発動。
これで風を纏っていたフローレンスであっても、迫りくる糸に意識を割かなければならなくなる。
二対一という絶望的な状況に追い込まれたかのように思われたが、その状況下でこそ笑みを浮かべるアラッド。
観客たちの中には、色々と超えてあいつは変態だと思う者すらいた。
そんな超不利な戦況でも攻めの姿勢を崩さないアラッドだが、更に攻防が激しくなってから約一分後、勇ましく吼えたは良いが、流石に厳し過ぎると思い始めた。
色々とチートなアラッドでも、全ての才能で人類全てを圧倒的できはしない。
ただ……この状況を打ち破る術なら持っている。
「審判!!!!」
「っ!?」
突然声を掛けられ、肩を大きく震わせる審判。
「こいつが、精霊を、召喚、したんだから!! 俺も、呼んで良いよな!!!」
「…………」
数秒間、アラッドが何を言っているのか分からず、硬直状態。
「おい、どうなんだ!!!!!」
直ぐに答えない。
極限に近い戦況ということもあり、思わず怒声を放つ。
「っ!!?? だ、大丈夫です!!!!」
もう一度肩を震わせてビビるが、今度はアラッドからの問いに返した。
審判という立場上、観客たちが二人に抱いているイメージなど関係無い。
公平に対応してこその審判。
正式な許可を得たところで、アラッドは自分の影を強く踏みつけた。
「こい!!! クロ!!!!!」
次の瞬間……陰から一本角の巨狼が現れた。
「アオオオオオォォォォォ!!!!!!!」
「「っ!!??」」
現れたモンスターは、アラッドの従魔にして相棒のクロ……デルドウルフ。
ウルフ系モンスターの中でも珍しい存在なため、フローレンスや光の人型精霊、ウィリスも目の前の巨狼を詳しくは知らない。
それは観客たちも同じだった。
ただ……その迫力や強さが本物ということだけは理解出来た。
「これで、二対二だ。まぁ……こっちの方が、ちょっとズルいとは自分でも思ってますよ」
デルドウルフは自身とアラッドの影を通して現れたので、全く魔力を消費していない。
「でも、卑怯だなんて言いませんよね」
「えぇ、勿論ですよ」
先にこのままでは勝てないと思い、一対一という戦況をひっくり返したのはフローレンス。
アラッドが自分と似たようなことを行ったからといって、文句を言うほど女王の器は小さくない。
「それは良かったです。それでは、第三ラウンドといきましょうか」
何だかんだでアラッドも体力、魔力や精神力がかなり擦り減っている。
相変わらず好戦的な笑みを浮かべているが、フローレンスと同じく既に戦闘力と心、共に余裕はなかった。
223
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる
朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。
彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる