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二百五十二話 最短距離で
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フールとバイアードが話していた場所は、防音機能がない客間。
故に……偶々通りかかったアラッドの耳には二人の会話がバッチリ聞こえていた。
そして何を思ったか、アラッドはドアをノック。
フールの許可が降り……部屋の中に入った。
「アラッド……どうしたんだい?」
バイアードとは既に挨拶を交わしているので、バイアードもアラッドが何故部屋に入ってきたのか予想出来なかった。
ただ、フールだけは今自分たちがいる部屋は、防音機能がないことを思い出した。
「父さん、最短距離で騎士に……騎士の爵位を取れる方法ってありますか」
フールが言葉を口にする前に、アラッドが自分の考えを口にした。
全く予想していなかった発言にバイアードを驚き固まった。
心底驚いたが、それでも直ぐに表情は好奇に変化。
しかし、フールは別だった。
「あ、アラッド。その……さっきの僕の言葉は、ただの願望というか……アラッドが無理をする必要はないんだよ」
確かに心の奥底には、アラッドが騎士になってくれた方が嬉しいという気持ちはある。
だが……そんな自分の考えで、息子の未来を縛りたくはない。
そんなフールに、アラッドは問題無いと答えた。
「父さん、俺は騎士の道に進むつもりはありません。ただ、騎士という地位は手に入れようと思っただけです」
騎士になったとしても騎士団に所属して騎士道を歩むつもりはない。
アラッドはハッキリと宣言した。
その言葉に、バイアードは豪快に笑った。
「はっはっはっはっは!!! なるほど……確かに、それを行うのは無理ではない」
バイアードの記憶には、騎士の爵位を持つ冒険者が何人かいた。
つまり、騎士の爵位を持ちながらも冒険者として活動することは可能。
普通に考えれば順番は逆だが、それはそれでありだとバイアードは考えた。
フールも息子の考えが納得出来た。
納得出来たが、何故急にそうしようと思ったのか謎だった。
「そ、そうですね。無理ではありませんが……アラッド、何故急にそうしようと思ったんだい」
「……騎士の爵位持ちの冒険者もありだなと思ったんで」
悩んだ時間はわずか二秒。
それらしい考えを出したつもりだが、普通に考えて……そんな事を考える者は少ない。
「はっはっは!! 確かにカッコ良いだろう。しかし最短距離で、か……」
騎士とは王都の学園の騎士科を卒業し、入団試験に合格した者だけが騎士と名乗れる。
特例も存在するが、基本的にはまず……学園に通わなければならない。
「アラッド、その最短距離というのは、どれぐらいの期間なんだ?」
「……半年ですね」
六か月。
それ以上の時間を使うつもりはない。
「半年か……ふふ、アラッド。半年の半分で、それを達成できるチャンスがあるぞ」
「本当ですか!?」
バイアードからまさかの情報を聞き、アラッドとフールは目を輝かせる。
「今年、王都の学園の高等部二年に所属する令嬢がいるんだが……これまた、学生の枠を超えた強さを持っている」
転生者であるアラッドは子供の頃から一般的には考えられない生活を送り、その域に達している。
だが……転生者でなくとも、その域に達する者はごく自然に現れる。
「勿論他にもそういった生徒たちはいるようだが、その令嬢はそういった連中の中でも群を抜いて強い。なんせ、現時点で他の学園の三年生も含めて頂点に立ってるからな」
「つまり、学生の中で最強の存在という事ですね」
「その通りだ」
他学園にも学生の枠を超えた生徒は存在するが、それでもその令嬢は公式戦で今年は負けなし。
前年度も学生による大会で、あと一歩のところで優勝というとこまで上り詰めている。
「その令嬢は、既に学園を卒業したら騎士になることが確定している」
「……つまり、その令嬢を公式な場で倒せば、直ぐに騎士の爵位を手に入れることが出来る。という事ですね」
「そういうことだ」
普通はそう簡単にいかない部分があるのだが……アラッドの場合は、少し事情が違い、それを可能に出来る力があった。
故に……偶々通りかかったアラッドの耳には二人の会話がバッチリ聞こえていた。
そして何を思ったか、アラッドはドアをノック。
フールの許可が降り……部屋の中に入った。
「アラッド……どうしたんだい?」
バイアードとは既に挨拶を交わしているので、バイアードもアラッドが何故部屋に入ってきたのか予想出来なかった。
ただ、フールだけは今自分たちがいる部屋は、防音機能がないことを思い出した。
「父さん、最短距離で騎士に……騎士の爵位を取れる方法ってありますか」
フールが言葉を口にする前に、アラッドが自分の考えを口にした。
全く予想していなかった発言にバイアードを驚き固まった。
心底驚いたが、それでも直ぐに表情は好奇に変化。
しかし、フールは別だった。
「あ、アラッド。その……さっきの僕の言葉は、ただの願望というか……アラッドが無理をする必要はないんだよ」
確かに心の奥底には、アラッドが騎士になってくれた方が嬉しいという気持ちはある。
だが……そんな自分の考えで、息子の未来を縛りたくはない。
そんなフールに、アラッドは問題無いと答えた。
「父さん、俺は騎士の道に進むつもりはありません。ただ、騎士という地位は手に入れようと思っただけです」
騎士になったとしても騎士団に所属して騎士道を歩むつもりはない。
アラッドはハッキリと宣言した。
その言葉に、バイアードは豪快に笑った。
「はっはっはっはっは!!! なるほど……確かに、それを行うのは無理ではない」
バイアードの記憶には、騎士の爵位を持つ冒険者が何人かいた。
つまり、騎士の爵位を持ちながらも冒険者として活動することは可能。
普通に考えれば順番は逆だが、それはそれでありだとバイアードは考えた。
フールも息子の考えが納得出来た。
納得出来たが、何故急にそうしようと思ったのか謎だった。
「そ、そうですね。無理ではありませんが……アラッド、何故急にそうしようと思ったんだい」
「……騎士の爵位持ちの冒険者もありだなと思ったんで」
悩んだ時間はわずか二秒。
それらしい考えを出したつもりだが、普通に考えて……そんな事を考える者は少ない。
「はっはっは!! 確かにカッコ良いだろう。しかし最短距離で、か……」
騎士とは王都の学園の騎士科を卒業し、入団試験に合格した者だけが騎士と名乗れる。
特例も存在するが、基本的にはまず……学園に通わなければならない。
「アラッド、その最短距離というのは、どれぐらいの期間なんだ?」
「……半年ですね」
六か月。
それ以上の時間を使うつもりはない。
「半年か……ふふ、アラッド。半年の半分で、それを達成できるチャンスがあるぞ」
「本当ですか!?」
バイアードからまさかの情報を聞き、アラッドとフールは目を輝かせる。
「今年、王都の学園の高等部二年に所属する令嬢がいるんだが……これまた、学生の枠を超えた強さを持っている」
転生者であるアラッドは子供の頃から一般的には考えられない生活を送り、その域に達している。
だが……転生者でなくとも、その域に達する者はごく自然に現れる。
「勿論他にもそういった生徒たちはいるようだが、その令嬢はそういった連中の中でも群を抜いて強い。なんせ、現時点で他の学園の三年生も含めて頂点に立ってるからな」
「つまり、学生の中で最強の存在という事ですね」
「その通りだ」
他学園にも学生の枠を超えた生徒は存在するが、それでもその令嬢は公式戦で今年は負けなし。
前年度も学生による大会で、あと一歩のところで優勝というとこまで上り詰めている。
「その令嬢は、既に学園を卒業したら騎士になることが確定している」
「……つまり、その令嬢を公式な場で倒せば、直ぐに騎士の爵位を手に入れることが出来る。という事ですね」
「そういうことだ」
普通はそう簡単にいかない部分があるのだが……アラッドの場合は、少し事情が違い、それを可能に出来る力があった。
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