上 下
242 / 984

二百四十二話 本人にとって及第点でも

しおりを挟む
「アラッド様、このキャバリオンの名前は?」

「名前? ……そうだな。確かに名前があっても良い出来だよな」

父、竜殺しの騎士であるフールの為に造り上げた最高の一品。

それに相応しい名は何か……一分ほどじっくり考え、名前を決定。

「赤龍帝、だな」

「赤龍帝……ですか」

「そうだ。父さんがメインで使う魔力の属性は火。そして素材にはフレイムドラゴンの素材に、ブレイズレグルスの素材も使った。この国のトップは国王だし……赤龍帝ってのもありだろ」

疲れ切ってあまり上手く考えられていないが、その名前に相応しい実力をフールが持っていると信じている。

(父さんは昔から衰えるどころか強くなってる気がするし、問題無いでしょ)

もうやれることはやった……そう思っていると、アラッドの腹から盛大に音が零れた。

「……腹減ったな。夕食を食べよう」

「はい、そうしましょう」

時間的にはギリギリセーフなので、アラッドはダッシュで食卓へと向かった。

アラッドが夕食の時間に戻ってきたことを確認したフールは「まさか!!」といった表情になるが、落ち着いてくれて息子に諭される。

「う、うん。そうだな。今から夕食の時間だし、後でにしよう」

本当は今すぐにでもアラッドが自分の為に造ってくれたキャバリオンを見に行きたいが、ここは当主としてグッと堪えた。

だが、夕食が始まってから周りが驚くほどの速さで夕食を平らげた。
勿論……乱暴な食い方はせず、貴族らしい美しい所作で……高速で食べ終えた。

そんなフールに対し……アラッドは最初からそうなるだろうと予測していたので、本気で腹が減っていたこともあり、同じ高速で夕食を食べ終えた。

「……急かしてしまってすまない、アラッド」

息子が自分とほぼ同じタイミングで食べ終えた。

何故そこまで早く食べたのか、その理由を察してフールは謝った。
ただ、息子であるアラッドは全くもって気にしていない。

「いえいえ、俺も凄い腹が減ってたんで。それじゃ、見に行きましょう」

二人は夕食が始まってから十分も経たずに食べ終わり、退席。
嫁三人は思わず同時に苦笑い。

しかしアリサだけはいったいどんなキャバリオンが完成したのか気になり、いつもより若干速いペースで夕食を平らげていく。

「これが、父さん専用のキャバリオン……名は、赤龍帝です」

「赤龍帝……僕専用の、キャバリオン」

赤龍帝のランクは八と、マジックアイテムが入っている宝箱が大量に眠るダンジョンの中であっても、滅多に手に入れることが出来ないほど貴重な一品。

アラッドとしてはAランクモンスターの素材や貴重な鉱石を使ったので、最低ランク八ぐらいの物は造れないといけないと思っていた。

ただ、それは本人の……アラッドの技量があってこその結果。
腕が足りない錬金術師がいくら高ランクの素材を使おうとも、結果は駄作が出来上がるだけ。
無駄遣いも良いところ。

だが……アラッドはリグラットに取り寄せてもらった素材を無駄にすることなく、最良の一作を造ることに成功した。

アラッドが今まで造ってきた一般的なキャバリオンと違い、色は当然赤がベース。
そして馬というよりも、ドラゴンを意識したフォルム。

足には当然爪があり、蹴り殺すだけではなく、切り裂くことも可能。
フールの魔力を多く消費せずとも、火を纏うことが出来……当然、脚力はアラッドが今まで造ってきたキャバリオンの中でもぶっちぎりのトップ。

なので、より操作性が重視される作品でもある。

「父さん、乗ってみますか?」

「あ、あぁ。そうだね」

「最初に伝えておきますね。赤龍帝はとんでもなく馬力……脚力が半端ないです。父さんが今まで乗ってきたキャバリオンと同じだと思わない方が良いでください。下手したら顔面から地面に突っ込むので」

「わ、分ったよ。初めて乗った時の様に、まず歩くことに集中するよ」

「そうしてください」

赤龍帝を庭まで運び、直線状に何もないことを確認し……いざライド・オン。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...