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二百三十八話 今度こそぶっ倒れるて死ぬ

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「とんでもない物を造りましたね、アラッド様」

「……そうかもしれないですね」

現在、アラッドは子供たちの就職先の一つとして購入した奴隷の一人、クリフォードと一緒にキャバリオンを制作していた。

(とんでもない物……クリフォードさんに言われると、自信を持てるな)

クリフォードは現在奴隷という立場だが、錬金術の腕に関しては一流。
アラッドも錬金術の技術に関してはかなり成長してきているが、まだクリフォードには敵わない……と、本人は思っている。

ただ、クリフォードとしては新しいマジックアイテムを生み出した。
この時点で錬金術師としての本質的な部分で、アラッドには負けていると断言出来る。

「ただ、扱いが難しいというのが難点ですが」

「それは仕方ありません。四つの脚を動かす……それは人にとって全く体験したことがない領域です。上手く使いこなせるまで時間が掛かってしまうでしょう」

アラッドはここ数日で自分の分のキャバリオンを確保し、時間を見つけては練習しているが、まだまだ全力で走り回ることは不可能。

(ただ走るだけじゃなく、乗った状態で武器を振り回せるようになって、ようやく扱いこなせると言える……もっと頑張らないとな)

これ以上が頑張り過ぎると倒れるのでは? と心配する従者たちも多いが、アラッドとしてはきっちり睡眠を取っているので問題無い!! と、思っている。

「これに関しては、商品化するのですか?」

「……今のところ考えてませんね。これを商品化すれば……さすがに俺も過労でぶっ倒れると思います」

「確かに、生み出した本人が造った一品が欲しいと思う人は多いでしょう」

チェスやリバーシに関しては、そこまで制作時間が長くない。
扱う素材によっては慎重にならなければならない時があるが、それでも一つ作るのにリバーシなら一分もかからず、チェスでも仕上げを除けば五分程度。

ただ、キャバリオンを一つ造るとなると……比べ物にならない程時間が掛かる。

誰でも欲しがる物ではないが、それでも一定数はキャバリオンが欲しいと思う者はいる。
特に貴族の中でも戦闘関係に優れている家の者であれば、ひとまず興味は持つ。

「これ以上やることが増えると、パンクしそうなんで……まぁ、縁がある人にはって感じですね」

「それが良さそうですね。ところで、ご友人から手紙が届いたそうですが、朗報でもありましたか?」

「え? いや、別に朗報は……なかったですね。普通に学園に通い始めてこんなことがあったとか……他は少し愚痴も混ざってましたね」

レイ嬢たち七人は、同じ学園に入学している。
そこには勿論……ドラングもいる。

(四人ともモテるだろうから、そこら辺に関してへ面倒事が尽きないだろうな)

ベルやリオ、ルーフと共に行動することが多く、ある程度鬱陶しいハエは追い払えているが、そう簡単には退かない大きめのハエもいる。

とはいえ、四人には立派なボディーガードが三人いる。

(でも、ベルやリオも強くなった。いや、マジで強くなったからある程度強い学生でも、二人にを喧嘩で倒すのは無理だろうな……ルーフだって相変わらずおどおどしてるけど、魔法の腕は一級品だ。将来宮廷魔術師になるのも夢じゃない)

三人が入学するまで何度かプライベートで会っていたので、その実力は体験済み。

「貴族の学園は厄介事が多いと聞きますし、ご友人たちも卒業するまでは厄介事でストレスが溜まるかもしれませんね」

「そんな頻繁には起こらないと思いますけど……それを考えると、やっぱり俺は入学しなくて良かったと思いますよ」

この時期になってキャバリオンが完成したことを考えると、より深くそう思ってしまう。

「その通りでしょう。ですが……いえ、なんでもありません」

クリフォードは元々学園に通っていたので、学園に通うことで体験できる楽しさも知っていた。
ただ、そういったメリットもあると知った上で通う必要はないと、アラッドは判断した……それを瞬時に察し、口には出さなかった。
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