244 / 984
二百四十四話 俺、必要?
しおりを挟む
フール専用のキャバリオン、赤龍帝を造り……アラッドは父から代金として、黒曜金貨五枚を受け取った。
この金額に関しては多すぎる……とも言えなかった。
懇意にしているという理由でリグラットは素材の値段を割り引いてくれたが、それがなければ材料費だけで白金貨がアホみたいに吹き飛んでいた。
割り引かれてもそれなりの額を材料費に使ったので、黒曜金貨五枚というのは割と適正な値段であり、それが解っているのでアラッドも素直に代金を受け取った。
(まっ、これも母さんたちのキャバリオンを造る為の材料費になるんだけどな)
赤龍帝を造り終えてからの約一瞬間、アラッドはいつも通り過ごしながら、エリアとリーナに相応しいキャバリオンの外見、性能について考えていた。
二人の外見、得意な属性魔法にベストマッチするように……そして外見が被らない様に、あぁしようこうした方が良いかと考えて考え抜いていた。
「うん、大体こんなところか」
内容がある程度纏まってきたので、それを洋紙に書き記す。
すると、ドアから大きめのノック音が鳴った。
「誰でしょうか」
そう言いながらガルシアがドアに近づく。
「アラッド、私よ!」
声の主に気付き、ガルシアはゆっくりと扉を開けた。
「エリア義母さん。そんな慌ててどうしたんですか?」
ノックをした主は第一夫人であるエリア。
いつもは周囲を和ませる雰囲気を持つのだが、今はとても焦った表情をしており、あたふたとしている。
「シルフィーと、アッシュが」
「ッ! 二人に何か!?」
シルフィーとアッシュはエリアの子供であり、パーシブル家の次女と五男。
アラッドにとっては歳のは慣れた妹弟。
それなりに可愛がっているので、二人に何かあったとなっては当然心配になり、表情が一気に変わる。
「二人が……」
エリアが何故アラッドの部屋に来たのか……それを移動しながら聞くと、それはわざわざ自分を頼る必要があったのかと思ってしまったアラッド。
(それは、俺必要か?)
エリアがアラッドを頼った理由は……シルフィーとアッシュが喧嘩したから。
確かに、二人が喧嘩するというのは珍しい。
アラッドは二人が喧嘩したという情報は、全く耳に入っていない。
そもそも二人が何か意見をぶつけ合うことがまずないので、ちょっとした言い合いでも……喧嘩まで発展することはないのだ。
だが……エリアの焦り様から、ただの喧嘩ではないことが窺える。
(まぁ、そういう内容であれば、俺が間に入った方が良いかもな)
二人がマジな喧嘩まで発展した内容は……一言でいえば、パーシブル家に生まれた者としての、強さに関するもの。
シルフィーは姉のルリナよりもお転婆で、礼儀作法、お茶や刺繡よりも訓練、模擬戦の方が大好き。
そんなシルフィーに対し、アッシュは体を動かすことが嫌いではないが、錬金術の勉強をする方が訓練より興味が強い。
なのでアラッドがキャバリオンを造っており、離すことが出来ない時間であっても、離れた場所で幼い頃のアラッドの様に頑張ってポーション造りを行っている。
アラッドとしては、それだけでアッシュが自分のことを慕ってくれていると解り、自分はアッシュが行きたい道を応援したいと思った。
シルフィーもアラッドのことを慕ってはいるが……礼儀作法、錬金術や歴史などよりも、とにかく体を思いっきり動かすことが好き。
簡単に分けてしまえば、シルフィーは超アウトドアタイプで、アッシュはインドアタイプ。
考えが合わないのは、仕方ない。
だが……シルフィーはアッシュがほぼ必要最低限の訓練しかしないことが気に喰わなかった。
まだ幼かったが、長男のギーラスや長女のルリナ、次男のガルアが自分と同じように一生懸命訓練に取り組んでいた姿を覚えている。
同じく、ドラングやアラッドが強くなろうと努力を続ける姿も目に焼き付いている。
だからこそ……アッシュの訓練に対する姿勢が一ミリも許容できない。
この金額に関しては多すぎる……とも言えなかった。
懇意にしているという理由でリグラットは素材の値段を割り引いてくれたが、それがなければ材料費だけで白金貨がアホみたいに吹き飛んでいた。
割り引かれてもそれなりの額を材料費に使ったので、黒曜金貨五枚というのは割と適正な値段であり、それが解っているのでアラッドも素直に代金を受け取った。
(まっ、これも母さんたちのキャバリオンを造る為の材料費になるんだけどな)
赤龍帝を造り終えてからの約一瞬間、アラッドはいつも通り過ごしながら、エリアとリーナに相応しいキャバリオンの外見、性能について考えていた。
二人の外見、得意な属性魔法にベストマッチするように……そして外見が被らない様に、あぁしようこうした方が良いかと考えて考え抜いていた。
「うん、大体こんなところか」
内容がある程度纏まってきたので、それを洋紙に書き記す。
すると、ドアから大きめのノック音が鳴った。
「誰でしょうか」
そう言いながらガルシアがドアに近づく。
「アラッド、私よ!」
声の主に気付き、ガルシアはゆっくりと扉を開けた。
「エリア義母さん。そんな慌ててどうしたんですか?」
ノックをした主は第一夫人であるエリア。
いつもは周囲を和ませる雰囲気を持つのだが、今はとても焦った表情をしており、あたふたとしている。
「シルフィーと、アッシュが」
「ッ! 二人に何か!?」
シルフィーとアッシュはエリアの子供であり、パーシブル家の次女と五男。
アラッドにとっては歳のは慣れた妹弟。
それなりに可愛がっているので、二人に何かあったとなっては当然心配になり、表情が一気に変わる。
「二人が……」
エリアが何故アラッドの部屋に来たのか……それを移動しながら聞くと、それはわざわざ自分を頼る必要があったのかと思ってしまったアラッド。
(それは、俺必要か?)
エリアがアラッドを頼った理由は……シルフィーとアッシュが喧嘩したから。
確かに、二人が喧嘩するというのは珍しい。
アラッドは二人が喧嘩したという情報は、全く耳に入っていない。
そもそも二人が何か意見をぶつけ合うことがまずないので、ちょっとした言い合いでも……喧嘩まで発展することはないのだ。
だが……エリアの焦り様から、ただの喧嘩ではないことが窺える。
(まぁ、そういう内容であれば、俺が間に入った方が良いかもな)
二人がマジな喧嘩まで発展した内容は……一言でいえば、パーシブル家に生まれた者としての、強さに関するもの。
シルフィーは姉のルリナよりもお転婆で、礼儀作法、お茶や刺繡よりも訓練、模擬戦の方が大好き。
そんなシルフィーに対し、アッシュは体を動かすことが嫌いではないが、錬金術の勉強をする方が訓練より興味が強い。
なのでアラッドがキャバリオンを造っており、離すことが出来ない時間であっても、離れた場所で幼い頃のアラッドの様に頑張ってポーション造りを行っている。
アラッドとしては、それだけでアッシュが自分のことを慕ってくれていると解り、自分はアッシュが行きたい道を応援したいと思った。
シルフィーもアラッドのことを慕ってはいるが……礼儀作法、錬金術や歴史などよりも、とにかく体を思いっきり動かすことが好き。
簡単に分けてしまえば、シルフィーは超アウトドアタイプで、アッシュはインドアタイプ。
考えが合わないのは、仕方ない。
だが……シルフィーはアッシュがほぼ必要最低限の訓練しかしないことが気に喰わなかった。
まだ幼かったが、長男のギーラスや長女のルリナ、次男のガルアが自分と同じように一生懸命訓練に取り組んでいた姿を覚えている。
同じく、ドラングやアラッドが強くなろうと努力を続ける姿も目に焼き付いている。
だからこそ……アッシュの訓練に対する姿勢が一ミリも許容できない。
218
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる