268 / 1,023
二百六十八話 贔屓してるわけではない
しおりを挟む
(あの人が、担任の先生か)
教室に入ってきた一人の教師……その人の登場で、アラッド以外の全員の表情が強張った。
(強いな……鑑定は使えないけど、視なくても解る。実技試験の時戦った教師よりも強いのは確実だ)
自分が本気を出したら……勝てるのか?
そんな疑問がアラッドの頭に浮かんだ。
(おいおい……とんでもないね。まだ十五歳の学生なのに、僕にそんな目を向けるか……もう、現時点で一端の戦士……いや、一端なんて言葉は彼に失礼だね)
教室に現れたSクラスの担任教師……アレク・ランディードはアラッドの目が、戦闘者としての眼だと気付き、脳裏に学園長から伝えられた言葉を思い出した。
「すいません。こいつらが、俺がパロスト学園に入学してきた理由がどうも気に入らないようで……だから、文句があるなら掛かって来いと彼らに伝えました」
「なるほど。それで、今目の前の惨状が起きたと」
「その通りです」
「そうか……それなら仕方ないね。ただ、個人的には私闘を行う場合、決まられた場所で行ってほしい。教室は頑丈に作られてはいるけど、君レベルが本気を出すような場合があれば、壊れるてしまう可能性は十分あるからね」
アレクはアラッドの行動に対し、一切咎めることはなかった。
「あ、アレク先生!!! こいつの身勝手な行動を許しても良いのですか!!!」
「……確かに、彼は本来入学する生徒と比べて、随分珍しい理由で入学してきた。けどね、別に身勝手な行動ではないんだよ」
アイガスは、速攻で担任教師に自分の考えを否定されるとは思っておらず、衝撃で固まってしまった。
「アラッド君の入学試験は、他の生徒たちと同じく公平に行われた。実技試験なんか、最初の衝突でディート先生の木剣を折ったんだよ。凄いよね」
「先生、あの衝突では自分の木剣も折れました」
「そういばそうだね。でも、凄いことには変わりないよ」
アレクの言葉通りだった。
身体能力自慢のレイでも、入試の実技試験を行う際、担当してもらった教師の木剣を折ることなど出来なかった。
レイが入学した歳は十二歳であり、アラッドは十五歳。
歳の差を考えれば仕方ない……そう思うかもしれないが、この結果にはレイ以外も全員衝撃を受けていた。
(その噂もチラッと聞いたけど……やっぱりとんでもねぇな、アラッド。担当していた教師に、そこまで本気を出させたってことだもんな。相変わらず色々とぶっ飛んでるな)
(やっぱりアラッドは色々とおかしい……でも、そこが面白い)
リオ、ヴェーラだけではなく、他のメンバーもアラッドの凄さに感心。
ただ……アラッドという存在が気に入らない者たちにとっては、そう簡単に信じられない事実。
「とにかく、アラッド君の目的を学園長は了承している。だから、本来君たちは学園長に文句を言わなければならないんだよ」
アレクが口にした内容は、一ミリも間違っていないが……それを十五歳の子供たちが納得出来るかどうかは、別の話。
そんなことはアレクも解ってはいるが、断言しておかなければならない。
「なのに、アラッド君はわざわざ君たちの文句を吐き出し、事実を覆すチャンスをくれた……って、流れだよね」
実際に見ていた訳ではないので、確信はないため……チラッとアラッドの方に目を向ける。
ちょっと心配そうな顔をしているアレクに対し、アラッドはそうですと頷いた。
「だから本来は、チャンスをくれてありがとうございます、って言うべき立場なんだよ」
アラッドを贔屓している訳ではなく、ただただ事実だけを述べるアレク。
「そして、君たちはそのチャンスをものに出来なかった……というわけで、Sクラスの生徒じゃない者たちは自分のクラスに早く戻りなさい。今回だけは罰も何もない……今回はね」
次はないよ。
そう最後に口にしたアレクだが、この中で何人の生徒が理解出来ているだろうか……ひとまず、朝一の騒ぎはここで終了した。
教室に入ってきた一人の教師……その人の登場で、アラッド以外の全員の表情が強張った。
(強いな……鑑定は使えないけど、視なくても解る。実技試験の時戦った教師よりも強いのは確実だ)
自分が本気を出したら……勝てるのか?
そんな疑問がアラッドの頭に浮かんだ。
(おいおい……とんでもないね。まだ十五歳の学生なのに、僕にそんな目を向けるか……もう、現時点で一端の戦士……いや、一端なんて言葉は彼に失礼だね)
教室に現れたSクラスの担任教師……アレク・ランディードはアラッドの目が、戦闘者としての眼だと気付き、脳裏に学園長から伝えられた言葉を思い出した。
「すいません。こいつらが、俺がパロスト学園に入学してきた理由がどうも気に入らないようで……だから、文句があるなら掛かって来いと彼らに伝えました」
「なるほど。それで、今目の前の惨状が起きたと」
「その通りです」
「そうか……それなら仕方ないね。ただ、個人的には私闘を行う場合、決まられた場所で行ってほしい。教室は頑丈に作られてはいるけど、君レベルが本気を出すような場合があれば、壊れるてしまう可能性は十分あるからね」
アレクはアラッドの行動に対し、一切咎めることはなかった。
「あ、アレク先生!!! こいつの身勝手な行動を許しても良いのですか!!!」
「……確かに、彼は本来入学する生徒と比べて、随分珍しい理由で入学してきた。けどね、別に身勝手な行動ではないんだよ」
アイガスは、速攻で担任教師に自分の考えを否定されるとは思っておらず、衝撃で固まってしまった。
「アラッド君の入学試験は、他の生徒たちと同じく公平に行われた。実技試験なんか、最初の衝突でディート先生の木剣を折ったんだよ。凄いよね」
「先生、あの衝突では自分の木剣も折れました」
「そういばそうだね。でも、凄いことには変わりないよ」
アレクの言葉通りだった。
身体能力自慢のレイでも、入試の実技試験を行う際、担当してもらった教師の木剣を折ることなど出来なかった。
レイが入学した歳は十二歳であり、アラッドは十五歳。
歳の差を考えれば仕方ない……そう思うかもしれないが、この結果にはレイ以外も全員衝撃を受けていた。
(その噂もチラッと聞いたけど……やっぱりとんでもねぇな、アラッド。担当していた教師に、そこまで本気を出させたってことだもんな。相変わらず色々とぶっ飛んでるな)
(やっぱりアラッドは色々とおかしい……でも、そこが面白い)
リオ、ヴェーラだけではなく、他のメンバーもアラッドの凄さに感心。
ただ……アラッドという存在が気に入らない者たちにとっては、そう簡単に信じられない事実。
「とにかく、アラッド君の目的を学園長は了承している。だから、本来君たちは学園長に文句を言わなければならないんだよ」
アレクが口にした内容は、一ミリも間違っていないが……それを十五歳の子供たちが納得出来るかどうかは、別の話。
そんなことはアレクも解ってはいるが、断言しておかなければならない。
「なのに、アラッド君はわざわざ君たちの文句を吐き出し、事実を覆すチャンスをくれた……って、流れだよね」
実際に見ていた訳ではないので、確信はないため……チラッとアラッドの方に目を向ける。
ちょっと心配そうな顔をしているアレクに対し、アラッドはそうですと頷いた。
「だから本来は、チャンスをくれてありがとうございます、って言うべき立場なんだよ」
アラッドを贔屓している訳ではなく、ただただ事実だけを述べるアレク。
「そして、君たちはそのチャンスをものに出来なかった……というわけで、Sクラスの生徒じゃない者たちは自分のクラスに早く戻りなさい。今回だけは罰も何もない……今回はね」
次はないよ。
そう最後に口にしたアレクだが、この中で何人の生徒が理解出来ているだろうか……ひとまず、朝一の騒ぎはここで終了した。
228
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる
朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。
彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる