319 / 1,058
三百十九話 体裁など関係ない
しおりを挟む
(父さんやバイアードさんを除けば、今までで一番戦いにくいな!!)
決勝戦が始まってから数分、アラッドの攻撃が数回ほど掠りはするが、それはフローレンスの攻撃も同じ。
アラッドは少々特殊だが、レベルはフローレンスの方が上。
なので、身体能力は総合的には五分五分な状態。
戦闘経験数も、いくらアラッドが馬鹿みたいに実戦を積んでいても、真面目な天才の数年間は馬鹿に出来ない。
つまり、現時点では互角。
芸術とも言える細剣の技術に惑わされることはないが、剛剣の力強さに焦ることもない。
それでいて、二人とも試合が始まってから、殆どノンストップで動き続けている。
そんなハイレベルな戦いが繰り広げている事もあり、観客たちは喉が潰れるほど叫び、両者に声援を送っていた。
「おらっ!!!!」
「ふっ!!!」
戦いが続くにつれ、徐々にアラッドの表情に……露骨な怒りが浮かび始める。
冷静さは失っている訳ではなく、ドラングと同様に怒りを戦闘力に変えている。
(なんと、強烈な怒気! 今まで一番濃密、かもしれませんね!!!)
憎しみや嫉妬などと同じく、怒りという激しい感情も、今まで何度も向けられてきたことがある。
自分と同じく、多くの部分が学生離れしていると、改めて認識させられながらも……フローレンスはその強く思い感情を、受け流すように対応する。
「チッ!!」
自身の攻撃を受け流され、カウンターを食らってはいないが、嫌な流れに思わず舌打ちしてしまう。
(聖母気取りか? 本当にウザイ対応をしてくるな!!)
殺気こそ零れないものの、更に重厚な怒りが溢れる。
攻めがより苛烈になるが、アラッドは冷静に糸を使う瞬間を探っていた。
その思考の隙を突くのが上手いフローレンスだが、アラッドはその隙を与えない。
(スタミナ切れ、魔力切れ……どれも狙うのは得策ではありませんね)
スタミナ、魔力量。共に自信を持つフローレンスだが、アラッドの戦いぶりを見る限り、それを狙えば泥沼になるのは間違いない。
(勿体ぶってる暇はありませんね)
こういった状況を想定し、奥の手を隠していた。
余裕がなくなる前に終わらせようと、切り札を使用。
「単語聖光雄化」
「ッ!!??」
フローレンスの口から漏れた単語に嫌な予感を感じ、全力で後方へ下がるアラッド。
(……対戦相手にビビったのは、久しぶりだな)
スキルを使用したフローレンスに神々しさが宿り、更に筋肉の張りが強くなる。
「アラッドさん。あなたを、潰させていただきます」
「……あんたの事は好きじゃないが、その闘志は好みですね」
嘘偽りない言葉。
フローレンスが使用した言葉には聞き覚えがあり、そのスキルの習得難易度も知っていた。
(リオ、本当にお前の言葉は正しかった。この人は、本当の化け物だ)
単語聖光雄化を使用したフローレンスには、状態異常無効と身体能力強化の効果を得た。
(見た目や雰囲気どうこうなんて、考えてる余裕はないな)
「ですが、その言葉。そっくりそのまま返します」
次の瞬間、アラッドの体が危険な雰囲気が零れる。
「ッ!!!」
審判は動揺が隠せず、無意識のうちに構え、アラッドを取り押さえるべきか悩んだ。
アラッドが使用したスキルは、狂化。
身体能力が大幅に強化する代わりに、性格が狂暴化する。
思考力が鈍ることもあり、症状が悪化すれば見境なく、周囲の生物を襲い始める。
「全力で潰す。勝つのは俺だ」
まともに言葉を発する様子を見て、審判は一時的にアラッドを取り押さえるという考えを撤回。
思考力があり、まだ危険な状態ではないと判断。
とはいえ……両者が使用したスキル、状態を見て審判は二人の戦闘力に、恐ろしさを感じざるをえなかった。
決勝戦が始まってから数分、アラッドの攻撃が数回ほど掠りはするが、それはフローレンスの攻撃も同じ。
アラッドは少々特殊だが、レベルはフローレンスの方が上。
なので、身体能力は総合的には五分五分な状態。
戦闘経験数も、いくらアラッドが馬鹿みたいに実戦を積んでいても、真面目な天才の数年間は馬鹿に出来ない。
つまり、現時点では互角。
芸術とも言える細剣の技術に惑わされることはないが、剛剣の力強さに焦ることもない。
それでいて、二人とも試合が始まってから、殆どノンストップで動き続けている。
そんなハイレベルな戦いが繰り広げている事もあり、観客たちは喉が潰れるほど叫び、両者に声援を送っていた。
「おらっ!!!!」
「ふっ!!!」
戦いが続くにつれ、徐々にアラッドの表情に……露骨な怒りが浮かび始める。
冷静さは失っている訳ではなく、ドラングと同様に怒りを戦闘力に変えている。
(なんと、強烈な怒気! 今まで一番濃密、かもしれませんね!!!)
憎しみや嫉妬などと同じく、怒りという激しい感情も、今まで何度も向けられてきたことがある。
自分と同じく、多くの部分が学生離れしていると、改めて認識させられながらも……フローレンスはその強く思い感情を、受け流すように対応する。
「チッ!!」
自身の攻撃を受け流され、カウンターを食らってはいないが、嫌な流れに思わず舌打ちしてしまう。
(聖母気取りか? 本当にウザイ対応をしてくるな!!)
殺気こそ零れないものの、更に重厚な怒りが溢れる。
攻めがより苛烈になるが、アラッドは冷静に糸を使う瞬間を探っていた。
その思考の隙を突くのが上手いフローレンスだが、アラッドはその隙を与えない。
(スタミナ切れ、魔力切れ……どれも狙うのは得策ではありませんね)
スタミナ、魔力量。共に自信を持つフローレンスだが、アラッドの戦いぶりを見る限り、それを狙えば泥沼になるのは間違いない。
(勿体ぶってる暇はありませんね)
こういった状況を想定し、奥の手を隠していた。
余裕がなくなる前に終わらせようと、切り札を使用。
「単語聖光雄化」
「ッ!!??」
フローレンスの口から漏れた単語に嫌な予感を感じ、全力で後方へ下がるアラッド。
(……対戦相手にビビったのは、久しぶりだな)
スキルを使用したフローレンスに神々しさが宿り、更に筋肉の張りが強くなる。
「アラッドさん。あなたを、潰させていただきます」
「……あんたの事は好きじゃないが、その闘志は好みですね」
嘘偽りない言葉。
フローレンスが使用した言葉には聞き覚えがあり、そのスキルの習得難易度も知っていた。
(リオ、本当にお前の言葉は正しかった。この人は、本当の化け物だ)
単語聖光雄化を使用したフローレンスには、状態異常無効と身体能力強化の効果を得た。
(見た目や雰囲気どうこうなんて、考えてる余裕はないな)
「ですが、その言葉。そっくりそのまま返します」
次の瞬間、アラッドの体が危険な雰囲気が零れる。
「ッ!!!」
審判は動揺が隠せず、無意識のうちに構え、アラッドを取り押さえるべきか悩んだ。
アラッドが使用したスキルは、狂化。
身体能力が大幅に強化する代わりに、性格が狂暴化する。
思考力が鈍ることもあり、症状が悪化すれば見境なく、周囲の生物を襲い始める。
「全力で潰す。勝つのは俺だ」
まともに言葉を発する様子を見て、審判は一時的にアラッドを取り押さえるという考えを撤回。
思考力があり、まだ危険な状態ではないと判断。
とはいえ……両者が使用したスキル、状態を見て審判は二人の戦闘力に、恐ろしさを感じざるをえなかった。
255
お気に入りに追加
6,126
あなたにおすすめの小説


追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる