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三百十二話 そういう商売もある
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「……そこら辺の試合より、よっぽど金が取れそうな組み合わせだな」
「そうだね。これは平民や貴族関係無く、王都で生活する者たちなら、絶対に見逃せない一戦だよ」
当たり前だが、会場に入れない者たちだっている。
そんな者たちを相手に、通信機能を有するマジックアイテムを使い、観戦している冒険者が戦況をもう一人の冒険者に、マジックアイテムを通して伝える。
そして伝えられた冒険者が中に入れない者たちの為に、会場の中で行われている戦いを解説する。
なんて商売をしているものさえいる。
この商売は以前から行われており、これからレイとフローレンスの試合が行われるとなれば……会場の周りには、その手法で商売をしている冒険者に集まる者たちで溢れかえっていた。
「アラッドから視て、勝つのはどちらだと思う?」
このベルの言葉に、周囲の観客たちは揃って聞き耳を立てる。
元々貴族の間では、引退した騎士や現役の騎士が手放しで褒め、勧誘しようとするほどの実力者。
という情報は広まっており、かなり強いという話は耳に入っていた。
平民たちにはそういった情報が入っておらず、個人戦の大会に出場しても……最初は多分一回戦で消えるだろう、と思われていた。
しかし蓋を開けてみれば、連戦連勝。
遂には一年生ながらに、準決勝まで上り詰めた。
そんなアラッドが、今から始まるレイとフローレンスの勝敗を予想。
今から口に出される情報は聞き逃せない。
「……フローレンス・カルロストが、何を隠してるかによるな」
「奥の手をってことかい?」
「そうだ。身体能力は、おそらく互角……もしかしたら、レイ嬢が少し上かもしれないって程度だ。今までの試合みたいに、大きなアドバンテージにはならない」
そんなレイも、今までの試合の中で本気中の本気は出していなかった。
だが、出していない分の差は……フローレンスの方が大きいと感じるアラッド。
「個人的にはややフローレンス・カルロストの方が有利だと思うが、隠している奥の手なども含めて、やってみなければ分からない試合だな」
結局はそういう結論に至る。
そして二人がリングに入場すると、大会が始まってから一番の歓声が巻き起こる。
そうなる事は予想していたため、アラッドは耳が殺られるまえに塞いでいた。
(……折れるなよ、レイ嬢)
アラッドの中では、三対七でレイの方が不利だと予想。
それでも、勝利するには大前提として、闘争心が折れてはいけない。
「良い試合をしましょう」
「はい」
リングの上では、フローレンスが前の試合と同じ言葉を対戦選手に伝え、レイは変わらない表情で答える。
明らかに上から目線の言葉であっても、それが今の立場なのだと認識している。
だからこそ……全力で潰しにいくのみ。
「それでは……始め!!!!」
審判が試合開始の合図を行う。
その瞬間……レイだけではなく、フローレンスも勢い良く駆け出した。
一回戦や二回戦までとは違う攻め方。
(フローレンスも、レイ嬢は嘗めて戦ってたら、自分がやられるって解ってるみたいだな)
そんなフローレンスの攻めに、レイは全く驚かずに対処。
手数では細剣を使うフローレンスの方が多いが、そこは持ち前の身体能力と、鍛えた防御技術でカバー。
「これって、カルロストさんがレイを敵として認めてる……ってことなのかな」
「だと思うぞ。少なくとも、今まで試合してきた相手と同じ様に、相手の戦いに合わせるような戦闘スタイルを行えば、ヤバいって思ったんだろうな」
アラッドたちの考えは的中しており、フローレンスは体の直ぐ近くで空を切るレイの斬撃に、今までの対戦相手には感じてこなかった圧を感じ取っていた。
(以前手合わせしたことがありましたが、技術も身体能力もあの頃と比べて、本当に伸びていますわね)
レイの成長に感心しながらも……圧倒的なパワーに潰されずに対応する、連覇を狙う女王。
お互いに隙と言える隙を見せず、数分間の攻防が続いた。
「そうだね。これは平民や貴族関係無く、王都で生活する者たちなら、絶対に見逃せない一戦だよ」
当たり前だが、会場に入れない者たちだっている。
そんな者たちを相手に、通信機能を有するマジックアイテムを使い、観戦している冒険者が戦況をもう一人の冒険者に、マジックアイテムを通して伝える。
そして伝えられた冒険者が中に入れない者たちの為に、会場の中で行われている戦いを解説する。
なんて商売をしているものさえいる。
この商売は以前から行われており、これからレイとフローレンスの試合が行われるとなれば……会場の周りには、その手法で商売をしている冒険者に集まる者たちで溢れかえっていた。
「アラッドから視て、勝つのはどちらだと思う?」
このベルの言葉に、周囲の観客たちは揃って聞き耳を立てる。
元々貴族の間では、引退した騎士や現役の騎士が手放しで褒め、勧誘しようとするほどの実力者。
という情報は広まっており、かなり強いという話は耳に入っていた。
平民たちにはそういった情報が入っておらず、個人戦の大会に出場しても……最初は多分一回戦で消えるだろう、と思われていた。
しかし蓋を開けてみれば、連戦連勝。
遂には一年生ながらに、準決勝まで上り詰めた。
そんなアラッドが、今から始まるレイとフローレンスの勝敗を予想。
今から口に出される情報は聞き逃せない。
「……フローレンス・カルロストが、何を隠してるかによるな」
「奥の手をってことかい?」
「そうだ。身体能力は、おそらく互角……もしかしたら、レイ嬢が少し上かもしれないって程度だ。今までの試合みたいに、大きなアドバンテージにはならない」
そんなレイも、今までの試合の中で本気中の本気は出していなかった。
だが、出していない分の差は……フローレンスの方が大きいと感じるアラッド。
「個人的にはややフローレンス・カルロストの方が有利だと思うが、隠している奥の手なども含めて、やってみなければ分からない試合だな」
結局はそういう結論に至る。
そして二人がリングに入場すると、大会が始まってから一番の歓声が巻き起こる。
そうなる事は予想していたため、アラッドは耳が殺られるまえに塞いでいた。
(……折れるなよ、レイ嬢)
アラッドの中では、三対七でレイの方が不利だと予想。
それでも、勝利するには大前提として、闘争心が折れてはいけない。
「良い試合をしましょう」
「はい」
リングの上では、フローレンスが前の試合と同じ言葉を対戦選手に伝え、レイは変わらない表情で答える。
明らかに上から目線の言葉であっても、それが今の立場なのだと認識している。
だからこそ……全力で潰しにいくのみ。
「それでは……始め!!!!」
審判が試合開始の合図を行う。
その瞬間……レイだけではなく、フローレンスも勢い良く駆け出した。
一回戦や二回戦までとは違う攻め方。
(フローレンスも、レイ嬢は嘗めて戦ってたら、自分がやられるって解ってるみたいだな)
そんなフローレンスの攻めに、レイは全く驚かずに対処。
手数では細剣を使うフローレンスの方が多いが、そこは持ち前の身体能力と、鍛えた防御技術でカバー。
「これって、カルロストさんがレイを敵として認めてる……ってことなのかな」
「だと思うぞ。少なくとも、今まで試合してきた相手と同じ様に、相手の戦いに合わせるような戦闘スタイルを行えば、ヤバいって思ったんだろうな」
アラッドたちの考えは的中しており、フローレンスは体の直ぐ近くで空を切るレイの斬撃に、今までの対戦相手には感じてこなかった圧を感じ取っていた。
(以前手合わせしたことがありましたが、技術も身体能力もあの頃と比べて、本当に伸びていますわね)
レイの成長に感心しながらも……圧倒的なパワーに潰されずに対応する、連覇を狙う女王。
お互いに隙と言える隙を見せず、数分間の攻防が続いた。
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