227 / 1,032
二百二十七話 それはあなたもですが
しおりを挟む
パーティーが終わり、その翌日には屋敷へと向かい……帰り道では盗賊に襲われることはなく、無事に到着。
「アラッド様、おかえりなさいませ」
屋敷の前では既にエリナたちが立っており、アラッドを出迎えていた。
「おう、ただいま」
「……アラッド様、もしかして何か面白いことでもありましたか?」
「ん? もしかして顔に出てたか」
「顔にといいますか、雰囲気に現れてたって感じですね」
今に限っては特にアラッドの表情はいつも通り。
ただ、レオナは言葉通りにそのいつもと違う雰囲気から、パーティー会場で面白いことが起こったのではと予想。
それは見事に的中していた。
「部屋に戻ったら教えるよ」
現在の時刻は昼過ぎ。
料理人たちが急いでアラッドたちの分の昼食を作り、それを食べ終えて自室に戻り……アラッドはレオナたちにパーティー会場でどんな面白いことがあったのかを伝えた。
事前に感情を抑えることはないと伝え……話を聞き終えたガルシアとレオナ、そしてリンはアラッドの言葉に甘えて爆笑した。
「な、なるほど……そんなことが、あったんですね」
「アラッド様に絡む時点で相当馬鹿だけど、糸でそんな風に……ぷっ、ははははは!!!」
「なんとも言えないダサさっすね。会場でも、思いっきり笑われたんじゃないっすか?」
「令嬢からは悲鳴、令息から笑い声が漏れたな」
令嬢たちから悲鳴が零れたという点について、エリナとシーリアは良く理解出来た。
(アラッド様に絡み、多くの罪を重ねたのであれば潰されるのも当然でしょう。ですが……中々に屈辱的な罰を与えたものですね)
(い、衣服を解かされてパンツ一つだけに……)
シーリアは自分がそうされてしまった光景を頭に浮かべてしまい、急に顔を赤くさせた。
「シーリア、顔が赤いけど大丈夫か」
「は、はい! 大丈夫でひゅ!!」
思いっきり噛んでしまい、少しの間静寂が生まれたが……直ぐにそれをガルシアが破った。
「それにしても珍しいですね」
「俺が喧嘩を買ったことがか?」
「いえ。相手の令息の態度を考えれば、アラッド様が受け流す様な真似はしないと思っています。ただ、ドラング様を庇う様な発言をするのが珍しいなと思って」
弟であるドラングは、兄のアラッドをライバル視……敵視しているといっても過言ではない。
それはこの屋敷に来てある程度経たば、自然と解る。
そんな弟を庇う様な発言をする……ガルシアがアラッドの立場であれば、同じ様な大人の対応が出来ない。
「……本当にドラングが俺のライバルの様な存在だとは思ってないよ。現時点ではな」
ロンバーに対して伝えた言葉は、かなりリップサービスが過ぎだと自分でも思っている。
ただ、それでもフールに伝えた通り……同じ家にいるのに全く話さない仲であっても、知っていることがある。
「それでも、あいつが必死で前に進もうと努力しているのは知ってる。俺が弱いかもしれないって噂はあいつが撒いた種だけど、そこはほら……あいつもまだ子供だろ」
あなたも年齢的に十分子供ですが。
という言葉を五人とも口から出さずに飲み込んだ。
「口が悪くなってしまうことはある。それは仕方ない……大人になっても口が悪い人はいるしね」
「そ、そうかもしれませんね」
「だろ。だからまぁ……あれだ、ちょっとぐらいお兄ちゃんらしいことが出来るんじゃないかと思ったんだよ」
ドラングとしては、今でもアラッドは自分が父親を……フールを超える為の踏み台。
その気持ちは変わっていない。
だが、あの時から一度もアラッドに勝負を仕掛けていない。
それが……ドラングがアラッドは自分よりも強い存在だと認めていることになる。
しかし、他家の子供たちはそこまでドラングの細かい情を知らない。
故に、次に出席するパーティーでは立場が悪くなっている可能性が高い。
(父さんが侯爵家の当主で、ドラング自身が子供にしてはそれなりに強いってのもあるから、虐められるようなことはないかもしれないけど、気分は良くないだろ)
アラッドはそれを危惧し、あの場でドラングを庇う様な発言をした。
(捻くれて悪の道に進まれても困るしな)
「アラッド様、おかえりなさいませ」
屋敷の前では既にエリナたちが立っており、アラッドを出迎えていた。
「おう、ただいま」
「……アラッド様、もしかして何か面白いことでもありましたか?」
「ん? もしかして顔に出てたか」
「顔にといいますか、雰囲気に現れてたって感じですね」
今に限っては特にアラッドの表情はいつも通り。
ただ、レオナは言葉通りにそのいつもと違う雰囲気から、パーティー会場で面白いことが起こったのではと予想。
それは見事に的中していた。
「部屋に戻ったら教えるよ」
現在の時刻は昼過ぎ。
料理人たちが急いでアラッドたちの分の昼食を作り、それを食べ終えて自室に戻り……アラッドはレオナたちにパーティー会場でどんな面白いことがあったのかを伝えた。
事前に感情を抑えることはないと伝え……話を聞き終えたガルシアとレオナ、そしてリンはアラッドの言葉に甘えて爆笑した。
「な、なるほど……そんなことが、あったんですね」
「アラッド様に絡む時点で相当馬鹿だけど、糸でそんな風に……ぷっ、ははははは!!!」
「なんとも言えないダサさっすね。会場でも、思いっきり笑われたんじゃないっすか?」
「令嬢からは悲鳴、令息から笑い声が漏れたな」
令嬢たちから悲鳴が零れたという点について、エリナとシーリアは良く理解出来た。
(アラッド様に絡み、多くの罪を重ねたのであれば潰されるのも当然でしょう。ですが……中々に屈辱的な罰を与えたものですね)
(い、衣服を解かされてパンツ一つだけに……)
シーリアは自分がそうされてしまった光景を頭に浮かべてしまい、急に顔を赤くさせた。
「シーリア、顔が赤いけど大丈夫か」
「は、はい! 大丈夫でひゅ!!」
思いっきり噛んでしまい、少しの間静寂が生まれたが……直ぐにそれをガルシアが破った。
「それにしても珍しいですね」
「俺が喧嘩を買ったことがか?」
「いえ。相手の令息の態度を考えれば、アラッド様が受け流す様な真似はしないと思っています。ただ、ドラング様を庇う様な発言をするのが珍しいなと思って」
弟であるドラングは、兄のアラッドをライバル視……敵視しているといっても過言ではない。
それはこの屋敷に来てある程度経たば、自然と解る。
そんな弟を庇う様な発言をする……ガルシアがアラッドの立場であれば、同じ様な大人の対応が出来ない。
「……本当にドラングが俺のライバルの様な存在だとは思ってないよ。現時点ではな」
ロンバーに対して伝えた言葉は、かなりリップサービスが過ぎだと自分でも思っている。
ただ、それでもフールに伝えた通り……同じ家にいるのに全く話さない仲であっても、知っていることがある。
「それでも、あいつが必死で前に進もうと努力しているのは知ってる。俺が弱いかもしれないって噂はあいつが撒いた種だけど、そこはほら……あいつもまだ子供だろ」
あなたも年齢的に十分子供ですが。
という言葉を五人とも口から出さずに飲み込んだ。
「口が悪くなってしまうことはある。それは仕方ない……大人になっても口が悪い人はいるしね」
「そ、そうかもしれませんね」
「だろ。だからまぁ……あれだ、ちょっとぐらいお兄ちゃんらしいことが出来るんじゃないかと思ったんだよ」
ドラングとしては、今でもアラッドは自分が父親を……フールを超える為の踏み台。
その気持ちは変わっていない。
だが、あの時から一度もアラッドに勝負を仕掛けていない。
それが……ドラングがアラッドは自分よりも強い存在だと認めていることになる。
しかし、他家の子供たちはそこまでドラングの細かい情を知らない。
故に、次に出席するパーティーでは立場が悪くなっている可能性が高い。
(父さんが侯爵家の当主で、ドラング自身が子供にしてはそれなりに強いってのもあるから、虐められるようなことはないかもしれないけど、気分は良くないだろ)
アラッドはそれを危惧し、あの場でドラングを庇う様な発言をした。
(捻くれて悪の道に進まれても困るしな)
208
お気に入りに追加
6,112
あなたにおすすめの小説
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる