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二百二十二話 弟よりは弱いだろうな~~
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「お、おい。全然攻撃が当たってないぞ」
「か、躱すの上手過ぎないか?」
「フール様の方が正しかった、ってことよね」
アラッドは特別敵の攻撃を躱すのが上手いのではなく、単純に身体能力に差があり過ぎるので余裕で躱せてしまうだけ。
「避けてばかりで、勝てると思ってんのか!!!!」
「戦略としてはありだからな」
ロンバーの挑発に対して、アラッドは冷静に返す。
(ふむ、かれこれ数分ぐらい攻撃を躱してるけど……それなりに体力はあるっぽいな。俺が相手じゃなかったら、結構良い感じの勝負になる……かもしれないけど、仮にレイ嬢が相手なら無理か)
今でもレイ嬢の肉体が自分たちとは少々かけ離れた力を持っていることは、実際に戦った記憶が残っており、体が覚えている。
(どんなスキルを授かったのかは知らないけど、その武器を持っていれば……もしくは魔法を使えば、同年代の中でもそれなりに強い位置にいるのかもな)
大口を叩くだけはある。
そう思いながらも、自分のことをボロカスに言っていたドラングのことを思い出す。
(……でも、強さだけならドラングの方が上か? あれから一度も模擬戦はしてない……というか、まともに喋ってすらいないけど、偶に見る訓練の様子からして……こいつよりは強いよな)
本当に兄弟? と思うほど全く会話をしない関係だが、アラッドはちょいちょいドラングが頑張っている光景を見ていた。
「ちっ! ムカつく目してんな!!!!」
「それはただの悪口だな」
確かにアラッドは結構鋭い眼をしているので、優しい目ではないことは確かだと本人も自覚している。
ただ、ムカつく目というのは完全に悪口だった。
しかし今アラッドと戦っている? ロンバーからすればアラッドの目は……完全に自分のことを見下している。
相手から見下されるような眼を向けられれば、誰だって怒りの感情が湧いても仕方ない。
だが……最初はロンバーがそういった眼をアラッドに向けていたので、逆にその眼を向けられても文句を言えないのだが……子供が素直に納得できる内容ではない。
「な、なぁ……あれって」
戦い? が始まってから数分後……ようやく子供たちが変化に気付いた。
「……あのような、使い方もあるのか」
レイ嬢は今まで一度も見たことがない糸の使い方に驚き、表情が揺れた。
「あれが、お茶会の時にアラッドが僕に教えてくれた攻撃内容だよ」
「……ロンバーさんが気付かないというのを考えると、恐ろしいですね」
周囲の声が今のロンバーには全く聞こえず、アラッドをぶっ潰すことしか考えていない。
そして……自分の小さな変化にも、全く気付けていない。
「そりゃ、糸だから可能かもしれないけど……いやいや、中々に反則? じゃねぇかな」
「た、確かに恐ろしい力、だね」
「そ、そうですわね。あんな力を自分に使われたらと思うと……正直ゾッとします」
「うむ、同感だ。対策の使用はあると思うが、恐ろしいことに変わりはないな」
アラッドは決して鋭い糸でロンバーの体を傷付けたり、衣服を乗っ取って締め付けたりもしていない。
ただ……一般的な感覚を持っている者であれば、大ダメージを受ける攻撃を行っている。
「はぁ、はぁ、はぁ……いつまで逃げてる、つもりだ!!」
「だから、逃げるのも戦略だって言ってるだろ」
ロンバーは途中から身体強化のスキルを使用しながら殴り続けているが、それでも攻撃は一回も掠ることはなく、ただただ時間だけが過ぎていった。
「それに、俺はしっかり攻撃してるぞ」
「嘘付け。さっきから、俺の攻撃から逃げてばかりじゃねぇか!!」
「いや、攻撃から逃げるのは当たり前だろ。それより、本当に気付かないのか?」
「あ? 何がだよ!!」
「自分の服を見てみろよ」
そろそろ自分が何をしていたかを伝えても良いかと思い、ヒントを与えた。
「服が何だってんだ、よ……」
気付いたときには、時すでに遅し。
「か、躱すの上手過ぎないか?」
「フール様の方が正しかった、ってことよね」
アラッドは特別敵の攻撃を躱すのが上手いのではなく、単純に身体能力に差があり過ぎるので余裕で躱せてしまうだけ。
「避けてばかりで、勝てると思ってんのか!!!!」
「戦略としてはありだからな」
ロンバーの挑発に対して、アラッドは冷静に返す。
(ふむ、かれこれ数分ぐらい攻撃を躱してるけど……それなりに体力はあるっぽいな。俺が相手じゃなかったら、結構良い感じの勝負になる……かもしれないけど、仮にレイ嬢が相手なら無理か)
今でもレイ嬢の肉体が自分たちとは少々かけ離れた力を持っていることは、実際に戦った記憶が残っており、体が覚えている。
(どんなスキルを授かったのかは知らないけど、その武器を持っていれば……もしくは魔法を使えば、同年代の中でもそれなりに強い位置にいるのかもな)
大口を叩くだけはある。
そう思いながらも、自分のことをボロカスに言っていたドラングのことを思い出す。
(……でも、強さだけならドラングの方が上か? あれから一度も模擬戦はしてない……というか、まともに喋ってすらいないけど、偶に見る訓練の様子からして……こいつよりは強いよな)
本当に兄弟? と思うほど全く会話をしない関係だが、アラッドはちょいちょいドラングが頑張っている光景を見ていた。
「ちっ! ムカつく目してんな!!!!」
「それはただの悪口だな」
確かにアラッドは結構鋭い眼をしているので、優しい目ではないことは確かだと本人も自覚している。
ただ、ムカつく目というのは完全に悪口だった。
しかし今アラッドと戦っている? ロンバーからすればアラッドの目は……完全に自分のことを見下している。
相手から見下されるような眼を向けられれば、誰だって怒りの感情が湧いても仕方ない。
だが……最初はロンバーがそういった眼をアラッドに向けていたので、逆にその眼を向けられても文句を言えないのだが……子供が素直に納得できる内容ではない。
「な、なぁ……あれって」
戦い? が始まってから数分後……ようやく子供たちが変化に気付いた。
「……あのような、使い方もあるのか」
レイ嬢は今まで一度も見たことがない糸の使い方に驚き、表情が揺れた。
「あれが、お茶会の時にアラッドが僕に教えてくれた攻撃内容だよ」
「……ロンバーさんが気付かないというのを考えると、恐ろしいですね」
周囲の声が今のロンバーには全く聞こえず、アラッドをぶっ潰すことしか考えていない。
そして……自分の小さな変化にも、全く気付けていない。
「そりゃ、糸だから可能かもしれないけど……いやいや、中々に反則? じゃねぇかな」
「た、確かに恐ろしい力、だね」
「そ、そうですわね。あんな力を自分に使われたらと思うと……正直ゾッとします」
「うむ、同感だ。対策の使用はあると思うが、恐ろしいことに変わりはないな」
アラッドは決して鋭い糸でロンバーの体を傷付けたり、衣服を乗っ取って締め付けたりもしていない。
ただ……一般的な感覚を持っている者であれば、大ダメージを受ける攻撃を行っている。
「はぁ、はぁ、はぁ……いつまで逃げてる、つもりだ!!」
「だから、逃げるのも戦略だって言ってるだろ」
ロンバーは途中から身体強化のスキルを使用しながら殴り続けているが、それでも攻撃は一回も掠ることはなく、ただただ時間だけが過ぎていった。
「それに、俺はしっかり攻撃してるぞ」
「嘘付け。さっきから、俺の攻撃から逃げてばかりじゃねぇか!!」
「いや、攻撃から逃げるのは当たり前だろ。それより、本当に気付かないのか?」
「あ? 何がだよ!!」
「自分の服を見てみろよ」
そろそろ自分が何をしていたかを伝えても良いかと思い、ヒントを与えた。
「服が何だってんだ、よ……」
気付いたときには、時すでに遅し。
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