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二百七十二話 丁寧に殺意を乗せて
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攻めて守る、回避するという行動を何度も繰り返し……三分ほどが経過した。
「アラッドの奴、遊んでるのか?」
「どうだろうね。遊んではいないと思うけど……もう十分だとは思うね」
二人の模擬戦を観戦しているSクラスの生徒たちは、二人の実力差を感じ取っていた。
リオは二人の模擬戦を観て、アラッドが少し遊び過ぎているのではと思ったが、隣で観戦しているベルはそうは思わなかった。
今回の模擬戦は、アラッドが騎士らしい戦い方を出来るか否かを見極めるためのもの。
その為、現在アラッドはベルたちの記憶に残っているアラッドらしい戦い方はしていない。
それでも……アラッドの動きにぎこちなさなどはなく、それらしい動きを完璧に行えている。
(何故だ、何故だ、何故だ!!!!)
現在……二人とも強化系のスキルは使用していない。
勿論、魔法を一度たりとも使っておらず、魔力も使っていない。
二人はマジックアイテムを身に付けておらず……模擬戦に使用しているのは、木剣。
その木剣に性能の差もない。
それにも拘わらず、アイガスはアラッドに対して有効打を一撃も入れることが出来ていない。
どんなに自分の中では最高と思える斬撃、刺突を繰り出すことが出来ても、全て躱すかガードされてしまう。
止められた斬撃を力で押し込もうとしても、自分の腕力ではアラッドを動かせない。
(あの体の、どこにそんな力があるというのだ!!!)
体格ではアイガスの方が勝っている。
しかし、本人も世の中体格だけが全てではない……レベルや使用するスキルによって、腕力の差は見た目では判断出来なくなる。
そんな事は今までの人生経験から理解している。
身近な例でいえば、同級生のレイがいる。
今でも彼女には腕力で……身体能力で勝てる自信がない。
それでも、自身の身体能力が並ではないと自負し、自信があった……故に、現在自分が体験している現実が信じられない。
(……ふざけるな!!!)
アラッドの攻撃もアイガスにクリーンヒットすることはないが、アイガス違って表情から余裕が消えることはない。
その表情を見ると、自分がアラッドの手のひらの上で躍らされている……そう錯覚せざるをえない。
そんな絶望を振り切るために、鬼気迫る表情で剣を振るうが、ここでタイムリミットが訪れた。
(もう良いだろう)
教師であるアレクに騎士らしい戦いを十分に見せられたと思い、ギアを一段階上げた。
その変化にアレクは対応出来ず、綺麗なカウンターを受けた。
正確には吹き飛ばされたり弾かれたりしていないが、首筋にそっと剣先を添えられた。
アラッドがその瞬間だけ丁寧に殺気を乗せたことで、アイガスは自分の首筋に突き付けられた物が、本物の刃先の様に感じ……体が震えた。
「そこまで、勝負ありだ」
「ッ…………」
色々と反論した気持ちをグッと堪え、アイガスはドラングたちの元に戻った。
「うん、結構良い感じに戦えてたね。騎士らしい戦い方も訓練してたのかい?」
「多少は……ただ、家に仕えてる騎士たちとも模擬戦してたんで、ある程度戦い方を覚えてたんで……多分、それなりに上手く戦えたんだと思います」
実際のところ、アラッドが騎士らしい戦い方を訓練し始めたのは、ここ半年の間。
それまでは色々と武器を変えながら……実戦では糸も使いながら、自由な動きで戦い続けてきた。
「なるほど、経験故に上手く出来たということか……流石だね」
軽くアラッドを褒めた後、アレクは次の授業内容を伝え、本格的に授業が始まった。
勿論、この授業の間、アラッドはアイガスやドラングたちと絡むことはなく、レイたちと一緒にアレクから伝えられた内容を行っていく。
(……クソが)
そんな授業中、ドラングの中には先程アイガスと戦っていたアラッドの姿が脳裏から離れなかった。
「アラッドの奴、遊んでるのか?」
「どうだろうね。遊んではいないと思うけど……もう十分だとは思うね」
二人の模擬戦を観戦しているSクラスの生徒たちは、二人の実力差を感じ取っていた。
リオは二人の模擬戦を観て、アラッドが少し遊び過ぎているのではと思ったが、隣で観戦しているベルはそうは思わなかった。
今回の模擬戦は、アラッドが騎士らしい戦い方を出来るか否かを見極めるためのもの。
その為、現在アラッドはベルたちの記憶に残っているアラッドらしい戦い方はしていない。
それでも……アラッドの動きにぎこちなさなどはなく、それらしい動きを完璧に行えている。
(何故だ、何故だ、何故だ!!!!)
現在……二人とも強化系のスキルは使用していない。
勿論、魔法を一度たりとも使っておらず、魔力も使っていない。
二人はマジックアイテムを身に付けておらず……模擬戦に使用しているのは、木剣。
その木剣に性能の差もない。
それにも拘わらず、アイガスはアラッドに対して有効打を一撃も入れることが出来ていない。
どんなに自分の中では最高と思える斬撃、刺突を繰り出すことが出来ても、全て躱すかガードされてしまう。
止められた斬撃を力で押し込もうとしても、自分の腕力ではアラッドを動かせない。
(あの体の、どこにそんな力があるというのだ!!!)
体格ではアイガスの方が勝っている。
しかし、本人も世の中体格だけが全てではない……レベルや使用するスキルによって、腕力の差は見た目では判断出来なくなる。
そんな事は今までの人生経験から理解している。
身近な例でいえば、同級生のレイがいる。
今でも彼女には腕力で……身体能力で勝てる自信がない。
それでも、自身の身体能力が並ではないと自負し、自信があった……故に、現在自分が体験している現実が信じられない。
(……ふざけるな!!!)
アラッドの攻撃もアイガスにクリーンヒットすることはないが、アイガス違って表情から余裕が消えることはない。
その表情を見ると、自分がアラッドの手のひらの上で躍らされている……そう錯覚せざるをえない。
そんな絶望を振り切るために、鬼気迫る表情で剣を振るうが、ここでタイムリミットが訪れた。
(もう良いだろう)
教師であるアレクに騎士らしい戦いを十分に見せられたと思い、ギアを一段階上げた。
その変化にアレクは対応出来ず、綺麗なカウンターを受けた。
正確には吹き飛ばされたり弾かれたりしていないが、首筋にそっと剣先を添えられた。
アラッドがその瞬間だけ丁寧に殺気を乗せたことで、アイガスは自分の首筋に突き付けられた物が、本物の刃先の様に感じ……体が震えた。
「そこまで、勝負ありだ」
「ッ…………」
色々と反論した気持ちをグッと堪え、アイガスはドラングたちの元に戻った。
「うん、結構良い感じに戦えてたね。騎士らしい戦い方も訓練してたのかい?」
「多少は……ただ、家に仕えてる騎士たちとも模擬戦してたんで、ある程度戦い方を覚えてたんで……多分、それなりに上手く戦えたんだと思います」
実際のところ、アラッドが騎士らしい戦い方を訓練し始めたのは、ここ半年の間。
それまでは色々と武器を変えながら……実戦では糸も使いながら、自由な動きで戦い続けてきた。
「なるほど、経験故に上手く出来たということか……流石だね」
軽くアラッドを褒めた後、アレクは次の授業内容を伝え、本格的に授業が始まった。
勿論、この授業の間、アラッドはアイガスやドラングたちと絡むことはなく、レイたちと一緒にアレクから伝えられた内容を行っていく。
(……クソが)
そんな授業中、ドラングの中には先程アイガスと戦っていたアラッドの姿が脳裏から離れなかった。
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