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二百四十三話 考えるのは、嫌いじゃない

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フールは赤龍帝を使い、歩き始めてから直ぐに感じた……アラッドからの助言を聞いておかなければ、間違いなく倒れていたと。

「……使いこなせれば、これだけで凶器となるな」

まだまだ通常のキャバリオンすら、全ての性能を引き出せているとは思えない。

通常のキャバリオンよりも更に高性能な赤龍帝を使いこなすには、いったいどれほどの時間が掛かるのか……だが、何かを完璧に操る為には、それ相応の時間が必要。

それは今までの人生で良く解っていた。
なので、今まで以上にキャバリオンを使いこなすために時間を使おう……と思ったが、フールは当主なので毎日の生類仕事がある。

それを思い出して意気消沈しそうになったが、直ぐに立ち直った。
壁があるのならば、即座にそれを消化させればいい。

「なんか、父さんから闘志の炎? が、溢れ出てる様な……気のせいか?」

幻覚でも見ているのかと思ったが、目をこすっても闘志による炎が見える。
だが、フールの体から魔力が零れている様には思えない。

「……とりあえず寝るか」

アラッドはほどほどにして、明日寝坊しない様に気を付けてくださいと伝え、屋敷の中に戻って風呂に入り、ベッドに入ってから沈むように寝た。

「アラッド様、朝ですよ」

「もうちょい、寝させてくれ」

アラッドにしては珍しく、もう少し寝たいと口にした。
エリナはその発言に驚きながらも、先日主人がどれ程の集中力を使ったのか思い出し「かしこまりました」と伝えて、もう一時間程そっとしておこうと決めた。

シェフにもアラッドの朝食はもう少し後でと頼む。

「アラッド様、起きれますか?」

一時間が経ち、エリナは再びアラッドを起こした。

「…………どれぐらい、寝てた」

「一時間程です」

「……はぁ~~~。起きるか」

本音としては、もっと寝たい。
だが、これ以上寝るのは体に良くないと思い、無理矢理体を起こした。

「アラッド様、大丈夫ですか? まだ寝ていても問題無いと思いますが」

「いや、さすがにこれ以上寝るのは良くない」

寝間着から普段着に着替え、少し遅めの朝食を食べ、今日は森に入って狩りをしよう……と思っていたら、実母であるアリサに呼び留められた。

狩りを邪魔したいのではなく、要望を伝えたいだけ。
ちなみに呼び留められた場所にはアリサだけではなく、第一夫人のエリアと第二夫人のリーナもいた。

三人が揃って要望があるのは珍しいと思っていると、頼みはフールと同じく、自分専用のキャバリオンが欲しいという理由だった。

アリサからその要望が来ても、特におかしいとは思わない。
自分と同じく、侯爵家の夫人にしては珍しいほど森の中に入り、モンスターを狩っている。

だが、そのアリサがキャバリオンの良さを熱弁したことで、二人も自分だけのキャバリオンが欲しいと思い、アラッドに頼み込んだ。

「分かりました。時間は掛かりますけど、必ず完成させます」

身内以外に販売はしていないので、余裕はある。
レオナとシーリア、他三名を連れて行動している間、殆ど三人にどのようなキャバリオンを造ろうか考えていた。

「アラッド様、考えことですか?」

「顔に出てたか」

「出ていたと言いますか、モンスターと戦っていても上の空といった感じでしたので。ねぇ、シーリア」

「そうですね。やっぱり、もうアラッド様の戦闘欲を満たせるモンスターがいないからですか?」

フールが治める領地は辺境、魔境ではないので、そう簡単に高ランクのモンスターが現れることはない。
故に、最近はアラッドが実戦で笑みを浮かべることがなくなっていた。

「いや、キャバリオンのことで少しな」

アリサのキャバリオンに関しては、フールと同じく戦闘面も考えた一品で問題無い。
だが、エリアとリーナのキャバリオンだけはそうもいかない。

(赤龍帝の様な強さを前面に出すのではなく、品位? を感じさせる一品じゃないとな)

そういった面に対してはあまり拘っていなかったアラッドだが、特別な作品を造るために頭を悩ませることは嫌いではなかった。
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