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二百八十六話 どこまで信じるか
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「最後の試合も結局一撃か」
「本当に、恐ろしいですね」
「全くね」
ベルたちは先程までアラッドの最後の校内戦を観ていた。
対戦相手は三年生の中でも、上位に名を連ねる強者。
ベルたちも上級生に負けない実力を持っていると自負しているが、仮に対戦して百パーセント勝てるかと問われれば、否と答える。
そんなハイレベルな上級生が相手だったのだが……アラッドはこれまでの試合通り、ただただ急接近してぶった斬る。
その動作を行い、勝利しようと考えていた。
ただ……そう何度も同じことを繰り返していれば、これからアラッドとぶつかるかもしれない生徒たちは、学生なりに対策を立て始める。
まずは最初の一撃を完全に受け止める。
ガードからの反撃を考えた者もいたが、実際に行った生徒……アイガスはその考えを見透かされ、ヤクザキックを食らって吹き飛んだ。
であれば、斬撃の型を見切ってカウンターで潰す。
もしくは自慢の柔剣で受け流す。
生徒たちは色々と方法を模索するが、アラッドと対戦することになった生徒たちは、多くて三撃で場外に吹き飛ばされてノックアウト。
もしくは戦意喪失し、降参。
「アラッドの場合さ……剣を使ってなくても、勝てそうだよな」
「彼の場合、もしかしたらそっちの方が得意かもしれないからね。でも、一応騎士を目指してるんだし、剣を使わないと駄目なんだよ」
「それは解ってるって。けどよ、本選で戦う奴らは可哀想だよな」
本日でパロスト学園で行われる個人戦は終了。
他の学園も数日以内には終わる為、いよいよ王都の闘技場で行われる学生の最強を決めるトーナメントが開催される。
「? 校内戦で戦った人たちも十分可哀想だと思うのだけど」
エリザの言葉に、リオ以外の全員がうんうんと頷いた。
確かに校内戦でアラッドとぶつかってしまった生徒たちは、十分可哀想と言えるだろう。
三年生にとっては、最大のアピールチャンスを奪われた結果になる。
それはリオも解っていた。
「それはそうだろうな。でも、他の学園の生徒たちは、アラッドが素手でもバリバリ戦えるってことを知らないだろ」
「……なるほど、そういうことか」
接近戦メインで戦う剛力令嬢であるレイは、リオが何を言いたいのか直ぐに気付いた。
「えっと…………あぁ、なるほど。確かに可哀想ではあるね」
そして尾根軸接近戦メインのベルも気付いた。
「どういうことなの?」
「アラッドは、私たちを相手に校内の訓練場で模擬戦を行っていただろう」
「そうね」
「その模擬戦で、アラッドは私たちを相手に素手で戦ったこともある」
そこまで言われ、ようやくエリザやルーフたちも理解した。
「そういうことね……本選出場まで進んで、まだまだこれからと意気込んでいる方にとっては、確かに可哀想ね」
訓練場には当たり前だが、アラッドたち以外の生徒たちも訓練や模擬戦を行っている。
つまり、アラッドと同じ訓練場で活動している生徒たちは、アラッドが剣を失っても素手で戦えるということを知っている。
校内戦や、トーナメント戦でも武器を落としたからといって、その時点で負けになることはない。
「アラッドが気に入らない奴はその情報を外に漏らすかもしれねぇが、他校の奴らがその話をどこまで信じるか……俺は素手でも戦えるが、剣よりも数段劣る。そう認識すると思ってんだ」
「十分あり得そうね。剣を上手く落とせば勝機があると思ってしまうのは無理もないけど……アラッドとしては、一切焦る必要がない状況ね」
「うむ、そうだな。寧ろ嬉々として殴り掛かるだろう」
特別な体を持ち、身体強化の才を授かったレイもその力を活かそうと体術の訓練も積み重ねてきたが、今のところ一度もアラッドに勝てていない。
「ただ……それはそれで面白い流れというだけだ」
未だ模擬戦で一勝も上げられていないというのが現状だが、もう一人の傑物は勝利を諦めておらず、獰猛な笑みを浮かべていた。
「本当に、恐ろしいですね」
「全くね」
ベルたちは先程までアラッドの最後の校内戦を観ていた。
対戦相手は三年生の中でも、上位に名を連ねる強者。
ベルたちも上級生に負けない実力を持っていると自負しているが、仮に対戦して百パーセント勝てるかと問われれば、否と答える。
そんなハイレベルな上級生が相手だったのだが……アラッドはこれまでの試合通り、ただただ急接近してぶった斬る。
その動作を行い、勝利しようと考えていた。
ただ……そう何度も同じことを繰り返していれば、これからアラッドとぶつかるかもしれない生徒たちは、学生なりに対策を立て始める。
まずは最初の一撃を完全に受け止める。
ガードからの反撃を考えた者もいたが、実際に行った生徒……アイガスはその考えを見透かされ、ヤクザキックを食らって吹き飛んだ。
であれば、斬撃の型を見切ってカウンターで潰す。
もしくは自慢の柔剣で受け流す。
生徒たちは色々と方法を模索するが、アラッドと対戦することになった生徒たちは、多くて三撃で場外に吹き飛ばされてノックアウト。
もしくは戦意喪失し、降参。
「アラッドの場合さ……剣を使ってなくても、勝てそうだよな」
「彼の場合、もしかしたらそっちの方が得意かもしれないからね。でも、一応騎士を目指してるんだし、剣を使わないと駄目なんだよ」
「それは解ってるって。けどよ、本選で戦う奴らは可哀想だよな」
本日でパロスト学園で行われる個人戦は終了。
他の学園も数日以内には終わる為、いよいよ王都の闘技場で行われる学生の最強を決めるトーナメントが開催される。
「? 校内戦で戦った人たちも十分可哀想だと思うのだけど」
エリザの言葉に、リオ以外の全員がうんうんと頷いた。
確かに校内戦でアラッドとぶつかってしまった生徒たちは、十分可哀想と言えるだろう。
三年生にとっては、最大のアピールチャンスを奪われた結果になる。
それはリオも解っていた。
「それはそうだろうな。でも、他の学園の生徒たちは、アラッドが素手でもバリバリ戦えるってことを知らないだろ」
「……なるほど、そういうことか」
接近戦メインで戦う剛力令嬢であるレイは、リオが何を言いたいのか直ぐに気付いた。
「えっと…………あぁ、なるほど。確かに可哀想ではあるね」
そして尾根軸接近戦メインのベルも気付いた。
「どういうことなの?」
「アラッドは、私たちを相手に校内の訓練場で模擬戦を行っていただろう」
「そうね」
「その模擬戦で、アラッドは私たちを相手に素手で戦ったこともある」
そこまで言われ、ようやくエリザやルーフたちも理解した。
「そういうことね……本選出場まで進んで、まだまだこれからと意気込んでいる方にとっては、確かに可哀想ね」
訓練場には当たり前だが、アラッドたち以外の生徒たちも訓練や模擬戦を行っている。
つまり、アラッドと同じ訓練場で活動している生徒たちは、アラッドが剣を失っても素手で戦えるということを知っている。
校内戦や、トーナメント戦でも武器を落としたからといって、その時点で負けになることはない。
「アラッドが気に入らない奴はその情報を外に漏らすかもしれねぇが、他校の奴らがその話をどこまで信じるか……俺は素手でも戦えるが、剣よりも数段劣る。そう認識すると思ってんだ」
「十分あり得そうね。剣を上手く落とせば勝機があると思ってしまうのは無理もないけど……アラッドとしては、一切焦る必要がない状況ね」
「うむ、そうだな。寧ろ嬉々として殴り掛かるだろう」
特別な体を持ち、身体強化の才を授かったレイもその力を活かそうと体術の訓練も積み重ねてきたが、今のところ一度もアラッドに勝てていない。
「ただ……それはそれで面白い流れというだけだ」
未だ模擬戦で一勝も上げられていないというのが現状だが、もう一人の傑物は勝利を諦めておらず、獰猛な笑みを浮かべていた。
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