267 / 1,058
二百六十七話 悪夢を思い出す
しおりを挟む
「ほら、どうした。もしかして……剣がないから戦えない、なんて腑抜けたことを口にするつもりか?」
アラッドが軽く煽ると、アイガスを筆頭に……多くの生徒がアラッドに対してブチ切れた。
「ッ!!!」
怒鳴り声を上げることはなく……それでも怒気を抑えることなくアイガスはアラッドに向かって殴り掛かった。
(へぇ、剣だけって訳じゃないんだな)
アイガスの動きから、ある程度素手の状態でも動けることを把握。
とはいえ、普段からガルシアたちと模擬戦を行っているアラッドからすれば、遅い。
「なにッ!?」
渾身の右ストレートを片手で受け止められた事実に驚きを隠せない。
「どうした、それで終わりか?」
「くっ、ふざけるな!!!」
強化系スキルなどを発動し、力で押し切ろうとするアイガス。
しかし、アラッドも一応身体強化のスキルだけ発動。
「どうした、お前たちも俺が学園と契約した内容に文句があるんだろ。こいよ」
余っている手で手招きすると、当然教室の外にいた生徒たちがぞろぞろと中に入ってくる。
「強引な手段だね……アラッド、あまり虐めては駄目だよ」
「分かってる。安心しろ、ベル。ちゃんと手加減する」
二人の会話を耳にし、余計に怒りのボルテージが上がる他クラスの生徒たち。
そんな同級生の反応をよそに、ベルたちはやれやれといった表情でアラッドの周りから離れ、教室の壁側で待機。
そして多数の生徒たちが一斉にアラッドを襲おうとしたが……地面を蹴った生徒たちは、全員思いっきり転び、顔面を床に強打した。
「いっ!?」
「がっ!? あ、足が」
「ど、どういうことだ」
一人だけではなく、多くの生徒が一度に転んだ現象に驚きを隠せない他クラスの生徒たちだが、そんな中……未だにアイガスはアラッドは力で押そうとしていた。
「ぬぅぅぅああああああああっ!!!!」
「悪くはないけど……でも、それまでのラインって感じだな。お前、レイ嬢より力弱いだろ」
「っ!?」
「だったら、力勝負で俺に勝つのは多分難しいと思うぞ」
アラッドがアイガスに軽口を叩いている間も、AクラスやBクラスの生徒たちがアラッドに殴り掛かろうとしているが、周囲の動きを完全に把握しているアラッドはそれらを全て糸で対処していた。
「な、なんなんだよこれ!!!」
「おわっ!?」
「ぐげっ!」
「ち、近寄れねぇよ」
アラッドに近寄って殴り掛かろうとすれば、見えない力で転がされる。
もっと冷静になって、感覚を研ぎ澄ませれば学生でも、アラッドが何をしているのか見える。
確かにアラッドが生み出す糸は細いが、絶対に見えない細さではない。
ただ……怒りに身を任せて動く生徒たちは、自分たちを転がす力の正体が解らない。
(もういいかな)
アラッドはアイガスの自分を押そうとする力を利用し、転ばせた。
「うおっ!?」
そしてアイガスが地面に転んだ直後、少し強めに顔の横を踏みつけた。
「っ!?」
「これが当たってたら、お前は多分意識を失ってただろうから、俺の勝ちで良いよな」
仮にアラッドが踏みつけをわざと外していなければ、頭蓋骨を砕いて殺していた可能性がある。
「それで……先に言っておくけど、お前らがころころと転んだ要因は、俺の糸の力だ。一人ぐらいは、俺が授かったスキルが糸ってのを知ってるだろ」
この場にそれを知る者はベルたち以外にそれなりの人数がいた。
当時の場面を覚えている者も数人いた。
だが……それ以降、アラッドが公の場で糸を使うことはなかった。
それ故に、令息たちは忘れていたのだ。
その糸が……アラッドに下手に絡んだ令息が、どういった恥を与えたのかを。
「後、その糸でお前らの体を切断することも出来た。この意味……解るよな」
「「「「「「っ!!!」」」」」」
アラッドに何度も転ばされた生徒たちは、背筋が凍る……そんな感覚を、リアルに体験した。
本人がその気なら……自分たちに手足を切断していた。
そう宣言され、外聞など関係無しに震える者も現れた。
「……これはいったいどういうことなんだい?」
ここで、ようやくSクラスの担任教師が現れた。
アラッドが軽く煽ると、アイガスを筆頭に……多くの生徒がアラッドに対してブチ切れた。
「ッ!!!」
怒鳴り声を上げることはなく……それでも怒気を抑えることなくアイガスはアラッドに向かって殴り掛かった。
(へぇ、剣だけって訳じゃないんだな)
アイガスの動きから、ある程度素手の状態でも動けることを把握。
とはいえ、普段からガルシアたちと模擬戦を行っているアラッドからすれば、遅い。
「なにッ!?」
渾身の右ストレートを片手で受け止められた事実に驚きを隠せない。
「どうした、それで終わりか?」
「くっ、ふざけるな!!!」
強化系スキルなどを発動し、力で押し切ろうとするアイガス。
しかし、アラッドも一応身体強化のスキルだけ発動。
「どうした、お前たちも俺が学園と契約した内容に文句があるんだろ。こいよ」
余っている手で手招きすると、当然教室の外にいた生徒たちがぞろぞろと中に入ってくる。
「強引な手段だね……アラッド、あまり虐めては駄目だよ」
「分かってる。安心しろ、ベル。ちゃんと手加減する」
二人の会話を耳にし、余計に怒りのボルテージが上がる他クラスの生徒たち。
そんな同級生の反応をよそに、ベルたちはやれやれといった表情でアラッドの周りから離れ、教室の壁側で待機。
そして多数の生徒たちが一斉にアラッドを襲おうとしたが……地面を蹴った生徒たちは、全員思いっきり転び、顔面を床に強打した。
「いっ!?」
「がっ!? あ、足が」
「ど、どういうことだ」
一人だけではなく、多くの生徒が一度に転んだ現象に驚きを隠せない他クラスの生徒たちだが、そんな中……未だにアイガスはアラッドは力で押そうとしていた。
「ぬぅぅぅああああああああっ!!!!」
「悪くはないけど……でも、それまでのラインって感じだな。お前、レイ嬢より力弱いだろ」
「っ!?」
「だったら、力勝負で俺に勝つのは多分難しいと思うぞ」
アラッドがアイガスに軽口を叩いている間も、AクラスやBクラスの生徒たちがアラッドに殴り掛かろうとしているが、周囲の動きを完全に把握しているアラッドはそれらを全て糸で対処していた。
「な、なんなんだよこれ!!!」
「おわっ!?」
「ぐげっ!」
「ち、近寄れねぇよ」
アラッドに近寄って殴り掛かろうとすれば、見えない力で転がされる。
もっと冷静になって、感覚を研ぎ澄ませれば学生でも、アラッドが何をしているのか見える。
確かにアラッドが生み出す糸は細いが、絶対に見えない細さではない。
ただ……怒りに身を任せて動く生徒たちは、自分たちを転がす力の正体が解らない。
(もういいかな)
アラッドはアイガスの自分を押そうとする力を利用し、転ばせた。
「うおっ!?」
そしてアイガスが地面に転んだ直後、少し強めに顔の横を踏みつけた。
「っ!?」
「これが当たってたら、お前は多分意識を失ってただろうから、俺の勝ちで良いよな」
仮にアラッドが踏みつけをわざと外していなければ、頭蓋骨を砕いて殺していた可能性がある。
「それで……先に言っておくけど、お前らがころころと転んだ要因は、俺の糸の力だ。一人ぐらいは、俺が授かったスキルが糸ってのを知ってるだろ」
この場にそれを知る者はベルたち以外にそれなりの人数がいた。
当時の場面を覚えている者も数人いた。
だが……それ以降、アラッドが公の場で糸を使うことはなかった。
それ故に、令息たちは忘れていたのだ。
その糸が……アラッドに下手に絡んだ令息が、どういった恥を与えたのかを。
「後、その糸でお前らの体を切断することも出来た。この意味……解るよな」
「「「「「「っ!!!」」」」」」
アラッドに何度も転ばされた生徒たちは、背筋が凍る……そんな感覚を、リアルに体験した。
本人がその気なら……自分たちに手足を切断していた。
そう宣言され、外聞など関係無しに震える者も現れた。
「……これはいったいどういうことなんだい?」
ここで、ようやくSクラスの担任教師が現れた。
236
お気に入りに追加
6,127
あなたにおすすめの小説


追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる