上 下
277 / 1,012

二百七十七話 エール?

しおりを挟む
大会に出場するための校内戦が行われ、アラッドとレイのみ……個人戦に臨んだ。
ベルたち六人はタッグを組み、タッグ戦の校内戦に臨む。

(正直、アラッドと戦う人は度肝を抜かれることになるだろうけど、レイと戦う人も呆気にとられるというか、
困惑するだろうね)

既にエリザと組んで校内戦、一戦目を勝利で終えたベルはそろそろ始まるであろう、アラッドの戦いを見に来ていた。

「エリザは、どうなると思う?」

「そうですわね……基本的に、瞬殺で終わるでしょうね」

「僕も、他の生徒がアラッドとまともに戦えるとは思わないけど、そんなにあっさり終わらせるかな」

アラッドには、相手の力量を引き出してから倒す……そういった部分があるのを見抜いているベルは、アラッドがこれから行う一戦……多少は時間をかけて戦うのでは? と思っている。

「その考えも解らなくもないですけど、やっぱり私は一瞬で終わると思いますわ」

「まぁ、どちらにしろアラッドの勝ちは間違いないですね」

周囲で同じく校内戦を観ている同じ一年生、二年生や三年生からも鋭い視線を向けられているが、二人は全く気にしていなかった。

そして……いよいよアラッドの番となり、ステージに登場。
反対側からは同じ一年生ではなく、一学年上の二年生が現れた。

「一年にデカい顔させんなよ!!」

「ぶっ潰してやれ!!!」

「嘗められんじゃねぇぞ!!!」

主に二年生の男子生徒がアラッドとこれから戦う二年生にエール? を大量に送っている。

二年生としては、そう簡単に一年生に負けれないというプライドがあり……しかも、目の前の一年生は遊び感覚で騎士の爵位を得ようとしている。

当然、アラッドが侯爵家の三男など関係無く、大勢の者がアラッドの言葉、考えにキレていた。

「品がないわね……でも、この状況……どう考えてもアラッドがヒールね」

「それは仕方ないよ。アラッドの宣言や考えに思うところはある……ただ、それは国としてもそうなれば、有難い話。そしてアラッドには、それを実現させるだけの力がある」

これからアラッドと戦う二年生に激しいエールを送る者たちがいる中、二・三年生の極少数は、アラッドの常人とは違う何かに勘付いていた。

「それでは、ルールを守り……正々堂々と戦え。それでは、始め!!!!」

審判役の教師が開始の宣言をした瞬間、アラッドが動いた。
身体強化のスキルのみを使い、一応木剣に魔力は纏っている。

「……終わりみたいだな」

中段に構えていた対戦相手の剣ごと叩き切る様に、木剣を振るった。
振るう際に、特に技は使っていない。

単純に力任せに……最短距離を動き、対戦相手をフィールドの外に叩きだした。

一応フィールドの外に落ちても失格にはならないが、減点対象にはなる。
それでも、起き上がってフィールドに再び立つことは不可能ではないが……そもそも、今の一撃でアラッドの対戦相手は、完全に倒れてしまった。

「そこまで!!! 勝者、アラッド!!!」

自身が勝者となったことを確認したアラッドは特に表情を変えることはなく、軽い足取りでフィールドから降りた。

「……なんだ、あれは」

「一撃って、何かの間違いだろ」

「おい、立てよ!!! まだ始まったばかりだろ!!!」

アラッドに剣撃でぶっ飛ばされ、壁に激突した生徒は勿論、命に別状はない。
ただ、壁に吹き飛ばされて背中や後頭部に強い衝撃を受けた。

この生徒は数分後に保健室で目覚めるが、どうやって自分が一年生に倒されたのか、辛うじて覚えてはいた。
正直……嘗めていた部分はあった。
それでも、ここまであっさりと、完璧な敗北を受けるとは思っておらず、涙を流しながら歯を食いしばることになる。

「エリザの予想が正しかったみたいだね」

「ふふ、そうみたいね。当然の結果、予想通りの内容だけど……対戦相手は可哀想ね」

アラッドと校内戦でぶつかる。
これに関しては、不運としか言いようがなかった。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...