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二百八十四話 なんとなく、予想出来ていた
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「お待たせしました、アラッド」
「いえいえ、全然待ってませんよフィリアス様」
約束の十分前に喫茶店に到着したフィリアスは、護衛の一人と一緒に個室の中へ入ってきた。
「どうも、お久しぶりです。ディーネさん」
「あぁ、久しぶりだな。噂は色々と耳にしているよ」
フィリアス専用の女性騎士団のトップであるディーネは、アラッドが初めて出会った時と変わらない美しさを保っていた。
当然、実力に関しては今も上昇中。
そして二人が店に到着してから直ぐに紅茶とお菓子を持った店員が現れ、準備万端。
手紙に記してはいたが、まずは学園に入学するまでの出来事などに関して話し始め……それが終わる頃、フィリアスはここ最近で一番驚いたことを口にした。
「それにしても、アラッドが学園に入学したことは本当に驚きでした。お父様から色々と事情は聞いていましたが……またこうして王都で会えるとは思っていませんでした」
「は、ははは。まぁ、その……ちょっと無茶を頼んだ形と言いますか」
「あまり例がない形かもしれませんが、アラッドがこの国の騎士になってくれる。それだけであなたを特別扱いする意味があります」
「……そう思って頂けると幸いです」
フィリアスの後ろで黙って立っているディーネとしては、是非ともそのままアラッドには騎士団に入団してほしいという思いがあるが、それでもアラッドが騎士の爵位を授かる。
それだけで嬉しいという気持ちはあった。
そしてフィリアスもアラッドを褒める言葉に嘘偽りなど無い……が、その気があるならもっと早く教えてほしかったという思いがあった。
アラッドが学園に通う気が一切ない。
だからこそ、通う学園選びにそこまで気を使っていなかった。
恋心を抱いている……という訳ではないが、短い期間でもアラッドと学園生活を送ってみたかったという思いが、少なからずあった。
ただ、その思いをこの場で打ち明けることはなく、次の話題に移った。
「学園に入学してからは、その……どうでしょうか」
返事の手紙を受け取り、ある程度の事態は把握しているため、少々言葉選びに戸惑うフィリアス。
「レイやベルたちがいるので、孤立する事態は避けられました。ただ、やっぱり俺のことを気に入らないと思っている人は多いみたいで……でも、大騒ぎになるような問題は起きてないんで、問題はありませんよ」
入学初日に訓練場以外の場所で同級生と少々バトルしてしまったが、それ以降は色々と陰でこそこそ言われる日々は続いているが、それでも直接手を出してくる者はいない。
上級生たちも校内戦で戦うことになれば割と本気の戦意を超えて殺意を向けてくるが、それ以外の場所でアラッドを潰そうとはしない。
ちなみに、今のところアラッドは二年生や三年生とぶつかっても、全て数撃で仕留めている。
「……申し訳ありませんが、大会ではフローレンス・カルロストを討たせてもらいます」
お互いに学園に入学してからの近況も語り合い、そろそろ話すことがなくなろうとしたタイミングで、アラッドは自身の目標を伝えた。
「えぇ、勿論アラッドの目標は解っています」
フィリアスはフローレンスと同じ、パルディア学園に通っている。
フローレンスが公爵家の次女ということもあって、彼女のことは良く知っている。
フローレンス・カルロストは世間一般的に見て、決して悪人ではない。
寧ろ善人と呼ばれる側の人間。
普段表に出している光の裏に、同等の大きな闇が隠れている……といった、二面性を持つ者でもない。
超人格者である……ただ、アラッドが何を行っているかを知っているフィリアスは、なんとなくフローレンスのことを気に入っていない……寧ろ嫌いな部類であると予想していた。
(だからこそ、今の言葉に少し戦意が乗っていたのでしょうね)
同じ学園に所属し、二連覇を期待されている三年生の方を応援しなければないのは解っているが……それでも、フィリアスの中にアラッドの勝利を願う気持ちは確かにあった。
「勝てそうですか」
「勝ちますよ。俺は、フール・パーシブルの息子ですから」
「いえいえ、全然待ってませんよフィリアス様」
約束の十分前に喫茶店に到着したフィリアスは、護衛の一人と一緒に個室の中へ入ってきた。
「どうも、お久しぶりです。ディーネさん」
「あぁ、久しぶりだな。噂は色々と耳にしているよ」
フィリアス専用の女性騎士団のトップであるディーネは、アラッドが初めて出会った時と変わらない美しさを保っていた。
当然、実力に関しては今も上昇中。
そして二人が店に到着してから直ぐに紅茶とお菓子を持った店員が現れ、準備万端。
手紙に記してはいたが、まずは学園に入学するまでの出来事などに関して話し始め……それが終わる頃、フィリアスはここ最近で一番驚いたことを口にした。
「それにしても、アラッドが学園に入学したことは本当に驚きでした。お父様から色々と事情は聞いていましたが……またこうして王都で会えるとは思っていませんでした」
「は、ははは。まぁ、その……ちょっと無茶を頼んだ形と言いますか」
「あまり例がない形かもしれませんが、アラッドがこの国の騎士になってくれる。それだけであなたを特別扱いする意味があります」
「……そう思って頂けると幸いです」
フィリアスの後ろで黙って立っているディーネとしては、是非ともそのままアラッドには騎士団に入団してほしいという思いがあるが、それでもアラッドが騎士の爵位を授かる。
それだけで嬉しいという気持ちはあった。
そしてフィリアスもアラッドを褒める言葉に嘘偽りなど無い……が、その気があるならもっと早く教えてほしかったという思いがあった。
アラッドが学園に通う気が一切ない。
だからこそ、通う学園選びにそこまで気を使っていなかった。
恋心を抱いている……という訳ではないが、短い期間でもアラッドと学園生活を送ってみたかったという思いが、少なからずあった。
ただ、その思いをこの場で打ち明けることはなく、次の話題に移った。
「学園に入学してからは、その……どうでしょうか」
返事の手紙を受け取り、ある程度の事態は把握しているため、少々言葉選びに戸惑うフィリアス。
「レイやベルたちがいるので、孤立する事態は避けられました。ただ、やっぱり俺のことを気に入らないと思っている人は多いみたいで……でも、大騒ぎになるような問題は起きてないんで、問題はありませんよ」
入学初日に訓練場以外の場所で同級生と少々バトルしてしまったが、それ以降は色々と陰でこそこそ言われる日々は続いているが、それでも直接手を出してくる者はいない。
上級生たちも校内戦で戦うことになれば割と本気の戦意を超えて殺意を向けてくるが、それ以外の場所でアラッドを潰そうとはしない。
ちなみに、今のところアラッドは二年生や三年生とぶつかっても、全て数撃で仕留めている。
「……申し訳ありませんが、大会ではフローレンス・カルロストを討たせてもらいます」
お互いに学園に入学してからの近況も語り合い、そろそろ話すことがなくなろうとしたタイミングで、アラッドは自身の目標を伝えた。
「えぇ、勿論アラッドの目標は解っています」
フィリアスはフローレンスと同じ、パルディア学園に通っている。
フローレンスが公爵家の次女ということもあって、彼女のことは良く知っている。
フローレンス・カルロストは世間一般的に見て、決して悪人ではない。
寧ろ善人と呼ばれる側の人間。
普段表に出している光の裏に、同等の大きな闇が隠れている……といった、二面性を持つ者でもない。
超人格者である……ただ、アラッドが何を行っているかを知っているフィリアスは、なんとなくフローレンスのことを気に入っていない……寧ろ嫌いな部類であると予想していた。
(だからこそ、今の言葉に少し戦意が乗っていたのでしょうね)
同じ学園に所属し、二連覇を期待されている三年生の方を応援しなければないのは解っているが……それでも、フィリアスの中にアラッドの勝利を願う気持ちは確かにあった。
「勝てそうですか」
「勝ちますよ。俺は、フール・パーシブルの息子ですから」
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