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百九十七話 雰囲気がない時点で
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先日武器屋で感じた様な……特に心の底から惹かれるような、何かを感じるマジックアイテムは置いていなかった。
ただ……それでも今の自分では造ることが出来ないマジックアイテムが殆ど。
そんなマジックアイテムを見て……自分はまだまだだと思うと同時に、もっと頑張らないと……そんな熱い気持ちがこみ上げてきた。
(もっと頑張らないとな……造りたいマジックアイテムもあるし)
そんなことを考えながら飽きずに商品を眺めていると、店主であるおばあさんがアラッドに声を掛けてきた。
「君……もしかして、錬金術を勉強中かい?」
「あ、はい。そうですね……まだまだ勉強中の身です。でも、なんで分かったんですか」
店に入ってから、アラッドは一度も自分も錬金術でポーションを造ったりしている、なんて言葉を口にしていない。
にも拘わらず、おばあさんは一目でアラッドが錬金術を嗜んでいると見抜いた。
「ふふ。だいたい目を見れば分かるもんさ。伊達に歳は取ってないんでね」
「そ、そうでしたか」
「……視た感じ、かなり強いというか……その歳にしては不釣り合いな力を持っている様だけど、なんでまた錬金術を学ぼうと思ったんだい?」
おばあさんとしては単純な疑問だった。
特に元冒険者という訳ではないが、錬金術師と生き……冒険者たちと関わる中で、強さを視る眼が養われた。
故に……アラッドがずば抜けた才能を持つ冒険者と同じ雰囲気を感じ取った。
レイ嬢はそんなおばあさんの言葉に驚きながらも、問われたアラッドは冷静に当時のことを思い出した。
「そうですね……単純に、面白そうだと感じたから、ですかね。そして思った通り面白くて、造りたい目標が生まれたので、少しずつですが精進しています」
「そうかい。歳を取った錬金術師としては、若い者が錬金術に興味を持ってくれるのは非常に嬉しいよ……多分だけど、錬金術の方も実戦の力と同じ並じゃないでしょ」
「はは、そっちはあんまり自信もって答えられませんね」
これはアラッドの心の底から零した言葉だった。
実戦での力だけで言えば、自分はどう考えてもおかしい……そう思われるほどの力を持っていると自覚している。
錬金術の腕も歳を考えればそれなりのものかもしれないが、そちらほど跳び抜けた実力を持っているとは思えない。
(謙虚な子だねぇ~~~。それにしても……二人はカップルなのかい?)
ここでおばあさんは一つ気になった。
若いとはいえ、男と女が一緒に行動している。
歳は取っていないので、仕事仲間……なんて関係とは思えない。
「そうかい……ところで、話は変わるけど二人は恋人……婚約者なのかい??」
「えっ」
レイ嬢は、不意を突かれて普段は出ないような声が漏れた。
決して下品な声ではなく……年頃の女の子の声。
ただ、アラッドはおばあさんの問いに驚き戸惑うことはなく、冷静に答えた。
「そんな関係じゃありませんよ。俺の父さんとレイ嬢のお爺さんが知り合いで、お互いに狩りが趣味なんです。それで、一緒に狩りをしないかという話になって」
「ほぅ~~~、そういうことだったのね。お嬢さんも、良いものを持ってるということね」
「いえ、私なんてまだまだです」
実際にレイ嬢が戦うところを見れば、おばあさんもレイ嬢がその他大勢の一人ではなく、そこから飛び抜けた一人なのだと解る。
だが……アラッド程、戦うところを見ずとも一目で他者にそれを解らせる雰囲気を持っていない。
それが事実という時点で、自分はまだまだだと思ってしまう。
「謙虚ねぇ~……ふふ、あなたたち。ちょっとこっちに来て」
「? 分かりました」
おばあさんに言われるがままにカウンターの方に向かい、おばあさんはテーブルの上に二つのリングを置いた。
アラッドはそのリングが直ぐに何かしらの効果が付与されたマジックアイテムだと気付いた。
「これ、二人にあげるから、大事に使ってちょうだい」
「「っ!!??」」
いきなりそんな事を言われ、レイ嬢は当然驚き……さすがにアラッドも表情が崩れた。
ただ……それでも今の自分では造ることが出来ないマジックアイテムが殆ど。
そんなマジックアイテムを見て……自分はまだまだだと思うと同時に、もっと頑張らないと……そんな熱い気持ちがこみ上げてきた。
(もっと頑張らないとな……造りたいマジックアイテムもあるし)
そんなことを考えながら飽きずに商品を眺めていると、店主であるおばあさんがアラッドに声を掛けてきた。
「君……もしかして、錬金術を勉強中かい?」
「あ、はい。そうですね……まだまだ勉強中の身です。でも、なんで分かったんですか」
店に入ってから、アラッドは一度も自分も錬金術でポーションを造ったりしている、なんて言葉を口にしていない。
にも拘わらず、おばあさんは一目でアラッドが錬金術を嗜んでいると見抜いた。
「ふふ。だいたい目を見れば分かるもんさ。伊達に歳は取ってないんでね」
「そ、そうでしたか」
「……視た感じ、かなり強いというか……その歳にしては不釣り合いな力を持っている様だけど、なんでまた錬金術を学ぼうと思ったんだい?」
おばあさんとしては単純な疑問だった。
特に元冒険者という訳ではないが、錬金術師と生き……冒険者たちと関わる中で、強さを視る眼が養われた。
故に……アラッドがずば抜けた才能を持つ冒険者と同じ雰囲気を感じ取った。
レイ嬢はそんなおばあさんの言葉に驚きながらも、問われたアラッドは冷静に当時のことを思い出した。
「そうですね……単純に、面白そうだと感じたから、ですかね。そして思った通り面白くて、造りたい目標が生まれたので、少しずつですが精進しています」
「そうかい。歳を取った錬金術師としては、若い者が錬金術に興味を持ってくれるのは非常に嬉しいよ……多分だけど、錬金術の方も実戦の力と同じ並じゃないでしょ」
「はは、そっちはあんまり自信もって答えられませんね」
これはアラッドの心の底から零した言葉だった。
実戦での力だけで言えば、自分はどう考えてもおかしい……そう思われるほどの力を持っていると自覚している。
錬金術の腕も歳を考えればそれなりのものかもしれないが、そちらほど跳び抜けた実力を持っているとは思えない。
(謙虚な子だねぇ~~~。それにしても……二人はカップルなのかい?)
ここでおばあさんは一つ気になった。
若いとはいえ、男と女が一緒に行動している。
歳は取っていないので、仕事仲間……なんて関係とは思えない。
「そうかい……ところで、話は変わるけど二人は恋人……婚約者なのかい??」
「えっ」
レイ嬢は、不意を突かれて普段は出ないような声が漏れた。
決して下品な声ではなく……年頃の女の子の声。
ただ、アラッドはおばあさんの問いに驚き戸惑うことはなく、冷静に答えた。
「そんな関係じゃありませんよ。俺の父さんとレイ嬢のお爺さんが知り合いで、お互いに狩りが趣味なんです。それで、一緒に狩りをしないかという話になって」
「ほぅ~~~、そういうことだったのね。お嬢さんも、良いものを持ってるということね」
「いえ、私なんてまだまだです」
実際にレイ嬢が戦うところを見れば、おばあさんもレイ嬢がその他大勢の一人ではなく、そこから飛び抜けた一人なのだと解る。
だが……アラッド程、戦うところを見ずとも一目で他者にそれを解らせる雰囲気を持っていない。
それが事実という時点で、自分はまだまだだと思ってしまう。
「謙虚ねぇ~……ふふ、あなたたち。ちょっとこっちに来て」
「? 分かりました」
おばあさんに言われるがままにカウンターの方に向かい、おばあさんはテーブルの上に二つのリングを置いた。
アラッドはそのリングが直ぐに何かしらの効果が付与されたマジックアイテムだと気付いた。
「これ、二人にあげるから、大事に使ってちょうだい」
「「っ!!??」」
いきなりそんな事を言われ、レイ嬢は当然驚き……さすがにアラッドも表情が崩れた。
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