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二百四十四話 俺、必要?

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フール専用のキャバリオン、赤龍帝を造り……アラッドは父から代金として、黒曜金貨五枚を受け取った。

この金額に関しては多すぎる……とも言えなかった。
懇意にしているという理由でリグラットは素材の値段を割り引いてくれたが、それがなければ材料費だけで白金貨がアホみたいに吹き飛んでいた。

割り引かれてもそれなりの額を材料費に使ったので、黒曜金貨五枚というのは割と適正な値段であり、それが解っているのでアラッドも素直に代金を受け取った。

(まっ、これも母さんたちのキャバリオンを造る為の材料費になるんだけどな)

赤龍帝を造り終えてからの約一瞬間、アラッドはいつも通り過ごしながら、エリアとリーナに相応しいキャバリオンの外見、性能について考えていた。

二人の外見、得意な属性魔法にベストマッチするように……そして外見が被らない様に、あぁしようこうした方が良いかと考えて考え抜いていた。

「うん、大体こんなところか」

内容がある程度纏まってきたので、それを洋紙に書き記す。
すると、ドアから大きめのノック音が鳴った。

「誰でしょうか」

そう言いながらガルシアがドアに近づく。

「アラッド、私よ!」

声の主に気付き、ガルシアはゆっくりと扉を開けた。

「エリア義母さん。そんな慌ててどうしたんですか?」

ノックをした主は第一夫人であるエリア。
いつもは周囲を和ませる雰囲気を持つのだが、今はとても焦った表情をしており、あたふたとしている。

「シルフィーと、アッシュが」

「ッ! 二人に何か!?」

シルフィーとアッシュはエリアの子供であり、パーシブル家の次女と五男。
アラッドにとっては歳のは慣れた妹弟。
それなりに可愛がっているので、二人に何かあったとなっては当然心配になり、表情が一気に変わる。

「二人が……」

エリアが何故アラッドの部屋に来たのか……それを移動しながら聞くと、それはわざわざ自分を頼る必要があったのかと思ってしまったアラッド。

(それは、俺必要か?)

エリアがアラッドを頼った理由は……シルフィーとアッシュが喧嘩したから。

確かに、二人が喧嘩するというのは珍しい。
アラッドは二人が喧嘩したという情報は、全く耳に入っていない。

そもそも二人が何か意見をぶつけ合うことがまずないので、ちょっとした言い合いでも……喧嘩まで発展することはないのだ。

だが……エリアの焦り様から、ただの喧嘩ではないことが窺える。

(まぁ、そういう内容であれば、俺が間に入った方が良いかもな)

二人がマジな喧嘩まで発展した内容は……一言でいえば、パーシブル家に生まれた者としての、強さに関するもの。

シルフィーは姉のルリナよりもお転婆で、礼儀作法、お茶や刺繡よりも訓練、模擬戦の方が大好き。
そんなシルフィーに対し、アッシュは体を動かすことが嫌いではないが、錬金術の勉強をする方が訓練より興味が強い。

なのでアラッドがキャバリオンを造っており、離すことが出来ない時間であっても、離れた場所で幼い頃のアラッドの様に頑張ってポーション造りを行っている。

アラッドとしては、それだけでアッシュが自分のことを慕ってくれていると解り、自分はアッシュが行きたい道を応援したいと思った。

シルフィーもアラッドのことを慕ってはいるが……礼儀作法、錬金術や歴史などよりも、とにかく体を思いっきり動かすことが好き。
簡単に分けてしまえば、シルフィーは超アウトドアタイプで、アッシュはインドアタイプ。

考えが合わないのは、仕方ない。
だが……シルフィーはアッシュがほぼ必要最低限の訓練しかしないことが気に喰わなかった。

まだ幼かったが、長男のギーラスや長女のルリナ、次男のガルアが自分と同じように一生懸命訓練に取り組んでいた姿を覚えている。

同じく、ドラングやアラッドが強くなろうと努力を続ける姿も目に焼き付いている。
だからこそ……アッシュの訓練に対する姿勢が一ミリも許容できない。
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