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二百二十六話 大人も笑ってしまう

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その後、アラッドは結局高級料理を食べながらベルたちとだけ、会話を続けた。

本来であれば親の位が高く、優秀な令息や令嬢とは関係をつくった方が良いのだが……パーティー会場にいる殆どの子供たちはアラッド下に見ていた部分がある。

全員が全員そうではないが、アラッドはこれでも侯爵家の人間。
親の爵位が低い子供は、おいそれと話しかけようとは思えなかった。

こうしてパーティーでは一波乱あったが、無事に終了。

流れ的に近い内にまたプライベートで会おうという約束を交わし、フールと合流し、宿へと戻る。

「アラッド、今回のパーティーは随分と楽しんだようだね」

「……すいません」

アラッドはフールの言葉、表情からなんのことを言っているのか直ぐに理解し、頭を下げた。

「頭を下げる必要も、謝罪する必要もない。アラッドが起こるのも当然」

今回の子供たちだけのパーティーで何があったのか、フールの耳には既に細かい情報が入っていた。

「私が子供の時でも……同じように怒るだろう。ただ、アラッドの様にスマートに潰すことは出来ないと思うけどね」

「そ、そうでしょうか。それに、その…………あまりスマートな倒し方でもないと思います」

「いやいや、そんなことはないぞ。一発も攻撃を食らうことなく倒したそうじゃないか。ま、まぁその……ふ、ふふふ。最終的な結果は、思わず笑ってしまう内容、だけどね。ふ、はっはっは!!!」

アラッドがロンバーを倒した光景を想像し、フールは耐え切れずに笑い声を上げた。

(……こんなに思いっきり笑う父さんは、ちょっと珍しいな)

そんな感想を抱いたが、アラッドの倒し方はとても秀逸……誰にでも真似を出来る内容ではなかった。
そして……対戦相手に圧倒的な屈辱を与える内容。

相手の衣服を解き、パンツ一丁にしてしまう。

その光景を想像せずとも、言葉を聞いただけで笑ってしまう。
フールの様に細かい情報を耳にした者たちはフールと同じく、殆ど耐え切れずに笑い声を上げた。

唯一、ロンバーの父親のみが顔を真っ赤にして今にも噴火しそうな怒りを堪えていた。

「ふふふ、流石アラッドだよ。君が授かったスキルや、アリサを侮辱したんだ。それだけの報いを受けて当然だよ」

実際にただただ拳や蹴りでボコボコにされたという結果よりも、パンツ一丁にされたという方がロンバー的にはダメージが大きい。

ただ負けたのではなく、大勢の令息や令嬢たちがいる前でパンツ一丁にさせられた。

この結果はロンバーにとってトラウマになってもおかしくなかった。

「……ですが、この件でアリンド侯爵から嫌がらせなどされたりしませんか?」

「されても、そこまで大した問題じゃない……けどね、今回の件は向こうが完全に悪い」

そう断言してから……フールは少しそうとは言えないかも、と思ってしまった。

(身内がバカにしていたというか、見下していたから完全にとはいえないか……でも、話を聞く限り先に絡んできたのはアリンド侯爵の令息なのは間違いないし、やっぱり問題無いかな)

この一件でアリンド侯爵がフールに嫌がらせをしようものなら、貴族界全体から白い目で見られるのは絶対。
ただでさえ、今回の件で教育がなってないのではという話が広まった。

「そういえばアラッド。あの騒動の最中に、ドラングを庇う様な発言をしたようだね……いったいどんいう事なんだい」

ロンバーかアラッドに絡み、糸だけではなく母を馬鹿にされる様な原因を作ったのは、ドラングだと言えなくもない。

しかし、アラッドはそんなドラングを庇う様な発言をした。
その真意がフールには少々分からなかった。

少しに間悩み、アラッドは考えを……想いをまとめた。

「あれですよ。なんだかんだで、ドラングは俺の弟に変わりはありません。確かに俺に対して態度も口も悪いかもしれませんけど、真っ直ぐ努力をしているのは知っているので」

自分に対して悪態を付いてくることが変わらずとも、そこ変わらないのであれば……完全に無視をしよう、反撃しようとは思わない。
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