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二百二十四話 事実に気付くのが遅い
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「さて、これが……君がバカにした糸の力だ」
淡々と……ロンバーと対面してから変わらない態度で近づき、上から見下ろす。
(ふむ……我ながら、とんでもない攻撃だと思ってしまうよ……防ぎようはあれど、マジで食らった本人からすれば大ダメージであることに変わりはない)
服を解く。
これに関しては、以前から実際にできることは解っていた。
ただ……いつも対峙するモンスターは基本的に服を着ていない。
模擬戦相手のガルシアやエリナたちを相手に、そんな攻撃は出来ない。
というよりも、現段階ではガルシアたちレベルの相手だと、普通に対処されてしまう。
なので、ぶっつけ本番の攻撃だった。
ほんの少しだけ不安はあったが、そんなごみ屑みたいな不安は速攻で吹き飛んだ。
「それにしても君……弱いな。弟のドラングの方がよっぽど強い」
「ッ!!!」
ロンバーはその言葉を聞き、頬を赤くした。
ロンバーとしては、自分とドラングにそこまで大きな力の差はないと思っている。
だが、実際にドラングの訓練風景を見ている兄としては、目の前の令息よりも弟の方が断然強いと感じた。
「ドラングなら、そもそもあの攻撃を食らうことはなかった……食らったとしても、もっと上手く対処していただろうな」
「何を、言って……」
自身をボロカスに言っていた弟に、何故擁護するような言葉を口にしているのか、ロンバーには全く理解出来ない。
しかし自分の考えを理解出来ないロンバーの気持ちなど、アラッドは一ミリも興味がない。
「まっ……今それはどうでも良いか。とりあえずパンツ一丁になったわけだが……糸はな、こんなことも出来るんだ」
「ッ!? がっ、は……」
アラッドは床に散らばっている糸を束で動かし、ロンバーの首を絞めた。
「さっきまでの攻撃は……というか、あれは攻撃というより嫌がらせだな。こういったのが、糸を使った本当の攻撃だ」
「はっ……な、……っ!」
なんとか自身の首を絞める糸を引き千切ろうとするが、束になってはそれも難しい。
「「「「「「っ!!??」」」」」」
さすがにこの状況は不味いと思い、レイ嬢たちがアラッドを止めようかと思った……そう、思ったが直ぐに行動には移せない。
なぜならば、勿論自分たちの力だけではアラッドを止められないと解っているからだ。
だが、それでもアラッドを殺人者にする訳にはいかない。
そんな二つの考えで揺れている友人たちの想いを察し、アラッドは首を絞めている糸の力を緩めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……て、てめぇ」
「なぁ、もうそうやって咬みつくのは止めろ。分かっただろ。今のお前じゃ、俺がその気になれば速攻で殺せてたんだ。今、このまま死ぬかもと思っただろ」
首を絞め続けられると、死ぬ。
それぐらいの常識は当然、頭の中に入っている。
「大正解だ。あのまま服だった糸で首を絞め続けていれば、君は死んでいた」
「…………」
もしかしたら、死んでいたかもしれない。
今になってその恐怖を感じ取り、先程までの強気な態度が消え去った。
「ドラングと俺は……まぁ、ライバルみたいなもの? お互い歳が同じだからな。だから俺のことに関しては、少し口が悪くなる。でもな……相手が誰だからとか関係無しに、他人の言葉をそのままうのみにしない方が良いぞ」
「…………」
弟の愚行を庇う様な発言を続けるアラッドだが、ロンバーは今になって死ぬかもしれなかったという恐怖で固まっていた。
アラッドはそんなロンバーに対して一つため息をつき、一言伝えた。
「君さ、今パンツ一丁なんだから、そろそろどうにかした方が良いんじゃないの?」
「……っ!!!!!」
ロンバーは数秒後、自分の現状を思い出し……青くなっていた顔が再び赤くなり、ダッシュで会場から抜け出した。
「抜け出したところで、どうにかなるのか?」
自分でどうにかした方が良いのではと言っておきながら、直ぐに服が見つかるとは思えなかった。
淡々と……ロンバーと対面してから変わらない態度で近づき、上から見下ろす。
(ふむ……我ながら、とんでもない攻撃だと思ってしまうよ……防ぎようはあれど、マジで食らった本人からすれば大ダメージであることに変わりはない)
服を解く。
これに関しては、以前から実際にできることは解っていた。
ただ……いつも対峙するモンスターは基本的に服を着ていない。
模擬戦相手のガルシアやエリナたちを相手に、そんな攻撃は出来ない。
というよりも、現段階ではガルシアたちレベルの相手だと、普通に対処されてしまう。
なので、ぶっつけ本番の攻撃だった。
ほんの少しだけ不安はあったが、そんなごみ屑みたいな不安は速攻で吹き飛んだ。
「それにしても君……弱いな。弟のドラングの方がよっぽど強い」
「ッ!!!」
ロンバーはその言葉を聞き、頬を赤くした。
ロンバーとしては、自分とドラングにそこまで大きな力の差はないと思っている。
だが、実際にドラングの訓練風景を見ている兄としては、目の前の令息よりも弟の方が断然強いと感じた。
「ドラングなら、そもそもあの攻撃を食らうことはなかった……食らったとしても、もっと上手く対処していただろうな」
「何を、言って……」
自身をボロカスに言っていた弟に、何故擁護するような言葉を口にしているのか、ロンバーには全く理解出来ない。
しかし自分の考えを理解出来ないロンバーの気持ちなど、アラッドは一ミリも興味がない。
「まっ……今それはどうでも良いか。とりあえずパンツ一丁になったわけだが……糸はな、こんなことも出来るんだ」
「ッ!? がっ、は……」
アラッドは床に散らばっている糸を束で動かし、ロンバーの首を絞めた。
「さっきまでの攻撃は……というか、あれは攻撃というより嫌がらせだな。こういったのが、糸を使った本当の攻撃だ」
「はっ……な、……っ!」
なんとか自身の首を絞める糸を引き千切ろうとするが、束になってはそれも難しい。
「「「「「「っ!!??」」」」」」
さすがにこの状況は不味いと思い、レイ嬢たちがアラッドを止めようかと思った……そう、思ったが直ぐに行動には移せない。
なぜならば、勿論自分たちの力だけではアラッドを止められないと解っているからだ。
だが、それでもアラッドを殺人者にする訳にはいかない。
そんな二つの考えで揺れている友人たちの想いを察し、アラッドは首を絞めている糸の力を緩めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……て、てめぇ」
「なぁ、もうそうやって咬みつくのは止めろ。分かっただろ。今のお前じゃ、俺がその気になれば速攻で殺せてたんだ。今、このまま死ぬかもと思っただろ」
首を絞め続けられると、死ぬ。
それぐらいの常識は当然、頭の中に入っている。
「大正解だ。あのまま服だった糸で首を絞め続けていれば、君は死んでいた」
「…………」
もしかしたら、死んでいたかもしれない。
今になってその恐怖を感じ取り、先程までの強気な態度が消え去った。
「ドラングと俺は……まぁ、ライバルみたいなもの? お互い歳が同じだからな。だから俺のことに関しては、少し口が悪くなる。でもな……相手が誰だからとか関係無しに、他人の言葉をそのままうのみにしない方が良いぞ」
「…………」
弟の愚行を庇う様な発言を続けるアラッドだが、ロンバーは今になって死ぬかもしれなかったという恐怖で固まっていた。
アラッドはそんなロンバーに対して一つため息をつき、一言伝えた。
「君さ、今パンツ一丁なんだから、そろそろどうにかした方が良いんじゃないの?」
「……っ!!!!!」
ロンバーは数秒後、自分の現状を思い出し……青くなっていた顔が再び赤くなり、ダッシュで会場から抜け出した。
「抜け出したところで、どうにかなるのか?」
自分でどうにかした方が良いのではと言っておきながら、直ぐに服が見つかるとは思えなかった。
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