285 / 1,012
二百八十五話 鋭さだけではない
しおりを挟む
「久しぶりにフィリアス様と話せて、本当に楽しかったです」
「こちらこそ、アラッドと話せて楽しかったわ……大会、頑張ってね」
「はい」
丁度良い時間になり、二人は自分たちの学園へと戻る。
「……アラッドと久しぶりにあって、どう感じました」
フィリアスは王族らしく、魔法の才能はかなりのもの。
守られてばかり、という現状が気に入らず、才能を腐らせない様に努力を重ねてきた。
それもあって、ある程度の観察眼が備わってきてはいるが、まだ自分の眼や感覚にあまり自身を持てていない。
「そうですね……一言でいえば、厚みが増した。といった感じですね」
初めてアラッドと出会い、部下であるモーナとの模擬戦を観て、ディーネはアラッドに鋭い刃物のような強さを感じた。
それから数度、時間を空けてフィリアスの護衛として度々会ってきたが、変わらず鋭い強さというのは感じる。
しかし、同時に大木のような安定感を感じるようにもなってきた。
(体格では既に私よりも大きい……体の線も、おそらく私と同等か……もしくは一回り大きいか)
今までは、アラッドを驚異的な存在だと認識しながらも、全力を出せば勝てるという自信があった。
ただ……今のアラッドと戦うことになれば、いったいどういった結果になるのか想像できなかった。
当然大敗するとは思っていない。
仮にそんな事態になれば、辞職しなければならないという思いもある。
それでは、完勝出来るのかと問われれば、絶対のノーと答える。
アラッドが子供の頃ならともかく、現在のアラッドと戦って完勝することなど不可能。
自分が強者だと自負はしているが、自惚れてはいない。
「なるほど。それでは、アラッドはフローレンスさんと戦って、勝てるでしょうか」
「……難しい師質問ですね」
ディーネは実際にフローレンスが戦うところを見たことがある為、ある程度の実力は把握している。
フローレンスもアラッドと同じく、高い才能を持ちながらも努力を怠らないタイプ。
そしてディーナはフローレンスに対して「化け物とは、こういう者のことを指すのだな」と思わず心の中で呟いてしまった。
人を見た目で判断してはならないというのは常識だが、それでも……思わず目を疑いたくなるような戦闘力を有している。
(あの戦いで全力を出していたとも思えない。勿論、アラッド君の本気の本気も見ていないが……本当に予想出来ない)
そもそもな話、トーナメント形式の大会なのだから、二人がちゃんと上まで登れるのか。
そういった心配があるかもしれないが、ディーネの頭には一切そんな心配や不安はない。
あの化け物二人が、化け物以外に負ける?
絶対にあり得ないと断言出来る。
「ポテンシャルでは、両者に大きな差はないかと思います。ただ、実戦の経験数だけでいえば、確実にアラッド君が上です」
フローレンスの方が歳は上だが、なんせアラッドは五歳の頃からモンスターと戦い続けてきた。
現在のレベルだけでいえば、フローレンスの方が上。
しかし、アラッドの体質を考えればその差は戦闘に影響を及ぼすことはない。
そしてそこにアラッドの実戦で手に入れた経験値が加わると……贔屓目もあるかもしれないが、ディーネ的にはアラッドの方が有利だと判断。
「技術の練度に関しても、二年生や三年生に引けを取らない。そういった点を考えると、アラッド君の方が優勢に思えますが……フローレンス様は、公式の場でまだ底を見せていない。そんな予感があります」
「そうですね。私も同じことを感じました」
二年生で個人のトーナメントを制したフローレンスは、まだ公の場で底を見せていない。
勘の良い者であれば、それに気付いていしまう。
それに対し、二人はアラッドが持つ武器についてはある程度把握している。
多種多様であり、一つ一つの練度も並ではない。
それは解っているが……フローレンスは対処力も高く、全てが通じるとは思えなかった。
(……いや、アラッド君が私やフィリアス様に全てを教えてくれているとは限らない)
どこまでいっても、自分に測れない存在。
それを改めて思い出したディーネ。
結局学園に到着するまで二人で悩み続けたが、結果……とりあえず二人がぶつかる試合が心の底から楽しみだという結論に至った。
「こちらこそ、アラッドと話せて楽しかったわ……大会、頑張ってね」
「はい」
丁度良い時間になり、二人は自分たちの学園へと戻る。
「……アラッドと久しぶりにあって、どう感じました」
フィリアスは王族らしく、魔法の才能はかなりのもの。
守られてばかり、という現状が気に入らず、才能を腐らせない様に努力を重ねてきた。
それもあって、ある程度の観察眼が備わってきてはいるが、まだ自分の眼や感覚にあまり自身を持てていない。
「そうですね……一言でいえば、厚みが増した。といった感じですね」
初めてアラッドと出会い、部下であるモーナとの模擬戦を観て、ディーネはアラッドに鋭い刃物のような強さを感じた。
それから数度、時間を空けてフィリアスの護衛として度々会ってきたが、変わらず鋭い強さというのは感じる。
しかし、同時に大木のような安定感を感じるようにもなってきた。
(体格では既に私よりも大きい……体の線も、おそらく私と同等か……もしくは一回り大きいか)
今までは、アラッドを驚異的な存在だと認識しながらも、全力を出せば勝てるという自信があった。
ただ……今のアラッドと戦うことになれば、いったいどういった結果になるのか想像できなかった。
当然大敗するとは思っていない。
仮にそんな事態になれば、辞職しなければならないという思いもある。
それでは、完勝出来るのかと問われれば、絶対のノーと答える。
アラッドが子供の頃ならともかく、現在のアラッドと戦って完勝することなど不可能。
自分が強者だと自負はしているが、自惚れてはいない。
「なるほど。それでは、アラッドはフローレンスさんと戦って、勝てるでしょうか」
「……難しい師質問ですね」
ディーネは実際にフローレンスが戦うところを見たことがある為、ある程度の実力は把握している。
フローレンスもアラッドと同じく、高い才能を持ちながらも努力を怠らないタイプ。
そしてディーナはフローレンスに対して「化け物とは、こういう者のことを指すのだな」と思わず心の中で呟いてしまった。
人を見た目で判断してはならないというのは常識だが、それでも……思わず目を疑いたくなるような戦闘力を有している。
(あの戦いで全力を出していたとも思えない。勿論、アラッド君の本気の本気も見ていないが……本当に予想出来ない)
そもそもな話、トーナメント形式の大会なのだから、二人がちゃんと上まで登れるのか。
そういった心配があるかもしれないが、ディーネの頭には一切そんな心配や不安はない。
あの化け物二人が、化け物以外に負ける?
絶対にあり得ないと断言出来る。
「ポテンシャルでは、両者に大きな差はないかと思います。ただ、実戦の経験数だけでいえば、確実にアラッド君が上です」
フローレンスの方が歳は上だが、なんせアラッドは五歳の頃からモンスターと戦い続けてきた。
現在のレベルだけでいえば、フローレンスの方が上。
しかし、アラッドの体質を考えればその差は戦闘に影響を及ぼすことはない。
そしてそこにアラッドの実戦で手に入れた経験値が加わると……贔屓目もあるかもしれないが、ディーネ的にはアラッドの方が有利だと判断。
「技術の練度に関しても、二年生や三年生に引けを取らない。そういった点を考えると、アラッド君の方が優勢に思えますが……フローレンス様は、公式の場でまだ底を見せていない。そんな予感があります」
「そうですね。私も同じことを感じました」
二年生で個人のトーナメントを制したフローレンスは、まだ公の場で底を見せていない。
勘の良い者であれば、それに気付いていしまう。
それに対し、二人はアラッドが持つ武器についてはある程度把握している。
多種多様であり、一つ一つの練度も並ではない。
それは解っているが……フローレンスは対処力も高く、全てが通じるとは思えなかった。
(……いや、アラッド君が私やフィリアス様に全てを教えてくれているとは限らない)
どこまでいっても、自分に測れない存在。
それを改めて思い出したディーネ。
結局学園に到着するまで二人で悩み続けたが、結果……とりあえず二人がぶつかる試合が心の底から楽しみだという結論に至った。
218
お気に入りに追加
6,106
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる