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百九十八話 気付かないアラッド
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「あの……俺たち「まぁまぁ、これは年寄りからの気持ちさ。代金は要らないよ」そ、そうなんですか……」
そう言われても、はいそうですかと受け取る気にはならない。
(な、何故急にタダで? 別に……普通に喋ってただけなんだけどな)
特におばあさんの為になる話をした訳でもなく、特別な技術を見せた訳でもない。
そんな自分たちにタダでマジックアイテムをくれる……少し怪しいと思ってしまっても仕方ないだろう。
(てか、視なくても普通のマジックアイテムではないのは間違いないし……今の俺では造れないクラスのものだ)
そう思うと、やはり素直に受け取れない。
「こっちは韋駄天の指輪……少年が使うと良い。こっちの剛腕の指輪はお嬢さんが使うべきだね」
(……ハッキリと見抜いてる、のか? 鑑定を使われた感覚はないんだけどな)
鑑定を使われると、違和感を感じる。
鑑定されたことに気付かない者もいるが……感覚が鋭い者は、視られたことに気付きやすい。
以前鑑定のスキルを持つモンスターに視られ、その感覚は覚えているアラッドだが……おばあさんと話している間に、使われたと感じなかった。
「安心しなさい。二人に鑑定を使って視たりしてないよ」
アラッドの心を見透かすように、鑑定を使って視てないと伝えた。
「まぁ……あれさね。長年の経験ってところね」
「そ、そうでしたか。疑ってすいませんでした」
おばあさんが鑑定系のスキルを使っていないというのは事実であり、長年培ってきた経験により、二人の肉体的な長所を見極めた。
レイ嬢は言わずもがな、超人体質によって身体能力が全体的に高いが……とりわけ、腕力が他の追随を許さない強さを持つ。
それに対し、アラッドもほぼ毎日モンスターと戦っているお陰でレベルが同年代の子供より上であり……体質的に身体能力の上り幅が大きい。
ただ、そんな身体能力の中でも……スピード、脚力が他よりも勝っている。
(や、やっぱり高品質だな)
指輪は二つともランク四。
付与効果は韋駄天の方は脚力強化で、剛腕は腕力強化。
加えて、サイズ調整の効果が付与されているので、今はサイズが合わない状態だが……指に通せばきつくなく、ゆるっと抜けてしまわない丁度良いサイズに変化する。
「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
「いずれ、この指輪に恥じない戦績を得ます」
ランク四のマジックアイテムともなれば、まず冒険者の中でもルーキーが得られる代物ではない。
ベテランの冒険者であっても、簡単に入手できるものではない。
二人は侯爵家の人間ではあるが……二つの指輪を決してつまらない物だとは思わない。
(これは……デザインが似ている。も、もしや。ぺ、ペアルック……という物なのか?)
確かに韋駄天の指輪と剛腕の指輪はデザインが非常に似ており、目立った違う部分は緑と赤の色のみ。
勿論、デザインが似ているの制作者であるおばあさんの考えであり……そういった証としても捉えられる指輪。
レイ嬢が若干頬を赤くし、嬉しそうな表情をしているのをおばあさんは見逃さず、その表情を見て自分まで嬉しくなった。
(母さんから貰った指輪と合わされば、更に脚が速くなりそうだな)
ただ……デザインがほぼ同じというペアルック商品だと、アラッドは分かっておらず……精巧な作りである指輪のデザインに見惚れていた。
そして二人は再度おばあさんに礼を言い、店から出ていった。
「……どちらかと言えば、あっちの女の子の片思い……ってところかね」
レイ嬢が僅かながらも、アラッドに対して恋愛的な意味で好意を抱いているというのは、これまた長年の経験からあっさりと見抜いていた。
(にしても……あの子があっちの将来有望な男の子を手に入れるには、かなり大変だろうね)
見ればペアルックデザインの指輪だと分かるのだが、アラッドは全く気付かずデザインの良さに惹かれていた。
制作者であるおばあさんとしては嬉しい反応だが、アラッドを想うレイ嬢の気持ちを考えれば、少し複雑な気持ちだった。
そう言われても、はいそうですかと受け取る気にはならない。
(な、何故急にタダで? 別に……普通に喋ってただけなんだけどな)
特におばあさんの為になる話をした訳でもなく、特別な技術を見せた訳でもない。
そんな自分たちにタダでマジックアイテムをくれる……少し怪しいと思ってしまっても仕方ないだろう。
(てか、視なくても普通のマジックアイテムではないのは間違いないし……今の俺では造れないクラスのものだ)
そう思うと、やはり素直に受け取れない。
「こっちは韋駄天の指輪……少年が使うと良い。こっちの剛腕の指輪はお嬢さんが使うべきだね」
(……ハッキリと見抜いてる、のか? 鑑定を使われた感覚はないんだけどな)
鑑定を使われると、違和感を感じる。
鑑定されたことに気付かない者もいるが……感覚が鋭い者は、視られたことに気付きやすい。
以前鑑定のスキルを持つモンスターに視られ、その感覚は覚えているアラッドだが……おばあさんと話している間に、使われたと感じなかった。
「安心しなさい。二人に鑑定を使って視たりしてないよ」
アラッドの心を見透かすように、鑑定を使って視てないと伝えた。
「まぁ……あれさね。長年の経験ってところね」
「そ、そうでしたか。疑ってすいませんでした」
おばあさんが鑑定系のスキルを使っていないというのは事実であり、長年培ってきた経験により、二人の肉体的な長所を見極めた。
レイ嬢は言わずもがな、超人体質によって身体能力が全体的に高いが……とりわけ、腕力が他の追随を許さない強さを持つ。
それに対し、アラッドもほぼ毎日モンスターと戦っているお陰でレベルが同年代の子供より上であり……体質的に身体能力の上り幅が大きい。
ただ、そんな身体能力の中でも……スピード、脚力が他よりも勝っている。
(や、やっぱり高品質だな)
指輪は二つともランク四。
付与効果は韋駄天の方は脚力強化で、剛腕は腕力強化。
加えて、サイズ調整の効果が付与されているので、今はサイズが合わない状態だが……指に通せばきつくなく、ゆるっと抜けてしまわない丁度良いサイズに変化する。
「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
「いずれ、この指輪に恥じない戦績を得ます」
ランク四のマジックアイテムともなれば、まず冒険者の中でもルーキーが得られる代物ではない。
ベテランの冒険者であっても、簡単に入手できるものではない。
二人は侯爵家の人間ではあるが……二つの指輪を決してつまらない物だとは思わない。
(これは……デザインが似ている。も、もしや。ぺ、ペアルック……という物なのか?)
確かに韋駄天の指輪と剛腕の指輪はデザインが非常に似ており、目立った違う部分は緑と赤の色のみ。
勿論、デザインが似ているの制作者であるおばあさんの考えであり……そういった証としても捉えられる指輪。
レイ嬢が若干頬を赤くし、嬉しそうな表情をしているのをおばあさんは見逃さず、その表情を見て自分まで嬉しくなった。
(母さんから貰った指輪と合わされば、更に脚が速くなりそうだな)
ただ……デザインがほぼ同じというペアルック商品だと、アラッドは分かっておらず……精巧な作りである指輪のデザインに見惚れていた。
そして二人は再度おばあさんに礼を言い、店から出ていった。
「……どちらかと言えば、あっちの女の子の片思い……ってところかね」
レイ嬢が僅かながらも、アラッドに対して恋愛的な意味で好意を抱いているというのは、これまた長年の経験からあっさりと見抜いていた。
(にしても……あの子があっちの将来有望な男の子を手に入れるには、かなり大変だろうね)
見ればペアルックデザインの指輪だと分かるのだが、アラッドは全く気付かずデザインの良さに惹かれていた。
制作者であるおばあさんとしては嬉しい反応だが、アラッドを想うレイ嬢の気持ちを考えれば、少し複雑な気持ちだった。
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