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二百五十五話 言いたいことは伝わった
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アラッドたちは王都に着いた翌日、直ぐに試験……という訳ではなく、最後に座学の内容を最終確認し、冒険者ギルドの訓練場で軽く体を動かして実技の確認を行う。
その間、アラッドは……ほんの少しだけ、王都を観光したいという思いがあった。
とはいえ妹と弟が絶対に落ちないように……片方は結果で上位に食い込もうと必死に頑張っている。
アラッドもフールの息子として恥じない結果を出したいとは思っているので、一人だけ自由に行動することは控えた。
「…………」
「シルフィー、緊張してるのか?」
「そ、それは……はい、緊張してます」
馬車で試験会場となる学園に向かう中、そこにはいつもの勝気なシルフィーはいなかった。
(珍しく弱っているというか、自信無さげというか……初のモンスター狩りでも怯えた様子は一切なかったのに……緊張してるのは、シルフィーだけじゃないみたいだな)
シルフィーもモンスターの中身を見た時はアラッドやレイと同じく吐いてしまったが、モンスターとの初バトルで一切臆さなかったのは事実。
ただ、これからパロスト学園を受ける時というタイミングで、かなりガチガチに緊張していた。
それはアッシュも同じく、いつも以上に口数が少なくなっている。
というか、完全に無口。
「あ、アラッド兄さんは、緊張しないんですか?」
「俺は……多少は緊張してるけど、そんなにテンションがガタ落ちするほど緊張はしてないかな」
絶対に好成績で……首席で入学しようと思ているので、一ミリも緊張してないとは言えない。
しかし、自分でもちょっと驚くぐらい余裕を持てている。
「……俺は、時間は短かったかもしれないけど、パロスト学園に首席で入学しようと頑張った。手を抜くことなく、真面目に頑張り続けた。それは二人も同じだろ」
シルフィーとアッシュは過去を思い出し、ゆっくりと頷いた。
「そうだろ。俺もお前たち二人が頑張ってるところは見てきた」
二人は元々王都の学園の中等部に入学する予定だったので、アラッドより圧倒的に早い段階で準備を始めていた。
「他の令息、令嬢たちも努力してるとは思うが、俺は二人が一番努力してると思ってる」
二人が一番というのは言葉的におかしいが、それでもシルフィーとアッシュは兄が自分たちに何を伝えたいのか、なんとなく理解出来た。
「だから、下を見る必要はない。お前たちは絶対に合格できる……それでも本番になってまだ緊張するなら、今まで自分が頑張ってきた過去を思い出して、一つ深呼級するんだ」
「……分かりました!!!」
「ベストを尽くします」
二人の熱に多少の差はあれど、アラッドはシルフィーとアッシュの心が燃え上がるのを感じ、もう心配はいらないと思った。
そしてついにパロスト学園に到着。
学園には既に多くの令息令嬢が集まっており、アラッドと二人はそこで別れた。
アラッドは案内を行っている教師の指示に従い、まずは座学の試験会場に向かう。
「おい、あいつって……」
「見たことあるような……でも、なんでここに?」
「冒険者になるって聞いてたけど」
「なんか、機嫌悪そうだね」
教師に案内されて進む中、当然アラッドは独りボッチ。
今まで何度か社交界には参加したが、それでも絡むのはいつもの面子のみ。
その面子であるレイたちが中等部に入学してからは、社交界に参加することはなく……貴族界で、アラッドに会ってみたいと思った者とのみ、個人的に会うようにしていた。
(こういう顔つきだ)
アラッドは十五歳になり……フールとアリサの遺伝子を受け継いでいるので、容姿レベルは高い。
だが……やはり悪人顔なのは変わらない。
しかし、フールのことを知っている者たちがアラッドの顔を見ると、楽しそうに笑いながらフールにそっくりだと口にする。
(ピリピリしてるな……誰も絡んで来ないのは、非常に有難いな)
もしかしたらと少々考えていたが、大事な試験までの間に絡んでくるバカはさすがにいなかった。
その間、アラッドは……ほんの少しだけ、王都を観光したいという思いがあった。
とはいえ妹と弟が絶対に落ちないように……片方は結果で上位に食い込もうと必死に頑張っている。
アラッドもフールの息子として恥じない結果を出したいとは思っているので、一人だけ自由に行動することは控えた。
「…………」
「シルフィー、緊張してるのか?」
「そ、それは……はい、緊張してます」
馬車で試験会場となる学園に向かう中、そこにはいつもの勝気なシルフィーはいなかった。
(珍しく弱っているというか、自信無さげというか……初のモンスター狩りでも怯えた様子は一切なかったのに……緊張してるのは、シルフィーだけじゃないみたいだな)
シルフィーもモンスターの中身を見た時はアラッドやレイと同じく吐いてしまったが、モンスターとの初バトルで一切臆さなかったのは事実。
ただ、これからパロスト学園を受ける時というタイミングで、かなりガチガチに緊張していた。
それはアッシュも同じく、いつも以上に口数が少なくなっている。
というか、完全に無口。
「あ、アラッド兄さんは、緊張しないんですか?」
「俺は……多少は緊張してるけど、そんなにテンションがガタ落ちするほど緊張はしてないかな」
絶対に好成績で……首席で入学しようと思ているので、一ミリも緊張してないとは言えない。
しかし、自分でもちょっと驚くぐらい余裕を持てている。
「……俺は、時間は短かったかもしれないけど、パロスト学園に首席で入学しようと頑張った。手を抜くことなく、真面目に頑張り続けた。それは二人も同じだろ」
シルフィーとアッシュは過去を思い出し、ゆっくりと頷いた。
「そうだろ。俺もお前たち二人が頑張ってるところは見てきた」
二人は元々王都の学園の中等部に入学する予定だったので、アラッドより圧倒的に早い段階で準備を始めていた。
「他の令息、令嬢たちも努力してるとは思うが、俺は二人が一番努力してると思ってる」
二人が一番というのは言葉的におかしいが、それでもシルフィーとアッシュは兄が自分たちに何を伝えたいのか、なんとなく理解出来た。
「だから、下を見る必要はない。お前たちは絶対に合格できる……それでも本番になってまだ緊張するなら、今まで自分が頑張ってきた過去を思い出して、一つ深呼級するんだ」
「……分かりました!!!」
「ベストを尽くします」
二人の熱に多少の差はあれど、アラッドはシルフィーとアッシュの心が燃え上がるのを感じ、もう心配はいらないと思った。
そしてついにパロスト学園に到着。
学園には既に多くの令息令嬢が集まっており、アラッドと二人はそこで別れた。
アラッドは案内を行っている教師の指示に従い、まずは座学の試験会場に向かう。
「おい、あいつって……」
「見たことあるような……でも、なんでここに?」
「冒険者になるって聞いてたけど」
「なんか、機嫌悪そうだね」
教師に案内されて進む中、当然アラッドは独りボッチ。
今まで何度か社交界には参加したが、それでも絡むのはいつもの面子のみ。
その面子であるレイたちが中等部に入学してからは、社交界に参加することはなく……貴族界で、アラッドに会ってみたいと思った者とのみ、個人的に会うようにしていた。
(こういう顔つきだ)
アラッドは十五歳になり……フールとアリサの遺伝子を受け継いでいるので、容姿レベルは高い。
だが……やはり悪人顔なのは変わらない。
しかし、フールのことを知っている者たちがアラッドの顔を見ると、楽しそうに笑いながらフールにそっくりだと口にする。
(ピリピリしてるな……誰も絡んで来ないのは、非常に有難いな)
もしかしたらと少々考えていたが、大事な試験までの間に絡んでくるバカはさすがにいなかった。
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