276 / 1,058
二百七十六話 個人戦だけで結構です
しおりを挟む
学生同士が戦う大会には、個人戦とタッグ戦がある。
魔法をメインで戦う学生たちの為に、個人戦に加えてタッグ戦が生まれた。
ルール的には個人戦で出場した学生がタッグ戦にも出場することは不可能ではないが、暗黙の了解として禁止されている。
パロスト学園の学園長としてはそんな暗黙の了解を打ち破って、アラッドに両方とも出てくれたら幸い……と考えていたが、それとなくSクラスの担任であるアレクがどうする? と尋ねたところ、あっさりと断った。
(俺がこの学園に入学したのは、フローレンス・カルロストを倒して優勝して騎士の爵位を手に入れる為。それ以上の何かをするつもりはない)
出場できる選手も一学園の中で、限りがある。
アラッドがタッグ戦に出場しようものなら、将来の為に騎士団や魔法師団にアピールしたい生徒のチャンスを潰すことになる。
ちなみに、タッグ戦に関しては片方が接近戦メインで戦う生徒、もう片方が魔法などの遠距離メインで戦う生徒と、完全に別れていなければならない。
「やはり、アラッドは個人戦に参加するのだな」
「えぇ、勿論。フローレンス・カルロストが出場するのも個人戦でしょうし……あまりタッグで戦うというのに慣れていませんので」
「……それは残念ね」
魔法をメインにして戦うヴェーラとしては、暗黙の了解を破ってでも是非、アラッドと組んでタッグ戦に出場したいと思っていた。
(でも、アラッドとタッグを組めば、あまり良くない評価を受けるかもしれない……仕方ない)
アラッドの存在がよろしくないと思っているのではなく、アラッドが強過ぎるのが問題無いのだ。
魔法、魔力といった点ではアラッドに劣っているとは思っていない。
ただ……総合力という点に関しては、全くアラッドに及ばない。
そんなアラッドと組んで大会に出たとしても、周りの評価はアラッドとタッグを組んだから優勝できた。
そうなる可能性が高い。
エリザとルーフもアラッドとタッグを組んでタッグの大会に出れたらと思っていたが、ヴェーラと同じ考えに至った。
「明日からだね」
「そうみたいだな。とはいっても、一年生が出場できる割合は高くないんだったか?」
「大会は学年関係無しだからね。普通はそうなんだけど、アラッドなら問題無いよ」
明日から個人戦に出場したいと志願した者たちは学年関係無しに、同じく志願した者たちと一対一の戦いを行う。
この戦いでは刃引きしていない武器を使うため、当然この戦いで負傷する者もいる。
学園に所属している回復専門の魔法使いの腕は非常に優れており、大抵の怪我は治せてしまう。
しかし、その戦いで擦り切れた精神力……消費したスタミナまでは戻らない。
模擬戦は一日に一回。
それが連続で十五回からニ十回ほど行われる。
その戦いを教師たちが正確に観察し、評価を付けていく。
勿論、途中で戦いを辞退することも可能だが、よっぽどの理由がなければ大会出場の権利を逃すことになる。
「ありがとな……まぁ、大会に出場する前にこけたりしたら、ダサ過ぎるもんな」
訓練場には一年生だけではなく、二年生や三年生たちもいる。
休憩時間に彼ら彼女たちを観察していたアラッドだが、正直負ける気が一ミリもない。
弱い……という訳ではない。
授業でも訓練を行い、授業が終わってからも己を高めるために自己訓練を同級生たちと行っている。
そんな才能ある努力家たちが弱いわけがない……ただ、実家で生活している時にガルシアや他の購入した戦闘奴隷たち、熟練の騎士たちと行った模擬戦を思い出すと……やはり物足りなさを感じる。
(……偶に耳に入る上級生たちは、この訓練場にはいないみたいだな)
二年生や三年生の中にも、レイやベルたちのように飛び抜けた実力を持つ者たちがいる。
アラッドは確認した上級生たちの戦力に、更に身体能力や技術……魔力が強化されたら、とも考えて脳内でイメージするが……それでも、大会出場前にこけるとは思えなかった。
「リオ、レイ。二対一でやらないか」
「……オッケー。やってやろうじゃんか」
「それもまたありだ。全力でいくぞ」
とはいえ、自信満々でも気を抜くアラッドではなく、数的不利の模擬戦を始めた。
魔法をメインで戦う学生たちの為に、個人戦に加えてタッグ戦が生まれた。
ルール的には個人戦で出場した学生がタッグ戦にも出場することは不可能ではないが、暗黙の了解として禁止されている。
パロスト学園の学園長としてはそんな暗黙の了解を打ち破って、アラッドに両方とも出てくれたら幸い……と考えていたが、それとなくSクラスの担任であるアレクがどうする? と尋ねたところ、あっさりと断った。
(俺がこの学園に入学したのは、フローレンス・カルロストを倒して優勝して騎士の爵位を手に入れる為。それ以上の何かをするつもりはない)
出場できる選手も一学園の中で、限りがある。
アラッドがタッグ戦に出場しようものなら、将来の為に騎士団や魔法師団にアピールしたい生徒のチャンスを潰すことになる。
ちなみに、タッグ戦に関しては片方が接近戦メインで戦う生徒、もう片方が魔法などの遠距離メインで戦う生徒と、完全に別れていなければならない。
「やはり、アラッドは個人戦に参加するのだな」
「えぇ、勿論。フローレンス・カルロストが出場するのも個人戦でしょうし……あまりタッグで戦うというのに慣れていませんので」
「……それは残念ね」
魔法をメインにして戦うヴェーラとしては、暗黙の了解を破ってでも是非、アラッドと組んでタッグ戦に出場したいと思っていた。
(でも、アラッドとタッグを組めば、あまり良くない評価を受けるかもしれない……仕方ない)
アラッドの存在がよろしくないと思っているのではなく、アラッドが強過ぎるのが問題無いのだ。
魔法、魔力といった点ではアラッドに劣っているとは思っていない。
ただ……総合力という点に関しては、全くアラッドに及ばない。
そんなアラッドと組んで大会に出たとしても、周りの評価はアラッドとタッグを組んだから優勝できた。
そうなる可能性が高い。
エリザとルーフもアラッドとタッグを組んでタッグの大会に出れたらと思っていたが、ヴェーラと同じ考えに至った。
「明日からだね」
「そうみたいだな。とはいっても、一年生が出場できる割合は高くないんだったか?」
「大会は学年関係無しだからね。普通はそうなんだけど、アラッドなら問題無いよ」
明日から個人戦に出場したいと志願した者たちは学年関係無しに、同じく志願した者たちと一対一の戦いを行う。
この戦いでは刃引きしていない武器を使うため、当然この戦いで負傷する者もいる。
学園に所属している回復専門の魔法使いの腕は非常に優れており、大抵の怪我は治せてしまう。
しかし、その戦いで擦り切れた精神力……消費したスタミナまでは戻らない。
模擬戦は一日に一回。
それが連続で十五回からニ十回ほど行われる。
その戦いを教師たちが正確に観察し、評価を付けていく。
勿論、途中で戦いを辞退することも可能だが、よっぽどの理由がなければ大会出場の権利を逃すことになる。
「ありがとな……まぁ、大会に出場する前にこけたりしたら、ダサ過ぎるもんな」
訓練場には一年生だけではなく、二年生や三年生たちもいる。
休憩時間に彼ら彼女たちを観察していたアラッドだが、正直負ける気が一ミリもない。
弱い……という訳ではない。
授業でも訓練を行い、授業が終わってからも己を高めるために自己訓練を同級生たちと行っている。
そんな才能ある努力家たちが弱いわけがない……ただ、実家で生活している時にガルシアや他の購入した戦闘奴隷たち、熟練の騎士たちと行った模擬戦を思い出すと……やはり物足りなさを感じる。
(……偶に耳に入る上級生たちは、この訓練場にはいないみたいだな)
二年生や三年生の中にも、レイやベルたちのように飛び抜けた実力を持つ者たちがいる。
アラッドは確認した上級生たちの戦力に、更に身体能力や技術……魔力が強化されたら、とも考えて脳内でイメージするが……それでも、大会出場前にこけるとは思えなかった。
「リオ、レイ。二対一でやらないか」
「……オッケー。やってやろうじゃんか」
「それもまたありだ。全力でいくぞ」
とはいえ、自信満々でも気を抜くアラッドではなく、数的不利の模擬戦を始めた。
235
お気に入りに追加
6,126
あなたにおすすめの小説


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる