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二百六十三話 本人は気付いていないが

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アラッドたちは王都に到着し、その日はゆっくりと過ごし……翌日にはアラッド、シルフィー、アッシュの三人はパロスト学園の制服に着替えた。

「アラッド兄さん、どうかしら?」

「似合ってるぞ、シルフィー。アッシュもな」

「そうですか? ちょっとぶかぶかで……変な感じです」

「はは、それは仕方ない」

アラッドはもう、殆ど身長は伸びきったので、制服のサイズはほぼピッタリな状態。

しかし、シルフィーとアッシュの制服は今後の成長を考え、ピッタリなサイズよりも大きくなっている。
因みにアラッドの身長は百八十を超えており、悪人顔な面もあって……アラッドは自分が思っている以上に、見た目だけでも異性の視線を集めるよう外見に成長していた。

「アラッド兄さんも似合ってるね!」

「そうか? まぁ……変ではないと思うけど」

部屋の鏡で自身の制服姿を見るアラッド。

見た目は高校生なので、制服を着ていてもおかしくない……というのは、自分でも分かっている。
だが……中身は前世を含めれば、重ねた年齢は三十を超えている。

そんな自分が制服を着ている……その現状に、やはり小さな違和感を感じる。

(でも、この制服を着るのも三か月だけの我慢だ)

パロスト学園の入試を終えて首席での合格が決まり、家に帰ってからアラッドは戦って戦って戦いまくった。
勿論、錬金術の訓練や……貴族たちから依頼された、キャバリオンの制作を怠ってはいない。

ただ……入学するまでの約二か月間、戦闘面での強化に力を使った。

そのお陰で屋敷でアラッドと生活するようになってから強くなったガルシアたちにも、模擬戦でそれなりに勝てるようになった。

他学園のトップ……現時点で、学生最強であるフローレンス・カルロストもかなりの化け物であることは調べた。
とはいえ、アラッド的にはあまり好きな人物ではなかった。

倒すべき相手が人間的に好きな人物ではない……そうなれば、一般的な対人戦では湧いてこないエネルギーも湧いてくるというもの。
慢心し過ぎてはいないが、今からフローレンス・カルロストと対峙し……負ける気がなかった。

「三人とも、行くよ」

「「「はい」」」

馬車に乗り込み、寄り道せずパロスト学園へ向かう。

入学式に関しては、三人ともフールに目立つから着いて来ないでくれ、なんて悲しいことは言えない。

(親にとって、子供が学園に入学する姿ってのは一生ものだろうし……さすがに言えないよな)

その想いはシルフィーとアッシュもなんとなく察し、二人とも特に苦言を呈さなかった。

そしてパロスト学園に多数の馬車が集まる中、そこにアラッドたちも混ざり、到着したので馬車から降りる。

「あれは……ん? どういうことだ」

「フール様、本当にカッコいいわ」

「あの子は……何故学園にいるのだ?」

「あの話は本当だったのか」

アラッドたちが馬車から降りたことで、一気に視線が集まってくる。

(ちょっと鬱陶しいが、文句言ってたらきりがない)

今まで視線が集まるという状況は何度も体験してきた。

何チラチラ見てんだ!!!! なんて、チンピラみたいなセリフが吐ける立場ではない。
なのでひたすら我慢して案内される場所に向かい……体育館の様な場所に到着。

(……早く終わって欲しいな)

中等部と高等部もあるので、合同で入学式は行われる。
ちなみに、中等部から高等部に内部進学する生徒は参加しない。

入学式と言えば……超長い。
そんなイメージが強いアラッド。

だが、そんなイメージは直ぐに消滅。
バイアードと親友である学園長から五分ほどのお言葉を受け、次に今年からパロスト学園の教師として働く教師が紹介され、中等部の新入生代表として……アッシュが壇上で挨拶を行った。

(何度も社交界に参加してるからか、意外と緊張してないな)

堂々とした……しかし、あまり覇気がない挨拶が行われ、入学式は終了した。
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