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二百七十一話 戦い方の確認
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意外と平和な日々が過ごせそう……なんてことを登校初日の間だけは考えていた。
しかし、翌日……通常通り授業が始まる。
授業には座学もあるが、当然実技もある。
実技の授業を担当するのは、勿論担任であるアレク。
そして魔法を専門とする生徒の為に、魔法をメインにして戦う教師が補佐に付く。
「さて、体がほぐれたところで本格的に授業を始める訳だけど……アラッド君、一応騎士の戦闘スタイル的なのは学んでいるかな」
アラッドが学生の枠を超える強さを持っているという情報は得ており、それが本当だということも実際に視て、把握している。
先日、訓練場でレイたちを相手に何度も何度も連続で模擬戦を行い、全てに勝利したという話も耳に入っている。
ただ……この学園は騎士、宮廷魔術師を育成する学園。
冒険者の道に進むアラッドであっても、一応騎士の戦い方などを叩きこまなければならない。
「先生、ここは実戦で確認する方がよろしいかと」
そう宣言した人物は、先日アラッドにあっさりと転ばされたアイガス・ナスト。
どう考えても、実戦という環境でアラッドを下すことしか考えてない目。
そんなアイガスの考えを一目で見抜くアレク。
(間違ってはいないけど、本当にアラッドがそういう戦い方が出来るのか確認……そんな考えで提案したわけじゃないよな)
悪い考えではないが、直ぐには決めあぐねる提案。
しかし、チラッとアラッドの方を見ると、全く困った表情をしていなかった。
(……噂だけど、本気のバイアード先輩と戦える力を秘めているらしいし……問題無いか)
因みにこの時、レイたちは全くアラッドのことを可哀そうと思ったり、道場の目を向けたりなどしていなかった。
寧ろ、ベルやリオ、マリアたちはこれからアラッドと戦うであろうアイガスに憐みの目を向けていた。
「それもそうだね。それじゃあ、アラッド君とアイガス君には模擬戦を行ってもらおう。アラッド君、この模擬戦は騎士としての戦い方が出来ているのかの確認だから、そこら辺を注意して動いてね」
「分かりました」
アレクの言葉を聞き、アイガスはニヤッと笑った。
(先日の不覚は武器を持っていなかったから。武器を持っていれば、自分が負けることはない。そこに、縛りが入れば自分の負けは絶対にあり得ない……なんて考えているのかな)
ベルの考えはまさにドンピシャ。
まさにアイガスは剣を持った自分なら、アラッドに負ける筈がないと考えていた。
(愚かだね……才なんてアドバンテージは、アラッドに対して関係無いというのに)
アイガスと同じく剣技の才を持つベルだが、剣技の才を持たないアラッドよりも剣技で大きく上回れているとは思っていない。
「それでは……あくまで、剣のみの模擬戦。そこを忘れないように……始め!!!」
「はぁぁああああああッ!!!!」
アレクが開始の合図を行ったと同時に、アイガスは気合入魂とばかり大きな声を張り上げ、アラッドに斬りかかった。
(思いっきり怒気が漏れてるな。若干殺気も混ざってるか? アレク先生がため息吐いてるのが見えてないのかこいつは……って、見えてるわけがないか)
今のアイガスは、この模擬戦で絶対にアラッドを下し、自分の方が上であり……アラッドがこの学園に在籍するのは相応しくないと証明することしか考えていない。
そんなアイガスに対し、アラッドは先日は測れなかったアイガスの戦力を冷静に測っていた。
(思い切りが良い斬撃。重心はぶれない……恵まれた体格の活かし方を理解している。ただ面倒な奴って訳じゃなくて、こいつはこいつなりに研鑽を重ねてきたんだろうな)
口先だけの人物ではない。
それは何度か剣を交えた結果、直ぐに解った。
(嘗めるな!!!!)
模擬戦中にアラッドの口角が上がったのが見え、アイガスの攻撃は更に苛烈さを増す。
だが、依然としてアラッドの表情は殆ど変わらなかった。
しかし、翌日……通常通り授業が始まる。
授業には座学もあるが、当然実技もある。
実技の授業を担当するのは、勿論担任であるアレク。
そして魔法を専門とする生徒の為に、魔法をメインにして戦う教師が補佐に付く。
「さて、体がほぐれたところで本格的に授業を始める訳だけど……アラッド君、一応騎士の戦闘スタイル的なのは学んでいるかな」
アラッドが学生の枠を超える強さを持っているという情報は得ており、それが本当だということも実際に視て、把握している。
先日、訓練場でレイたちを相手に何度も何度も連続で模擬戦を行い、全てに勝利したという話も耳に入っている。
ただ……この学園は騎士、宮廷魔術師を育成する学園。
冒険者の道に進むアラッドであっても、一応騎士の戦い方などを叩きこまなければならない。
「先生、ここは実戦で確認する方がよろしいかと」
そう宣言した人物は、先日アラッドにあっさりと転ばされたアイガス・ナスト。
どう考えても、実戦という環境でアラッドを下すことしか考えてない目。
そんなアイガスの考えを一目で見抜くアレク。
(間違ってはいないけど、本当にアラッドがそういう戦い方が出来るのか確認……そんな考えで提案したわけじゃないよな)
悪い考えではないが、直ぐには決めあぐねる提案。
しかし、チラッとアラッドの方を見ると、全く困った表情をしていなかった。
(……噂だけど、本気のバイアード先輩と戦える力を秘めているらしいし……問題無いか)
因みにこの時、レイたちは全くアラッドのことを可哀そうと思ったり、道場の目を向けたりなどしていなかった。
寧ろ、ベルやリオ、マリアたちはこれからアラッドと戦うであろうアイガスに憐みの目を向けていた。
「それもそうだね。それじゃあ、アラッド君とアイガス君には模擬戦を行ってもらおう。アラッド君、この模擬戦は騎士としての戦い方が出来ているのかの確認だから、そこら辺を注意して動いてね」
「分かりました」
アレクの言葉を聞き、アイガスはニヤッと笑った。
(先日の不覚は武器を持っていなかったから。武器を持っていれば、自分が負けることはない。そこに、縛りが入れば自分の負けは絶対にあり得ない……なんて考えているのかな)
ベルの考えはまさにドンピシャ。
まさにアイガスは剣を持った自分なら、アラッドに負ける筈がないと考えていた。
(愚かだね……才なんてアドバンテージは、アラッドに対して関係無いというのに)
アイガスと同じく剣技の才を持つベルだが、剣技の才を持たないアラッドよりも剣技で大きく上回れているとは思っていない。
「それでは……あくまで、剣のみの模擬戦。そこを忘れないように……始め!!!」
「はぁぁああああああッ!!!!」
アレクが開始の合図を行ったと同時に、アイガスは気合入魂とばかり大きな声を張り上げ、アラッドに斬りかかった。
(思いっきり怒気が漏れてるな。若干殺気も混ざってるか? アレク先生がため息吐いてるのが見えてないのかこいつは……って、見えてるわけがないか)
今のアイガスは、この模擬戦で絶対にアラッドを下し、自分の方が上であり……アラッドがこの学園に在籍するのは相応しくないと証明することしか考えていない。
そんなアイガスに対し、アラッドは先日は測れなかったアイガスの戦力を冷静に測っていた。
(思い切りが良い斬撃。重心はぶれない……恵まれた体格の活かし方を理解している。ただ面倒な奴って訳じゃなくて、こいつはこいつなりに研鑽を重ねてきたんだろうな)
口先だけの人物ではない。
それは何度か剣を交えた結果、直ぐに解った。
(嘗めるな!!!!)
模擬戦中にアラッドの口角が上がったのが見え、アイガスの攻撃は更に苛烈さを増す。
だが、依然としてアラッドの表情は殆ど変わらなかった。
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