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二百五十一話 とりあえず二人で、と考えている
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アラッドは実家を出るまで、変わらず自身を鍛えては実戦で腕を磨き、休日は錬金術の腕を磨く。
そんなサイクルを行っている中で……孤児院の中から何人かは冒険者となり、巣立っていった。
他にも冒険者ではなくとも、孤児院の中ではその他の技術を身に着けることが出来るので、他にも料理人見習い、鍛冶師見習いになった者もいる。
そんな少し寂しい思いをしながらも……アラッドは連日、キャバリオンの製造に追われていた。
エリアやリーナたちの為に、デザイン重視のキャバリオンを造るのも大変だったが……親バカなフールがキャバリオンのことを黙っているわけがなく、パーティーに参加しては自慢していた。
最初こそ、なんだそれは? と思う者が多かったが、軍事関係や騎士関係の者たちは少なからず興味が引かれる内容。
加えて、実際にアラッドが造ったフール専用のキャバリオン……赤龍帝を見て、猛烈に欲しいと思う者が増えた。
勿論、フールはこの件に関して、アラッドに無理をする必要はないと伝えた。
以前のレイたちとのお茶会みたいに、フールの体裁を気にする必要はない。
無理なら無理と言って構わないと、フールは真面目な表情で息子に伝えた。
だが……この一件に関して、アラッドは大変そうだな~と思いながらも、自身が考えたオリジナルのマジックアイテムを欲しいと思った者がいる。
それが嬉しく思い、素材と製作費を用意してくれるのであれば構わないと伝えた。
そんなアラッドの要件に対し……殆どの者が、実費でモンスターの素材や鉱石を購入し、製作費をアラッドに渡した。
「……評価してくれるのは嬉しいけど、こりゃプレッシャーが凄いな」
どの貴族も半端な素材や製作費を送ってこない。
絶対に成功しなければと、製作者としてのプライドが伝えてくる。
目の前の素材や鉱石を無駄にするなんて、絶対に許されない。
そのプレッシャーは……確かにアラッドの肩に重くのしかかった。
だが、アラッドを国王陛下専用のチェスを作った時や、フール専用のキャバリオンである赤龍帝を造った時と同じく……冷静に、慌てることなく、魂を込めるかのように制作を行い続けた。
ある程度キャバリオンの制作に慣れてきたとはいえ、それでも扱う素材によってはいつも以上に神経質にならなければいけない。
そしてその分、完成までに時間が掛かる。
それでも、完成させたときの達成感は半端ではなかった。
お陰で懐は依頼達成の報酬金で熱々な状態だが、嬉しい事に変わりはない。
「そろそろ決めないとな~~」
結局幾つになっても充実した日々を送っていたアラッドだが、今日……偶々家に遊びに来ていたバイアードと、フールの会話を聞いてしまった。
「どうなんだ。正直、アラッド君には……自分と同じ道を進んで欲しいと思ってるんじゃないか」
「……そんなことはない、と言ったら噓になりますね」
今年、アラッドは十五になる歳であり……そこを越え、春過ぎになれば家を出て冒険者として活動するつもり。
ガルシアたちの中には、自分たちも付いて行きます!!! と、宣言する者がいる。
それはそれで嬉しいことだが、アラッドはとりあえず冒険者になりたての段階では、自分とクロだけで活動しようと考えていた。
そんな中で、父親の本音を耳にしてしまった。
「いや、アラッドが騎士の道に進んで欲しいというよりも……その道を選ばなかったことが、ちょっと悔しい……そんなところですね」
「父親よりも、母親が進んだ道に憧れた……ふふ、それを考えるとこっちの道に進んで欲しいというよりも、悔しいという想いが勝るかもしれんな」
「そうなんですよ。ただ、アラッドは冒険者の道に進んだとしても、戦う者として成功することに変わりはありません……まっ、偶には家に帰って顔を見せてほしいですけどね」
声色は、普段と変わらない。
それでも心の底から漏れた言葉だからこそ……改めて、その気持ちが本心なのだと知った。
そんなサイクルを行っている中で……孤児院の中から何人かは冒険者となり、巣立っていった。
他にも冒険者ではなくとも、孤児院の中ではその他の技術を身に着けることが出来るので、他にも料理人見習い、鍛冶師見習いになった者もいる。
そんな少し寂しい思いをしながらも……アラッドは連日、キャバリオンの製造に追われていた。
エリアやリーナたちの為に、デザイン重視のキャバリオンを造るのも大変だったが……親バカなフールがキャバリオンのことを黙っているわけがなく、パーティーに参加しては自慢していた。
最初こそ、なんだそれは? と思う者が多かったが、軍事関係や騎士関係の者たちは少なからず興味が引かれる内容。
加えて、実際にアラッドが造ったフール専用のキャバリオン……赤龍帝を見て、猛烈に欲しいと思う者が増えた。
勿論、フールはこの件に関して、アラッドに無理をする必要はないと伝えた。
以前のレイたちとのお茶会みたいに、フールの体裁を気にする必要はない。
無理なら無理と言って構わないと、フールは真面目な表情で息子に伝えた。
だが……この一件に関して、アラッドは大変そうだな~と思いながらも、自身が考えたオリジナルのマジックアイテムを欲しいと思った者がいる。
それが嬉しく思い、素材と製作費を用意してくれるのであれば構わないと伝えた。
そんなアラッドの要件に対し……殆どの者が、実費でモンスターの素材や鉱石を購入し、製作費をアラッドに渡した。
「……評価してくれるのは嬉しいけど、こりゃプレッシャーが凄いな」
どの貴族も半端な素材や製作費を送ってこない。
絶対に成功しなければと、製作者としてのプライドが伝えてくる。
目の前の素材や鉱石を無駄にするなんて、絶対に許されない。
そのプレッシャーは……確かにアラッドの肩に重くのしかかった。
だが、アラッドを国王陛下専用のチェスを作った時や、フール専用のキャバリオンである赤龍帝を造った時と同じく……冷静に、慌てることなく、魂を込めるかのように制作を行い続けた。
ある程度キャバリオンの制作に慣れてきたとはいえ、それでも扱う素材によってはいつも以上に神経質にならなければいけない。
そしてその分、完成までに時間が掛かる。
それでも、完成させたときの達成感は半端ではなかった。
お陰で懐は依頼達成の報酬金で熱々な状態だが、嬉しい事に変わりはない。
「そろそろ決めないとな~~」
結局幾つになっても充実した日々を送っていたアラッドだが、今日……偶々家に遊びに来ていたバイアードと、フールの会話を聞いてしまった。
「どうなんだ。正直、アラッド君には……自分と同じ道を進んで欲しいと思ってるんじゃないか」
「……そんなことはない、と言ったら噓になりますね」
今年、アラッドは十五になる歳であり……そこを越え、春過ぎになれば家を出て冒険者として活動するつもり。
ガルシアたちの中には、自分たちも付いて行きます!!! と、宣言する者がいる。
それはそれで嬉しいことだが、アラッドはとりあえず冒険者になりたての段階では、自分とクロだけで活動しようと考えていた。
そんな中で、父親の本音を耳にしてしまった。
「いや、アラッドが騎士の道に進んで欲しいというよりも……その道を選ばなかったことが、ちょっと悔しい……そんなところですね」
「父親よりも、母親が進んだ道に憧れた……ふふ、それを考えるとこっちの道に進んで欲しいというよりも、悔しいという想いが勝るかもしれんな」
「そうなんですよ。ただ、アラッドは冒険者の道に進んだとしても、戦う者として成功することに変わりはありません……まっ、偶には家に帰って顔を見せてほしいですけどね」
声色は、普段と変わらない。
それでも心の底から漏れた言葉だからこそ……改めて、その気持ちが本心なのだと知った。
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