スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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二百四十一話 昼飯はいらない

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アラッドが何かに気付き、戦闘力が飛躍的に上昇してから約二か月後、家に仕える騎士たちのキャバリオンを造り続け……ようやく待ち望んでいた素材が届いた。

因みにキャバリオンはまだどこにも情報が漏れていない一品なので、一般的な素材を使ったとしても、値段が白金貨一枚と超高級。

アラッドはそんなにいらないと伝えた。
理由は勿論、既にそんな大金を貰わずとも使えきれないほどの金を持っているからだ。

だが、アラッドの腕は高く評価しているフールはそれを却下。
そもそもパーシブル家から騎士や兵士、魔法使いたちはそれなりの給金を貰っているので、払えない金額ではない。

勿論結婚している者たちもいるので、人によっては直ぐに購入することは無理だが……なんとか貯めれば、買えないこともない。
ただ……そもそも簡単に造れる者ではないので、若干需要に供給が追い付ていない。

そんなアラッドもややキャバリオンの制作に慣れてきた頃、色々と世話になっている商会のトップ、リグラットに頼んでいた素材や魔石、鉱石が到着。

とんでもなく高価な素材であり、しっかりとリグラットにその分の料金は支払った。

とはいえ、リグラットはアラッドが考えた商品のお陰で超大金を稼がせてもらっているので、今回の販売はそれなりに割引サービスを行った。
しかし品が品なだけに、タダで渡すことは出来なかった。

その点に関して少々申し訳なさそうにしていたが、アラッドからすれば最高の素材を取り寄せてくれて有難うと、感謝の言葉しかない。

「さてと、頑張りますか」

「……アラッド様、これらの素材を……使うのですね」

「あぁ……ふふ、半端な物は造れないな。良いプレッシャーだ」

目の前にはAランクモンスターのフレイムドラゴンの牙に爪や骨。そして魔石。
同じくAランクのブレイズレグルスの牙や爪など……それに加えて、大量の紅蓮鉱石とミスリル鉱石。

これだけの素材を使うのであれば……絶対に良作を、超良作を造らなければならない。

「すぅーーーー……はぁーーーーー…………」

深く深呼吸をし、制作に取り掛かる。

家族には昼食はいらないと伝えてある。
もしかしたら、夕食は後で食べるかもしれない……とも伝えている。

いつも造っているキャバリオンをササっと、手を抜いて造っている訳じゃない。
ただ……もう経験として解っている。

これほど高ランクの素材を使って何かを造るとなると、時間がかなり必要となる。
それは同じ制作者であるリンは良く解っている。

昼食は完全に取る気はないが、脱水症状にならないように水分だけは大量に用意されている。

(……ここまで集中されているアラッド様を見るのは、いつぶりだ?)

アラッドは訓練、ポーション造りや最近でいえばキャバリオンの制作時、全て集中している。

実戦では、今のアラッドの実力を考えると、集中して戦えばあっさりと終わってしまうので、遊びながら色々と試す機会が多い。

(トロルの亜種と戦った時……とは、また少し違うか)

クロが致命傷を負わされた時は集中していたというより、全力で迸る殺気を撒き散らしていた。
そういった状態に近かった。

(いったいどの様なキャバリオンが生まれるのか……非常に楽しみだ)

とはいえ、万が一の護衛であるガルシアも休息は必要なので、ずっと作業倉庫に籠っている訳にはいかない。
途中途中で護衛のメンバーは変わるが、アラッドは護衛が変わったことに全く気付いていなかった。

そして朝食を食べ終えてから約七時間……ようやく作業が終了し、フールの専用キャバリオンが完成した。

「できた……はぁ~~~~~、疲れた~~」

「お疲れ様です、アラッド様」

護衛に途中から参加したエリナは汗だくのアラッドをタオルで拭いていく。

「アラッド様、服も脱いでください」

「……了解」

若干頭が回っていないアラッドはエリナの言葉に従い、上だけ脱いでされるがままになった。

「アラッド様……見事なキャバリオンが完成しましたね」

「…………まぁ、及第点ってところだな」

魔眼で完成させたキャバリオンを視て、アラッドはほんの少し……満足気に自作品を評価した。
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