スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
198 / 1,043

百九十八話 気付かないアラッド

しおりを挟む
「あの……俺たち「まぁまぁ、これは年寄りからの気持ちさ。代金は要らないよ」そ、そうなんですか……」

そう言われても、はいそうですかと受け取る気にはならない。

(な、何故急にタダで? 別に……普通に喋ってただけなんだけどな)

特におばあさんの為になる話をした訳でもなく、特別な技術を見せた訳でもない。
そんな自分たちにタダでマジックアイテムをくれる……少し怪しいと思ってしまっても仕方ないだろう。

(てか、視なくても普通のマジックアイテムではないのは間違いないし……今の俺では造れないクラスのものだ)

そう思うと、やはり素直に受け取れない。

「こっちは韋駄天の指輪……少年が使うと良い。こっちの剛腕の指輪はお嬢さんが使うべきだね」

(……ハッキリと見抜いてる、のか? 鑑定を使われた感覚はないんだけどな)

鑑定を使われると、違和感を感じる。
鑑定されたことに気付かない者もいるが……感覚が鋭い者は、視られたことに気付きやすい。

以前鑑定のスキルを持つモンスターに視られ、その感覚は覚えているアラッドだが……おばあさんと話している間に、使われたと感じなかった。

「安心しなさい。二人に鑑定を使って視たりしてないよ」

アラッドの心を見透かすように、鑑定を使って視てないと伝えた。

「まぁ……あれさね。長年の経験ってところね」

「そ、そうでしたか。疑ってすいませんでした」

おばあさんが鑑定系のスキルを使っていないというのは事実であり、長年培ってきた経験により、二人の肉体的な長所を見極めた。

レイ嬢は言わずもがな、超人体質によって身体能力が全体的に高いが……とりわけ、腕力が他の追随を許さない強さを持つ。

それに対し、アラッドもほぼ毎日モンスターと戦っているお陰でレベルが同年代の子供より上であり……体質的に身体能力の上り幅が大きい。
ただ、そんな身体能力の中でも……スピード、脚力が他よりも勝っている。

(や、やっぱり高品質だな)

指輪は二つともランク四。
付与効果は韋駄天の方は脚力強化で、剛腕は腕力強化。

加えて、サイズ調整の効果が付与されているので、今はサイズが合わない状態だが……指に通せばきつくなく、ゆるっと抜けてしまわない丁度良いサイズに変化する。

「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます」

「いずれ、この指輪に恥じない戦績を得ます」

ランク四のマジックアイテムともなれば、まず冒険者の中でもルーキーが得られる代物ではない。
ベテランの冒険者であっても、簡単に入手できるものではない。

二人は侯爵家の人間ではあるが……二つの指輪を決してつまらない物だとは思わない。

(これは……デザインが似ている。も、もしや。ぺ、ペアルック……という物なのか?)

確かに韋駄天の指輪と剛腕の指輪はデザインが非常に似ており、目立った違う部分は緑と赤の色のみ。

勿論、デザインが似ているの制作者であるおばあさんの考えであり……そういった証としても捉えられる指輪。

レイ嬢が若干頬を赤くし、嬉しそうな表情をしているのをおばあさんは見逃さず、その表情を見て自分まで嬉しくなった。

(母さんから貰った指輪と合わされば、更に脚が速くなりそうだな)

ただ……デザインがほぼ同じというペアルック商品だと、アラッドは分かっておらず……精巧な作りである指輪のデザインに見惚れていた。

そして二人は再度おばあさんに礼を言い、店から出ていった。

「……どちらかと言えば、あっちの女の子の片思い……ってところかね」

レイ嬢が僅かながらも、アラッドに対して恋愛的な意味で好意を抱いているというのは、これまた長年の経験からあっさりと見抜いていた。

(にしても……あの子があっちの将来有望な男の子を手に入れるには、かなり大変だろうね)

見ればペアルックデザインの指輪だと分かるのだが、アラッドは全く気付かずデザインの良さに惹かれていた。

制作者であるおばあさんとしては嬉しい反応だが、アラッドを想うレイ嬢の気持ちを考えれば、少し複雑な気持ちだった。
しおりを挟む
感想 466

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...