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二百四十九話 比べてはならない
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「そんなに凄かったんだね」
「はい。その、なんと言いますか……」
「天才かもしれない、ということなんだね」
「はい」
フールはアラッドがあまり天才という言葉が好きではないと解っているので、自らアラッドの本音を口にした。
シルフィーとアッシュが行った模擬戦。
二人が衝突した原因が原因という事もあり、アラッドはフールに流れを細かく伝えた。
「なるほど……アラッド、君の判断は正しかった。多分、その時にエリアがシルフィーに何を言っても、意味はなかった。寧ろ、傷付けていたかもしれない」
「……さすがに、あのタイミングではないと思ったので」
シルフィーはアッシュとの模擬戦に負け、涙を流しながら訓練場から出ていった。
夕食は喉を通るようで、精神的に病んではいない……だが、かなりのダメージは受けていた。
「ふぅ~~~……聡明だし、きっと錬金術の方に才能を開花させるのものだと思ってたけど、どうやらしっかりと僕の血も継いでいたようだね。まぁ、センスは僕以上であるのは確実だ」
フールも幼少期の頃から戦いに対して才能が光っていた。
だが、八歳の頃にシルフィーほどの力を持つ者を相手に同じことが出来たか?
絶対に出来なかったと断言出来る。
そもそも、そういった勝ち方をしようとすら思えなかった。
「アラッド、君の眼から視てどうかな」
「センスという面では、自分よりも上かと」
アラッドは相手の攻撃を受け流す。
その考え自体は、選択肢の一つとして……学ぶべき技術として頭に入っていた。
しかし、あそこまで綺麗に……本気の模擬戦で同じことが出来たのか……無理だと絶対に答える。
「やっぱりそうか」
「勿論、錬金術の面も確かな才能を持っています」
アラッドの言葉通り、アッシュは聡明で賢明であり……そちらの面の才能も確かに持っている。
ただ……それには今までの努力があってこそ。
戦闘面に関しては、必要最低限しか行っていない。
武器を使った訓練だけではなく、魔法の訓練に関しても同じ。
武器よりは多少魔法に興味はあるが、それでもアッシュの中で一番興味があり、努力を重ねたいのは錬金術だった。
「……あれだよね。どう考えても、騎士の道には進まないよね」
「そ、そうですね。その……どう考えても、そちらの道に進むのは難しいかと」
アッシュが騎士という職業を下に見ている訳ではない。
自分が屋敷の外に出る時、いつも護衛を担当してくれている騎士たちには、非常に感謝している。
しかし……そんな騎士たちになろうという憧れがない。
アッシュが憧れたのは、アラッドが錬金術で何かを造っている姿だった。
(アラッドも騎士の道に進まず、まさかの才を持つアッシュも騎士の道に進まない……仕方ないと言えば、仕方ないか)
元々アッシュがそちらの道に進みたいのであれば、応援するつもりだった。
今更戦闘の才があったからといって、強引にその道に進ませようとは思えない。
ただ、やはり惜しいとは思ってしまう。
「とりあえずアッシュのことは問題無いから置いておくとして、シルフィーは……立ち直れるだろうか」
負けたからといって、そう簡単に潰れる性格ではない。
それはフールとアラッドも同じことを考えていた。
考えていたが、今回は負けた相手が悪かったという状況。
同じ腹から生まれた存在であり、自分より訓練に時間を費やしていない。
それにもかかわらず、自分を模擬戦で圧倒した。
直ぐに終わらせることができたのに、わざわざ自分の力を引き出すだけ引き出し……一ミリも文句が言えない内容で負けた。
それらがシルフィーに大きなダメージを与えた。
「……正直、あまり相性が良くないということもあると思います。ただ、アッシュの戦闘力をあまり自分とは比べてはならない。それが自分の結論なんですが……素直にシルフィーが受け入れてくれるかどうか」
アッシュは戦闘に関してそこまで興味はないが、それでも考える頭がない訳ではない。
加えて、自分の意志などが関わる戦いとなれば、当然負けるのは嫌だという気持ちが芽生える。
そんなアッシュに対して、アラッドはシルフィーが勝てるイメージが思い浮かばなかった。
「はい。その、なんと言いますか……」
「天才かもしれない、ということなんだね」
「はい」
フールはアラッドがあまり天才という言葉が好きではないと解っているので、自らアラッドの本音を口にした。
シルフィーとアッシュが行った模擬戦。
二人が衝突した原因が原因という事もあり、アラッドはフールに流れを細かく伝えた。
「なるほど……アラッド、君の判断は正しかった。多分、その時にエリアがシルフィーに何を言っても、意味はなかった。寧ろ、傷付けていたかもしれない」
「……さすがに、あのタイミングではないと思ったので」
シルフィーはアッシュとの模擬戦に負け、涙を流しながら訓練場から出ていった。
夕食は喉を通るようで、精神的に病んではいない……だが、かなりのダメージは受けていた。
「ふぅ~~~……聡明だし、きっと錬金術の方に才能を開花させるのものだと思ってたけど、どうやらしっかりと僕の血も継いでいたようだね。まぁ、センスは僕以上であるのは確実だ」
フールも幼少期の頃から戦いに対して才能が光っていた。
だが、八歳の頃にシルフィーほどの力を持つ者を相手に同じことが出来たか?
絶対に出来なかったと断言出来る。
そもそも、そういった勝ち方をしようとすら思えなかった。
「アラッド、君の眼から視てどうかな」
「センスという面では、自分よりも上かと」
アラッドは相手の攻撃を受け流す。
その考え自体は、選択肢の一つとして……学ぶべき技術として頭に入っていた。
しかし、あそこまで綺麗に……本気の模擬戦で同じことが出来たのか……無理だと絶対に答える。
「やっぱりそうか」
「勿論、錬金術の面も確かな才能を持っています」
アラッドの言葉通り、アッシュは聡明で賢明であり……そちらの面の才能も確かに持っている。
ただ……それには今までの努力があってこそ。
戦闘面に関しては、必要最低限しか行っていない。
武器を使った訓練だけではなく、魔法の訓練に関しても同じ。
武器よりは多少魔法に興味はあるが、それでもアッシュの中で一番興味があり、努力を重ねたいのは錬金術だった。
「……あれだよね。どう考えても、騎士の道には進まないよね」
「そ、そうですね。その……どう考えても、そちらの道に進むのは難しいかと」
アッシュが騎士という職業を下に見ている訳ではない。
自分が屋敷の外に出る時、いつも護衛を担当してくれている騎士たちには、非常に感謝している。
しかし……そんな騎士たちになろうという憧れがない。
アッシュが憧れたのは、アラッドが錬金術で何かを造っている姿だった。
(アラッドも騎士の道に進まず、まさかの才を持つアッシュも騎士の道に進まない……仕方ないと言えば、仕方ないか)
元々アッシュがそちらの道に進みたいのであれば、応援するつもりだった。
今更戦闘の才があったからといって、強引にその道に進ませようとは思えない。
ただ、やはり惜しいとは思ってしまう。
「とりあえずアッシュのことは問題無いから置いておくとして、シルフィーは……立ち直れるだろうか」
負けたからといって、そう簡単に潰れる性格ではない。
それはフールとアラッドも同じことを考えていた。
考えていたが、今回は負けた相手が悪かったという状況。
同じ腹から生まれた存在であり、自分より訓練に時間を費やしていない。
それにもかかわらず、自分を模擬戦で圧倒した。
直ぐに終わらせることができたのに、わざわざ自分の力を引き出すだけ引き出し……一ミリも文句が言えない内容で負けた。
それらがシルフィーに大きなダメージを与えた。
「……正直、あまり相性が良くないということもあると思います。ただ、アッシュの戦闘力をあまり自分とは比べてはならない。それが自分の結論なんですが……素直にシルフィーが受け入れてくれるかどうか」
アッシュは戦闘に関してそこまで興味はないが、それでも考える頭がない訳ではない。
加えて、自分の意志などが関わる戦いとなれば、当然負けるのは嫌だという気持ちが芽生える。
そんなアッシュに対して、アラッドはシルフィーが勝てるイメージが思い浮かばなかった。
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